第3話 隠された力 - 京都・清水寺
京都の朝は、どこか神秘的な静けさに包まれていた。ハルとソラは、金沢から夜行バスに揺られて到着し、清水寺へ向かう途中だった。
「京都に来るのは、何度目かしら?」ソラがハルに尋ねた。
「うーん、数えきれないけど、こんな特別な理由で来るのは初めてね」とハルが微笑みながら答えた。
清水寺の門をくぐり抜けると、古びた木造の建築と緑豊かな庭園が二人を迎えた。静寂と荘厳な空気が、訪れる者の心を落ち着かせた。
「ここ、本当に美しいわね…」ソラが感嘆しながら言った。
「ええ、祖母もここが大好きだったみたい。だけど今日はただの観光じゃないからね。ここにも、兼六園の老婆、彼女から名前を教えてもらったわ。アヤメさんが何か手がかりを残しているはずよ」とハルが話した。
清水寺の本堂にさしかかると、不思議なことに、彼女たちだけを誘うような声が聞こえてきた。その声の主を追っていくと、奥の庭にアヤメが座っていた。彼女の周りには、まるで時間が緩やかに流れるような感覚があった。
「おかえりなさい、ハル、ソラ。京都へようこそ」とアヤメが静かに言った。
「アヤメさん、またお会いできて嬉しいです。ここで何か新しい発見があると聞いていますが、それは本当ですか?」ハルが尋ねた。
アヤメは優しく微笑み、言葉を紡ぎ始めた。「ええ、実はあなたたちに伝えるべき重要な事があります。それは『時間の宝石』に関することです。」
「時間の宝石?」ソラが興奮して言った。
「そう。それは非常に強力で、時間を操る者だけが扱える神秘の石です。あなたたちの祖母もその存在を追い求めていたの。この宝石を見つけ出し、適切に使うことができれば、多くの時の流れを修正し、世界に大きな影響を与えることができるのですよ。」
ハルとソラはアヤメの話に夢中になった。時間を超えた力が、どれほどのものなのか、その全貌をまだ把握しきれていないが、興味は尽きない。
「しかし、その力は非常に危険でもあります。誤った手に渡れば、未来を狂わせることだってあり得るのです。だから、その宝石を探し出し、安全な場所に保管することが、あなたたちの新たな任務となるでしょう」とアヤメが続けた。
「でも、どうやって探せばいいのですか? その宝石の手がかりなんて、何もないじゃないですか」とソラが心配そうに言った。
アヤメは深くうなずき、静かに説明した。「私があなたたちに教えられるのは、宝石が最後に目撃された場所だけ。それは奈良の東大寺の近くです。あなたたちがそこで何を見つけるかは、あなたたちの行動と選択にかかっています。」
ハルとソラは互いに視線を交わし、新たな決意を固めた。「わかりました、アヤメさん。私たち、その宝石を見つけ出し、時間を守る使命を全うします」とハルが堂々と宣言した。
アヤメはハルとソラの決意を聞いて、一層深い満足の表情を見せた。「それは素晴らしい。しかし、その前に、あなたたちにはこの地で学ぶべきものがあります。清水寺の僧侶たちとともに禅を学び、心を整えてください。時間の力を扱う者は、内面の平和も必要ですから。」
「禅を学ぶんですか?」ソラが興味深げに尋ねた。
「ええ、ここでの修行があなたたちの精神を鍛え、今後の試練に立ち向かうための準備を整えるでしょう。」アヤメが答え、二人を本堂の奥にある座禅室へと導いた。
室内は薄暗く、壁には古い掛け軸が飾られていた。そこには数人の僧侶が座禅を組んでおり、その静寂は時間が止まったかのように感じられた。ハルとソラは指示に従い、座布団に腰を下ろした。
僧侶の一人が彼女たちの前に進み出て、穏やかに語り始めた。「座禅は心を静め、自己と向き合う修行です。心の動きを観察し、すべての雑念を手放すことで、本当の自分と対話できるようになります。」
ハルは深くうなずきながら、質問を投げかけた。「雑念を手放すのは、簡単ではないと思いますが、それにはどのように取り組めばいいのでしょうか?」
僧侶は微笑みながら答えた。「始めの一歩は、ただ呼吸に意識を向けることから始めます。息を吸い、息を吐く。それに集中することで、心は次第に落ち着きを見つけるでしょう。」
ソラとハルはその指示に従い、目を閉じて呼吸に集中した。周囲の音が徐々に遠のき、二人の心は静かになっていった。
「感じることができますか?」僧侶が静かに尋ねた。
「はい、何かが違うことを感じます。心が軽くなったような…」ソラが静かに答えた。
「それが禅の力です。自分自身との対話を深めることで、内面の平和が生まれ、それが外の世界にも良い影響をもたらすのです。」僧侶が説明を続けた。
座禅の終わりに、アヤメが再び二人の元に戻ってきた。「いかがでしたか?」
「心がすっきりしました。何か大きな力を感じることができました」とハルが感想を述べた。
「それはよかった。あなたたちが内面の平和を見つけたなら、時間の宝石を探す旅も、もう少し明確な方向を持つでしょう。今、あなたたちには必要な精神性が備わっています。次は奈良です。そこで、新たな発見があるはずです」とアヤメが微笑みながら言った。
ソラとハルは感謝の言葉を述べ、清水寺を後にした。内面の平和を胸に、時間の宝石を求める次の冒険へと足を踏み出したのだった
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