Marshalling Yard
「無事、運賃の徴収を終え帰還しました」
竪洲駅まで精神的にかなりぐったりとした状態で
鬼の上司が出迎える。
「おう、ようやく帰ってきたか、それで何を徴収してきたんだ?」
「こちらです」
比良坂は気を取り直して車内から死体の入った複数の死体袋を引っ張り出す。
「こちらが受け取ったものの明細書です」
「おう………ん、所有者半月?」
「領収書の宛名に半月と書かれてたので提出書類にもこう書くしか無かったんですよ」
領収書の控えはこちらです、と明細書に挟まれていた紙を指さした。
「確かに半月と書いてあるな……凄いな、男女って性別で書く奴初めて見たぞ」
鬼はあの中性的な美貌は元よりそれなりの怪異さえも押し潰さんばかりの気配の圧を思い出し何とも言えない気持ちになる。
「死体袋に貼り付けられた書類には査定結果が書いてあります」
ゴミ手前から掘り出し物まで様々という感じですかね、と比良坂は評する。
鬼はそうかと下に置かれた死体袋を一瞥しようとして中身がパンパンな袋を凝視した。
「こっちの死体……随分な上物のようだが先方は良く手放したな、というか、お前もよく引き取ったな。書類に目を通さなくても、袋から出さなくてもわかるレベルでヤバいオーラを放ってるぞ」
これだけで対価としては十分どころじゃないレベルな上に逆に何要求されるか恐ろしい、と鬼はぼやく。
「お客様を見るにヤマ自体にコレをあまり置いておきたく無さそうでした。不法投棄された死体に対してはどうでも良さげな反応を示していたんですが」
ゴミ手前の扱いで査定した死体はコチラですね、と指差しながら比良坂は言った。
「そりゃあ、ヤバい上物死体に関しては直接的に先方と何かしらあったんだろうな、死体になる前の話かもしれんが、コレをどう見ても碌なモンじゃないだろう」
こっちからすればそういう事情はどうでもいいが、と鬼は中身の入った死体袋を収容場所に持って行く準備を始める。
「とりあえず、今日のお前の業務は切り上げていいぞ。書類は明日やれ」
お疲れさんと言い鬼は徴収した死体を全てまとめて担ぎ出す。
「了解しました。お疲れ様でした」
お先に失礼します、と言って比良坂は車内に戻る。そしてその日の業務を終えた比良坂は待機所まで列車で去っていった。
低速で去っていく比良坂を見送りながら何か違和感を覚えるがどうもわからず、今呼び戻すのも面倒なのでそのことも明日に回すことにする。
「さて、何か引っかかるが……取り敢えずやるか」
鬼も中身の入った死体袋を担いで収容施設に向かっていった。
外は白み始め夜が明けようとしている。
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