3-6 卒業
合格通知が届いたのは、それから一週間後のことだった。私は二次試験である面接も突破し、見事松山書店への入社内定をものにしたのだった。そして、気になっていた男性、与津さんもまた、入社の内定をもらったのである。私たちは二次試験の会場で再会し、連絡先を交換したのだった。それは運命的な出逢いだった。
「今度、一緒に映画を見に行きませんか。合格のお祝いがしたいんだ」
電話をいただくことが多くなり、何度かデートを重ねた。
そのことを圭子さんに話すと、「若いっていいわね」と何度も繰り返すので、圭子さんにも春がきますよ、と言ってしまった。カエデさんは男性の友達も多く、そのことを話しても反応が薄かった。
いずれにせよ、私に遅い春が来たことは嬉しい出来事であり、就職も一緒に決まってしまったことで、私は幸せな気分で毎日を過ごしたのだった。
学生生活の最後に、カエデさんと卒業旅行に行った。東京でも良かったのだが、「古い樹木が見たい」とカエデさんが言うので、京都にした。結局カエデさんは、樹木医になる理系の大学に進学した。
私は圭子さんと一緒に、近場のバーへと行き、二十歳のお祝いをしてもらった。
バーは小洒落たつくりで、大人の雰囲気がある店だった。ジャズがBGMで流れており、店内は薄暗かった。私は飲みやすいと言われたブランデーを注文しようと思ったのだが、色とりどりのカクテルを何杯か飲んだ。
三月、クロッカスの咲く頃に、私は短大を卒業し、社会人となった。そして私は、新社会人として松山書店で働きはじめたのであった。
「クロッカスの咲く頃に」第三章 飛翔 (結)
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