魔術師の黙示録~魔法が抑圧された世界で突如として強大な魔力を手にした者達~

三隅 泡

プロローグ

暗い部屋の中で5人の男たちが円卓を囲んでいる。灯る光は円卓の真上の天井につけられた小さな照明だけだ。


「これで2人目だ。17年に1度しか現れないはずが今年で2人目だ!2度も魔法省が動いたんだ!悪夢だ!信じられん……もはや打つ手は一つしかないだろう。奴らを殺すべきだ」


口ひげを生やし、やせ細った初老の男がそう言った。すると、若い男が口を開いた。


「いや、そんなことはすべきじゃない。彼らも人間だ。あー…俺はウォード教信仰者ですよ。でも彼らを見ればわかる。いずれにせよ人間と遜色ありません。だから彼らに人権を与え、自由と安全を確保すべきだ。もちろん監視は必要ですけどね」


口ひげの男が言い返そうと口を開きかけた時、腹がでた2メートル近くある巨大な男が喋った。


「あの悪魔どもが人間だって?もし今の発言が民衆に知られたら辞職どころじゃ済まないな。」


若い男が声を荒げて言う。


「あんたらは何も分かってない。問題視すべきは彼らが何者かではなく何をするか、何ができるかだ。そのためには、彼らの力を引き出し安全に対処する環境を構築するためには、彼らの精神状態を良好にし、実験施設を作るべきなんだ!」


頬骨が出た短髪の男が口を開いた。


「それはつまり…魔法学の復興を願っているわけだな?かつてバカな研究者がそうしたように」


「違う、魔法学は滅びて当然だし、エルヴィン・ハーリーはバカな研究者じゃないし魔法学を復興させたわけでもない。だれのおかげで今こうして多くの〝オブルクルム〟が出現し中央政府が没落することを予見できたと思ってるんだ」


口ひげの男がすかさず言う。


「魔法の解明は紛れもない魔法学だ!」


「合理性のもとに問題を解決しようとしているだけだ。世界を滅ぼそうなんか考えてない。僕らは前進しなくちゃいけないんだ」


何も喋らなかった男が口を開いた。帽子をかぶっており、そのつばのせいで顔に影ができており、顔は見えなかった。


「前進した結果がどうなるのかお前の脳みそでは分からないようだな。ウォード教聖書科学文明の興亡第17章17節暗黒世界を知っていればすぐに分かるような簡単なことだ。そして、クリフ・ハーディン、中央政府国家反覆計画罪の容疑でお前連行する。」


帽子をかぶった男が椅子から立ち上がると、帽子の下の顔が見えた。顔左側の皮膚はやけどの跡でただれ、青い目を持っている。そしてクリフの方へ歩いて行った。銃専用ポケットに入った銃を右手で握っている。


「くたばれクソ野郎!」


クリフはそう言い、スーツの内ポケットの中から銃を取り出した。しかし帽子の男が先に銃を向けて撃った。弾はクリフの方に命中し致命傷にはならなかった。直後にクリフが銃で撃ち、帽子の男の心臓に当たった。男は倒れ、動かなくなった。致命傷のようだ。

クリフが打たれた所の肩を手でおさえて逃げようとする。ほかの男たちはただ茫然とクリフを見るだけだった。クリフは男たちを一瞥すると、扉を開け、走っていった。

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