第8話
「参ったな…」
ガソリンスタンド前にバイクを停車させた誠二がそう呟く。
(何があったんだ…?)
目の前のガソリンスタンドはまるで強盗にでも入られたような有様だったのだ。事務所のガラスは割られ何故か自動販売機が破壊されていた。
(仕方がない。真っ当な方法じゃ無理か)
(幸いにもここはセルフ式のガソリンスタンド。事務所のコンソールさえ起動してれば何とかなる)
誠二が迷わず荒らされた事務所へと向かう。
「お…?ラッキー」
給油許可のコンソール画面は付きっぱなしの状態だ。
「よし。これなら…」
誠二が金銭を機械に投入し急いで事務所へと走る。
「え~と、4番4番……」
誠二が自身の金を投入した場所を探しているとき、その声は突然後ろから聞こえてきたのだ。
「おああああああああああああああ!!」
「はっ……!?」
誠二が帽子を着用したゾンビに押し倒される。
「があああああ!!がああああああああ!!!」
「クソが…!」
誠二がどうにかゾンビを振り離そうとする。
(なんだこの腕力は…!?)
「があああああああああ!!」
(何か…何かないか!?)
拮抗状態もそう長くは続かない。その事は誠二自身がよくよく理解している。正攻法ではダメなのだ。反則には反則を。誠二は必死に凶器を探し続ける。
「……ん!?」
誠二の手にコツンとある工具がぶつかる。それは人間ならば知らない事などありえない程有名な工具であり、今このピンチを脱出する為にはこれほど心強い工具はないとも言える究極の家庭用工具。
「っ…!!」
誠二が+ドライバーを手に取る。
「おらああああ!!」
「ごあああああああああああ……」
ゾンビの耳の穴にドライバー差し込んだ後、グリグリと脳を破壊するようにかき回す。
「じっくりとご馳走を味わえよ…!!」
グチュッとした嫌な感覚を誠二が続けていると、次第にゾンビは動かなくなった。
「ハアッ…!ハアッ…!…ったくよ……」
ゾンビを左側へと投げ捨て、大慌てでモニターを操作する誠二。ポンという音と共に給油可能な状態へと画面が切り替わる。
「これでOK。料金分は給油できるはずだ」
「…ガソリン入れる前に手を洗っとかないと」
異常なほど綺麗に掃除された洗面所に驚きつつ、誠二は手早く汚れた手を洗い始めた。
20××年4月1日 20時00分
「…疲れた」
自宅の床へと誠二が倒れ込む。
(ガソリンは携行缶も合わせてMAXまで入れた。食料も十分確保できたと思う)
「…とと、そうだ。飲み物とかは一応冷蔵庫に入れて置くか」
(いつまで電気が通電するかわからないからな。今の内に楽しんでおかないと)
重たい体を動かし誠二が手早く食料や飲料を冷蔵庫に詰めていく。
(今後外出は非常にリスキーな行為になる。しばらくは自宅に籠城だな)
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