とある山々のお話

「これは、このあたりで伝えられてきたらしいお話なのですが――」




 昔々、とても貧しい山奥の集落がありました。

 抱えられるものも少なく、来るものの多くを返さなければならず、あるものも捨てなければならなかったそうです。

 とめるものに山の更に山奥へと押し込められ流されたものたちの集まりでした。


 ある時、川の神を祀っていたものたちが流されてきました。

 川の神を祀っていた巫覡は深き山へと流され、流されたものたちを元に山の神をかたどり祀ることにしました。

 すると山の怪異モノが巫覡が作り上げ象った神を喰らい巫覡と契りました。

 山の怪異は蛇の形を取り、巫覡は山の尾根を 或いは川、湖、滝を司る神として祀りました。

 すると、貧しい山奥の集落は山の、川などの恵みを得られ多くを抱えられるようになりました。

 巫覡は祭祀と長をする家となりました。

 契った最初の巫覡は死した後に神が喰らい神は更なる繁栄を約束しました。

 代を重ねる毎に集落は大きな村となり、ついには先祖を山奥へ押し込めたとめるものよりも力を得ることが出来ました。

 そして血を交え取り込み街ごと乗っ取りました。

 血が薄くなること、濃くなりすぎる事を危惧して、様々な愛し子を集め育てるようになり学び舎を作りました。

 山の神は川の神でもあり、一度怒り荒ぶれば押し流され喰われてしまいます。

 山の神が飢えないように代を重ねる事に喰わせ、供儀を行い、愛し子も口の中に喜んで入っていきました。

 山の神は寛容で情もあるものの、残酷でもありそこにいる山の怪異は非情を体現したかのようなものでありました。

 かつての供儀も神に喰われた上で最上の愛し子だった者は山の怪異になり今も山に存在するようです。

 山々は霊峰と讃えられ今も数多くの神秘を抱えて存在しています。

 中央にも血を交え今でも祭祀の家はこの地でまつり、はふりのものとして栄えています。






「赤の女王の話は本当なんでしょうね」

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