第21話 みぃつけたっ
誰もが寝静まる夜。
街のはずれにある古い古屋で屈強な男は大きな壺を持って入っていった。
「へへ、今日も仕入れてきましたぜ」
「ふむ」
壺の中には小さな赤子が一人入っていた。
その赤子を見定めるようにヒゲの爺さんは見る。
「どうだい?」
「良いだろう、交渉は成立だ」
「よっしゃ」
取引に置いて時間をかけるのは愚策。
特にこの街では昼夜問わず冒険者もウロウロしており、それにプラスして騎士達もパトロールをしている。
今日も何事もなく終わるはず__だった。
「みぃつけたっ」
「「!?」」
どこからともなく聞こえる少女の声。
2人が戦闘態勢に入るのに迷いはなかった。
「だれだ!出てこい!」
その瞬間古屋の明かりが消える。
いや、明かりをつけているわけではない……月明かりが消えたのだ“まるで何か大きな物が覆い被さるように”
「っ」
暗い。
真っ黒だ、まるで洞窟の中。
「【光源】」
仕方なく男は光を灯した。
だがそれは絶望の光……みない方が良かっただろう……
「なんだこれは!?ひぃ!」
窓から見えるのは“白い蛇の鱗”
古屋を中心にとぐろを巻いた規格外の大きさの蛇。
その蛇は古屋の屋根を口でねバキバキと取り除き、中を覗きこむ……まるで先程の赤子を見ていたお爺さんのように。
「な、なんなんだおま__」
そこまで言うと蛇は屈強な男を丸呑みにした。
「……」
爺さんの方も落ち着いているわけではなく、言葉が出ないだけで腰を抜かしている。
『お前が人攫いだな』
先程の少女の声ではなく独特な声が爺さんの頭の中に響く。
こくりと頷き肯定した。
『その赤子をどこへ連れていくつもりだ?』
「……」
裏の世界では冒険者と同じくらい危険が伴う。
その中をこんな年齢になるまで生きてきた爺さんだが、今、目の前の圧倒的な怪物に人生で初めて立っているだけで死を覚悟し、走馬灯がよぎる。
『早く答えろ、ぺっ』
吐き出されたのは先ほどの屈強な男の塊。
口の中に入った瞬間様々な毒で身体を変形させられ死んだのだ。
「ひ、人攫いに売る……ワシは仲介役じゃ」
『なるほど』
白大蛇はベキベキと木が折れるような音を立てながら1人の裸の少女に変身した。
「私もそこへ連れていってっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます