第6話
「いいかよく聞け。お前の父親と母親はたぶんゾンビになっちまった。それは理解できるな?」
「…うん」
「でだ。俺としても隣人がゾンビなんて状況は冗談じゃないんだよ。遅かれ早かれ始末する必要が出てくるわけだ」
「…うん」
「だからこそお前に提案がある」
「…提案?」
「お前も共犯になるなら手伝ってやる」
手渡したバールを指差し誠二がそう宣言する。これは後々のトラブルを避ける為と、万が一犯罪行為として問い詰められた際、少女自身にも犯行を手伝わせる事によって簡単には口を割らせないようにするためだ。
(まあ、どうせ日本の法律や司法なんて直ぐに機能しなくなるだろうが、念には念をな)
「…分かった」
「よし。…行くぞ」
バールを手に持った二人がドアを開け部屋の中へと進んでいく。
「…これだな?」
誠二が部屋の中を徘徊する男女二人を指差す。フラフラと歩くその姿。目は白く濁り、肌から骨が露出している。
(間違いなくゾンビだ)
誠二が手に持ったバールに力を入れる。
「俺は男の方を始末する。お前は女を始末しろ」
「…どうやって?」
「頭部を破壊しろ。それで多分動かなくなる」
(大学で始末したあのゾンビ。バックミラーを確認した時にはピクリとも動いてなかった。多分だが頭部への攻撃は有効のはずだ)
確定的な情報ではないので「多分」という言葉の語尾を強調する誠二。
「…分かった」
二人がそれぞれのターゲットへ向かい始める。これから始める事は殺人などではない。ただの駆除だ。
「そんじゃまあ、お片付けと行きますか」
「ふう……まあここまでやっておけば大丈夫か?」
頭部が潰れた二体の死体をズルズルとドアの外へと引き摺っていく誠二。
(映画とかのフィクション作品を参考にするのはどうかとも思ったが、マジで頭を潰したら動かなくなったな。これは貴重な情報だ)
「よっと…!」
丁重に2体の死体を壁に立てかける誠二。これで彼の仕事は終わりだ。
「…ありがとう。とっても助かった」
その背中に少女から声を掛けられる。
「死体の処理に関しては自分で何とかしろよ。あとは飛び散った諸々の片付けとかもな。そんじゃ、俺はもう行くぞ」
「…うん」
隣人問題を無事に解決した誠二が自身の部屋へと戻る。ドアを開け、すっかり見慣れた部屋に入る。その瞬間、誠二の体にドッとした疲れが押し寄せてきた。
「はあああああ……マジで疲れた」
「とりあえず一旦シャワー浴びて仮眠しよう」
大量の食品や飲料を床に置き風呂場へと向かう誠二。
「ふおおおお…」
心地よい温度のシャワーが彼の睡眠欲を刺激する。手早く体中を洗い浴室から外に出る誠二。血まみれの服を洗濯機へとブチ込みベッドへと誠二がダイブした。
(1時間だけ。1時間だけ寝よう……)
10秒も経たたない内に誠二は夢の世界へと旅立って行った。
20××年4月1日 16時00分
「……はっ!?」
ガバッと、誠二が夢の世界から帰還する。時計を確認するとあれから2時間も経過していた。仮眠予定時間1時間オーバーだ。
(2時間も寝てたのか)
「…んんっ」
体を無理やり起こし精神に活を入れる誠二。彼にはまだまだ今日中にやるべき事が残っているのだ。
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