第4話
20××年4月1日 11時00分
「これとこれ…あとこれも必要だな」
大型スーパーに入店した誠二が次々と食料品をカゴの中へと入れていく。
(店内はまだ平和だ。だけど……)
注意深く他の客を観察すると、異常な量の食品をカゴに詰めている人の姿もチラホラと誠二は見かけていたのだ。
(マズいな…やっぱあの騒動は校内だけの出来事じゃないかもしれない)
急ぎ誠二は缶詰コーナーへと向かう。なるべく長持ちする物を選びカゴに詰めていった。
(缶詰の最大の利点は消費期限の長さだ)
(それに常温で食べられるものも多い)
(どれだけ買っても困る事はないだろう)
パスタ缶なども買おうか悩んでいると、その隣にある商品が誠二の目に入った。
「…カロリースティクか」
(確かこの手の商品はめちゃくちゃカロリーが含まれてんだったか?これもいくつか欲しいな)
少しだけ悩んだ後、固形タイプとゼリータイプの健康補助食品を選びカゴへと投入した。そして次に飲料コーナーへと彼は向う。
「水はまあ、家の風呂にでも貯めればいいとして…やっぱ嗜好品は外せないよな?」
エナジー系の飲料缶を5つカゴへと入れる誠二。
「後は…まあこんなもんか」
(このくらいが限界だな。一度部屋に戻って荷物を置く必要がある)
誠二が山盛りの状態のカゴをレジへと持っていった。
「…重い」
両手にパンパンの状態の袋を抱えた誠二がバイクの元に急ぐ。
「ん…?」
駐輪所に向かう誠二の足がピタリと止まる。
(何だ…?あいつは……?)
怪しげな男が誠二のバイクをジロジロと物色していたのだ。身長はおよそ160センチ。目元が空いた黒いマスク。上下共に黒系の服装。そしてその手には包丁が握られていた。
(完全に不審者じゃねえか…)
「ああ~んんん?」
「げっ…」
不審者と誠二の目がバッチリと交差してしまう。
(クソ……仕方がねえな)
誠二が様々な覚悟を固めつつ不審者へと近づいていく。
「あの~俺のバイクに何か用でも?」
「てめが持ち主かあああ!?生意気だなぁあああああ!?」
「いや、あの…ちょっと意味が分からな……」
「鍵よこせぇええええええええええええええええ!!」
「はあっ…!?」
男が包丁を持ちながら誠二に向かい突撃を始めた。
(何考えてんだこいつ!?)
予想外の事態に慌てつつも誠二が迎撃の準備を始める。左足を前に出し軽く右足のかかとは上げておく。食品が入った袋を胸に抱えた状態で不審者の攻撃を待つ。
「おりゃああああああ!!」
不審者が右手で包丁を振るう。
(雑だな…それに全然体重が乗ってない。走ってきた意味ないだろそれじゃ……)
男に合わせてタイミング良く誠二も前に出る。そして包丁は袋の内部に刺さり抜けなくなった。
右手の包丁が完全に加速しきる前に食料の詰まった袋でその包丁自体を無力化したのだ。
「んなっ!?抜けねええええ!?」
「当たり前だろ?缶か何かに引っかかってんだからよっ…!!」
誠二が無防備な男の顎に軽いジャブを打ち込む。
「むぐうっ!?」
「ふうう…しっ…!!」
不審者の腰が引けた段階で止めの右フックを腹部に打ち込む。パンッ!という乾いた音と共に不審者が地面へと沈んでいく。
「…っ!?…っ!?」
「安心しろ。10秒くらいで呼吸できるようになる」
不審者が金魚のように口をパクパクとさせ藻掻いているのを確認した後、誠二がバイクを発進させた。
(…勘弁してくれよほんと)
これ以上おかしな男に付き合っている暇などない。急いで誠二はスーパーから離れた。
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