偶像の少女となりて

 嘗ての半月はすり減りつつも存在を保ち山に佇んでいた。

 目一箇の仙人は手を汚し邪仙になる事を厭わず脱け殻を山に差し出して願いを叶えた。

 そして半月は山との契約の為に脱け殻を被り偶像の少女となったのだった。


 山の気で脱け殻を保つ為に山から遠くへは中々離れられず偶像の少女の行動範囲は山の恵みとシマに依存し、そこから離れれば離れるほど衰弱していき生命維持も困難になっていく上に長くは生きられない運命さだめであった。


 偶像の少女は偶像と例えられるだけあって邪仙と肩を並べる程の魅力を秘めて、それは半月に由来するものであり妖しげで危うげなカリスマをもっていたのだった。

 偶像の少女は虐げられた愛し児へ安寧を与え、慕う者が周りを囲うようになっていった。


 自分の身を呈して庇い消えゆく灯火の愛し児に偶像の少女は自身を変若の《おち》形代としてヒトとしての命を全うしようとした。

 しかしそれを邪仙に止められ外法で命を引き止めた時、偶像の少女は半月から女に変わったのだった。


 やがて偶像の少女は寿命が迫ってくる中で慕う愛し児達が安寧の偶像を失わない様に新たな偶像の子を産み落としヤマへと消えて行ったのだった。

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