いろめがね

琴吹ツカサ

いろめがね

「あっ。ダンゴムシだ」


ビルの山脈の中に、ぽつんと緑が広がる公園。

それを、二つに分つようにして伸びる並木道。


 春風に身を任せて散歩をしながら、一本一本の木の根元を観察していた。


「こっちには、アリの巣」


 昔から、気になった事は確かめなければ気が済まないタチだ。


 たとえば、木の根元に何かいるかどうかとか。


「あっちには、おっさん」


 木の根元に、サングラスをかけた坊主の男が、自前のキャンプ用の椅子に腰をかけ、クリップボードを片手に通りすぎる人達を顔で追っかけていた。


「なにしてんだ?あのおっさん」


 気持ち悪い。素直にそう思った。

 でも、そんな事より何をしているのか気になる。


 とりあえず、話しかけてみよう。そう思い近づいて行くと、男の声が聞こえてきた。


「あ〜。ん〜、七十五点くらいだな」


 巨乳のOLを見て、そう言うと男は、挟んでいた紙に何かを書いた。


「なにしてんの?おっさん」


「なんだ?お前。仕事の邪魔すんなよ」


 男は、こちらに顔も向けずに、少し慣れた口調で追い払われた。


 さっきは、巨乳のOLガン見してたくせに。

「巨乳のOL見るのが仕事なの?」


「こりねーガキだな。俺は巨乳のOLを見てそれに点数を付けるのが仕事なんだよ」


「点数?どれだけエロいかとか?」


「ん〜。エロいかどうかもだが、それだけじゃねぇ。着てる服とか、顔とか、歩き方とか、気品とか、あとエロいかとか、そういうのを見るんだ」


「なんの意味あんの?」


「まぁ、街のに住む人に金持ちが多いか、貧乏が多いか、良い奴が多いか、悪い奴が多いか、それがなんとな〜く分かる。それだけだ」


「へ〜。んじゃ、俺何点?」


「そうだな。服はブランド物、顔はイケメン。歩き方は、少しガニ股で気色悪い。気品はミジンコといい勝負。エロさは、まぁ、男だし論外」


「んだそれ」


「金持ちで品のないガキ。まぁ、いいとこ十五点が妥当だな」


「まじかー」


「おっ!なんだありゃあ!?」


「どーした急に、おっあれは!」


 おっさんが指差した先を見ると、そこには、金髪メガネの巨乳の外資系OLがいた。


「「ひゃくてぇぇぇん!!!」」


 多分俺たちのメガネは0点だと思う。

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いろめがね 琴吹ツカサ @kotobuki_58

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