タワーディフェンスは最強の防衛術

昼熊

第1話 プロローグ

「さーて、どうなることやら」


 自分が踏みしめている足下に視線を移す。

 一見ただの古ぼけた石造りの壁に見えるが、どんな攻撃でも傷つくことのない堅牢な防壁。

 そこには両開きの巨大な門が備え付けられている。材質は鋼鉄。筋肉自慢の衛兵が四人がかりでなんとか開閉することのできる重量。

 だが、実は門の方が城塞都市を守る城壁より脆い。何度か攻撃を食らえば崩壊してしまう。そこをヤツらも把握している。

 城塞都市への唯一の出入り口であり、唯一の弱点。

 俺はここを死守しなければならない。


 城壁の先にあるのは森を切り開くように走る一本の道。門から真っ直ぐ伸びたかと思えば直角に曲がり、更に急カーブを描いている。

 上から見るとまるで迷路のような道。使いやすさなんて一切考慮してない、入り組みすぎた欠陥だらけ。

 だがこの道を利用する住民は誰一人としていない。城壁の向こう側に広がるのは魔王の領地。

 そこからやってくるのは無数の魔物や魔族のみ。利便性など必要ない。


「おー、大迫力だ」


 地響きと共に視界に入るのは大地を埋め尽くすほどの魔物の群れ、群れ、群れ。

 雑魚的として定番のゴブリンっぽいのやスライムっぽいのや、一つ目の巨人や全身が燃え上がった馬、足が六本ある巨大トカゲやアンデッドまで揃っている。

 他にも多種多様な魔物の混合部隊。


「壮観、壮観」


 二十ぐらいまで敵を数えてみたが馬鹿らしくなって止めた。見える範囲でも千は軽く超えている。

 これからたった一人でヤツらの相手をしなければならない。普通ならあまりの絶望に茫然自失となり、涙の一つでも流す場面だ。

 だけど俺は笑みが隠しきれない。

 圧倒的な数を前に罠と戦略でねじ伏せる。この瞬間が最高だ。


「準備万端。あとは開始を待つのみ」


 さあ、こい!

 万全の体制で手ぐすね引いて待ち構えているんだ、せいぜい派手に散ってくれよ!

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