そんな男でよろしければ、どうぞご自由にお持ち帰りください
中村 青
第1話 隠すなら隠せ、釣った魚にはちゃんと餌をやれ
最近、どうも旦那の様子がおかしいとは思っていたが、まさか本当に浮気をしているとは思っていなかった。
彼がお風呂に入ってる間に無防備に置かれたスマホをチェックしたのだが、出るわ出るわ、大量の証拠がわんさか出た。
『
『俺も
『私もー♡ ねぇ、奥さんと私、どっちが好き?』
『そんなの決まってるだろう? もちろん日和だよ♡ あんなの妻っていうよりも、ただの家政婦だよ』
あんなので悪かったな……!
このスマホを思いっきり叩き付けて修復不能にしてやりたかったが、ふぅ、ふぅ、ふぅ……と息を繰り返して気持ちを落ち着かせた。
それにしても腹が立つ!
私はアンタの家政婦でも母親でもない!
彼は元々私の会社の上司だった人で、10歳離れていた。付き合った当初は頼りになる人だと思っていたが、今となってはただのDV野郎。
「掃除が甘い、テレビ台に埃が溜まっているじゃないか。もし俺がアレルギーにでもなったら、どう責任を取ってくれるんだ?」
「料理の味付けが薄すぎる。もう俺の分は用意しなくてもいい。外で食ってきた方が何倍もマシだ」
「洗濯物もシワだらけ、アイロンもろくに掛けられないなんて主婦失格だな!」
極め付けは必死に家事をしている私にわざとぶつかってニヤッと笑う様子だ。あの嫌味な顔を見るたびに私の憎悪は膨れ上がっていった。
「あんにゃろー! 自分は帰って早々ソファーに座ってテレビばかり見てるくせに! 私に文句をつけるなら自分の靴下くらい洗濯機に入れろっていうんだ!」
積もり積もった私の怒りはピークに達していた。そこにこの
むしろこの一手は私にとって好都合だった。これで証拠を集めて、思いっきり慰謝料を請求してやる!
こうして私、
———……★
それにしても、今まで浮気や不倫をされたことがなかった私は、何をしたら良いのか分からなかった。
とりあえず浮気相手の名前とIDを控えて、急いでスマホ画面を写真に収めた。
ついでに写真フォルダーを開いてみたら、何とも気持ちの悪い写真の動画が。
「うげぇ……、
いやーん、ダメーンと言いながらも、バッチリ上目であざとく映るのは流石と称賛したくなる。
私なら無理!
こんな弱みになるような写真や動画、絶対に撮らせたくない!
むしろ私の写真を撮ったりしてないよな、この変態男!
血眼になってスクロールしたが、ざっとみた感じでは問題なさそうだ。
一先ず安心である。
それよりも相手の顔だ。
この人……私よりも年上だよね?
私の年齢は32歳。どうみても私よりも上に見える。下手したら旦那と同じ、いや上かもしれない。
思わず膝から崩れ落ちてしまった。
せめて浮気をするのなら、私よりも可愛い女としろよ!
これに負けたのかと思うと悔しくて、無性に腹が立つ! まだキャバ嬢に貢いでいる方が健全に思える。
「……ここ数年、ご無沙汰だと思っていたけれど、まかさこの女に負けていたなんて」
まさかこの角度からダメージを受けるとは思ってもいなかった。それより実は旦那が熟女好きでしたという事実が受け止めきれなかった。
なら何で私と結婚したんだ! 理不尽だ、ふざけるな!
それなら私も、もっと若くてカッコいい男とイチャイチャウフフしたかったわ!
付き合った当初は「年上の男性って頼りになるし男らしい」と思っていたが、年を重ねると「口うるさいし、面倒臭い……」に変わってしまうのだ。
皆が皆、そういう男じゃないことは分かっているが、私の旦那はそうだったのだ。
それにしても私にはクソみたいなDV野郎だが、浮気相手にはどんな態度をとっているのだろう?
見た感じ、良好な関係を築いているようだが?
「普段のストレス発散は私にして、甘い汁は浮気相手の日和ちゃんにしてるっていうのか? あの野郎……!」
怒りを込めた拳がワナワナと震えた。だがのんびりしている暇はない。そろそろお風呂から上がる時間だ。
私は何事もなかったようにスマホを直してキッチンへと戻った。
「——はぁ、汚いものを見てしまった」
一応、私のスマホにも動画を送ったのだが、見るだけで吐き気が込み上がる。
「こんな男、さっさと別れて清々したいわ……」
時間差になって現れた情けないとか、惨めな感情。私はうっすらと浮かんだ涙を拭って、残っていた洗い物を片付け始めた。
———……★
次回『この糞DV男に成敗したい! 誰か完全犯罪の手段を伝授して!(かなり
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