第16話
少女との会話を打ち切り誠二が自身の部屋へと戻る。そしてその手に工具を持ち105号室へと再び足を踏み入れた。
「よっと!!」
2つの工具を使い小さな鍵を破壊する。
「さてさて、中にはどんなお宝が入ってるんだ?」
そしてロッカーの中に仕舞われていたその意外なお宝に誠二が驚く。
「これは…クロスボウか?」
誠二がロッカーからクロスボウを取り出す。
(確か法律が変わってクロスボウも原則所持が禁止になったはずだよな…許可証がある感じでもないが)
「ん~…まあどうでもいいか。使えりゃいいんだよ使えれば」
誠二がゆっくりとクロスボウの状態を確認していく。
(未使用のまましまっておいたって感じだ。専用の矢もいくつか置いてある。このまま普通に使えそうだな)
「確か…こんな感じだったよな…ふんっ!!」
誠二が足でクロスボウを固定しつつ弦を張る。そこに矢をセットし安全装置を解除。デスクを狙い引き金を絞る。
「…っ!」
バシュ!という音と共に、誠二が狙った通りの場所に矢が刺さった。
「おお。矢が貫通してる。物凄い威力だな」
誠二が満足そうに貫通した矢を眺めつつクロスボウをコンパクトな状態に折りたたむ。
(日本だと貴重な本物の飛び道具だ。大事に使わせて貰おう)
ロッカーに仕舞われていた専用の袋にクロスボウを入れつつリビングに戻る。
「…けっこうな数のゾンビが集まって来てるな」
窓の外の死体には誠二の予想以上の数のゾンビが群がっていた。
「これは…チャンスかもな…」
今ならば正面から安全にマンションの外に出る事ができる。その事に誠二が気が付いた。
(明日行動に移す予定だったが。予定を早めるか?)
誠二の今後の予定の1つに水源の確保という目的がある。このマンションから少し離れた場所にある寺院には常時湧き水が飲める場所がある。そこに誠二は目を付けていたのだ。
(水は非常に重要な要素だ。水だけでも人間は約1週間生き延びる事ができるとも言う)
(今後も安定して水を飲むためにも、早めにあの場所は確保したい。動くなら今かもな)
「よし…行くか」
誠二が男の部屋から出た後、足早に自分の部屋へと戻る。バイクの鍵を手に取り手早く少量の食料と飲料水をリュックサックへと詰めていく。
「ん…まあ、こいつも持っていくか。念のためにな」
少しだけ悩んだ後、誠二はクロスボウと鉈を装備していくことを決めた。
(収納した状態ならそんなに邪魔にはならないからな)
リュックとクロスボウ。そして腰には鉈を装備した誠二が駐輪所へと向かう。
「よし…ゾンビ共はいないな」
愛用のバイクにキーを差し込み、エンジンを始動させる。
「…♪」
誠二は小声で歌を歌いながら、寺を目指しバイクを出発させた。
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