第2話

西暦2045年世界人口が100億人を超える、100億人がキートリガーになっていたようで新たなる神が誕生した。

神は自分が神になったこと、迷宮世界次元を創造したこと、地球から探索者を募り見事迷宮を踏破した者には賞金を与えると全世界に宣告した。


 『迷宮は100階層、探索して100階層攻略すれば賞金100億を与える。参加資格は現在地球にて生活する者、参加の可否は選択可能、攻略失敗(死亡)100回でゲームオーバーとなり地球に戻される。定員1000名攻略失敗者が100名になれば新たなる参加者を募る。その世界では魔法を使用出来る。』


どこかの国の創作物でも読んでいたんじゃないか、というような話だった。神と名乗っている者は元日本人じゃないか。本当のことなのか。人類は疑心暗鬼だった。

迷宮探索の最初の1000名に選ばれた人間が日本から姿を消し迷宮探索がネット上に公開されると、人々はあれが事実なのだと理解した。

動画公開からまとめサイトが次々に作られたが探索者たちは地球のサイトを見られるわけではないらしく攻略は遅々として進まず、攻略失敗100回のゲームオーバーになり地球に戻ってきた。帰還者は一躍時の人となりメディアを賑わす。次の探索者に選ばれたいと考えた人々は鍛錬を始め、武道格闘技等が隆盛を極めた。


迷宮世界次元の創造から5年経過した西暦2050年、攻略が進まぬことに業を煮やした神は迷宮踏破者を出すために地球の技術革新を促した。

予てから進められていながら中々実現しなかった技術特異点に対し、人口知能の新たなる技術開示を行いAGI(Artificial God Intelligence)と呼ばれる汎用人工知能が誕生、ベーシックインカムの導入、世界統一通貨(単位:G)、政治経済の管理により国民は労働がなくなり世界は娯楽を迷宮攻略者を求めた。

個人認証ナノチップの体内への埋め込み、個人専用AGI端末の導入、迷宮世界次元のインターフェイスの一新によって迷宮世界次元へ個人AGIの持ち込みができるようになり迷宮世界次元で地球上の攻略サイトが閲覧可能になった。

それまでは迷宮世界次元内の人間同士でしか情報が回らなかったのが、地球からの攻略情報が得られるようになり探索進度が捗るようになった。


 

西暦2073年新たなる迷宮探索者に選ばれたこの物語の主人公、アキラ(23歳男)は賞金100億Gを獲得するべく迷宮世界次元に挑む。





少しの浮遊感の後 ”転送が完了しました” の声がかかり、地球上となんら違和感がないが目の前に聳え立つ巨大な迷宮を見上げて自分が迷宮世界次元に降り立ったことを実感した。

ざわざわとした騒めきが聞える、自分用のAGI端末があることを確認しどうしたよいかと思案したところ目の前にスクリーンが立ち上がり迷宮世界でのガイダンスが始まった。

そこかしこで ”おぉ ” ”やったぜ ” ”クリアしてやるぜ ” といった声が聞こえてくる。

 まずは自分専用亜空間の作成。ガイダンスに従い操作すると目の前に黒い穴が現れる。

 「これが亜空間の入口かぁ」

手を入れてみるが感触なし、次に頭を入れてみると中には各種家具が揃えられた部屋が見えた。

 「灯りが付いている?部屋?ベッドがあってテーブルがある、台所があって、風呂場はどこだ?」

中に入ると入口が閉じた。

 「おぉ、自動で閉じるようだ」

何でか感心してしまった

 「風呂場はどこだ?」

呟くと左手の空間に扉が出来た、開けてみると浴槽付きの風呂場になっており洗濯機も設置されていた。

 「風呂に入れるのは嬉しいなぁ。」

台所を見てみると設備が揃っており一通りのことは出来そうだ。

 「攻略第一だろうけど料理が作れるのは良いね。冷蔵庫、レンジもあるし時短料理もできるな。」

スクリーンが目の前に来てガイダンスを進めろと催促してきた。

 「次はプレイヤーネームの設定、キャラクターメイク?」

ゲームを遊んでいるみたいだね。

 「名前はアキラ、キャラメイクは髪色変えるくらいでいいだろ、後で変えることも出来るようだし。」

次は装備の設定か、初期設定の武器防具から選んで両手剣に革の防具、それと魔法。

 「やった魔法だぜ。どれをセットするかな。」

魔法は使いたい種類を選んで購入、タブレットにセットして使える。地球通貨Gで購入するのだが強力な魔法は高い、セットできる数に制限があり無限に使える訳ではない。迷宮探索に入る前にタブレットで装備魔法道具を選択組み合わせる、デッキを構築するとも言うそうだ。

 「まぁ最初は安く基本セットかな。2階層まではチュートリアルに改変されたらしいから安いところから始めていこう。稼げるようになってから強力な魔法だな。」

各種道具薬も初心者キットを購入セットして終了。


最後は迷宮内での規則。

死亡で攻略失敗1回、100回失敗でゲームオーバ。

階層クリア(ゲート通過)で続行か中断の選択可能。死亡時は亜空間内に戻される。

身体欠損は迷宮内では欠損回復薬でリカバリー可能、迷宮を出て亜空間内でのみ無料でリカバリー可能。

迷宮内での食事はアイテムボックス内に事前に用意したもののみ摂取可能、他人に貰うのも可能。

PK(プレイヤーキラー)すれば攻略失敗で死に戻り、パーティー内でのフレンドリーファイアでPKも攻略失敗で死に戻り。

階層クリア(ゲート通過)から48時間以内に探索再開すること、死亡(攻略失敗)から24時間以内に探索再開すること。時間超過すれば攻略失敗で死亡。



 「知ってはいたけど時間制限は精神的圧力が強いな。なるべく死なないように立ち回らないと。」


 ”ガイダンスは以上です、探索を開始しますか? ”  ” Y / N ”

俺は Y を選択、すると視界にAR表示が出た。探索開始までの残り時間が表示される。


”47時間59分 ”



 「よし探索開始するぞ。俺の探索はこれからだ。」

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