第105話 捨てられ王子、うっかりする





「うっ、こ、ここは……」


「お兄ちゃん!!」


「え、あ、ローズ……?」



 目を覚ますと知らない天井だった。


 そして、ベッド脇に置かれた椅子に座ったローズが心配そうに俺を見つめている。



「な、何があったんだっけ?」


「貴方は爆裂魚の爆発で飛んだ小石が頭に当たって気絶していたのです」


「あ、クーファさん? クーファさん!?」



 聞き慣れた声が聞こえてきたので入り口の方に視線を向けると、そこには美女が立っていた。


 まず驚いたのは肌の色だ。


 この世界に転生してから初めて見る、人間の肌色とは全く異なる青い肌。

 目の白い部分が黒くなっており、瞳は金色に輝いている。


 髪はサラサラの銀色で頭からは羊を彷彿とさせる角が生えていた。


 そして、ここからが重要だ。


 スイカ並みに大きなおっぱいと細く締まった腰、安産型のお尻とムチムチの太もも、長い脚の美女だった。


 それらを惜し気もなく晒した肌面積の広い、ほぼ紐のような服。


 

「どうかしたのですか?」


「い、いえ、何でもないです……」



 俺はクーファさんをエロい目で見る前に慌てて視線を逸らした。


 久しぶりに見る女体なのだ。


 それがこんなダイナマイトボディーとか、下半身に悪い。


 冷静に考えてみれば、ローズマリーが殺されてからは心に余裕がなくて誰ともエッチなことをしていなかった。


 それからローズマリーの生き返らせ方が分かり、冥界に来て何日も経っている。


 駄目だ、絶対に意識しちゃダメだ。


 俺はローズマリーを生き返らせるために冥界まで来たのだから。

 ローズマリーを生き返らせるまで、エッチなことをしてはならない。


 そう、決意したのに……。



「顔色が悪いですね、レイシェル殿。少々失礼します」


「おうふっ」


「……ふむ、少々体温が高いようですね」



 クーファさんが俺の額に自らの額を押し当てて体温を計ってくる。


 青肌美女の顔が目の前にあるのだ。


 少し前に顔を出せば、そのままキスできてしまう距離だ。


 我慢だ。我慢せねばならない。


 そう思って視線を下げると、大きなおっぱいが視界に入った。

 下半身が凄まじい熱を帯びて熱くなり、昂ってくる。



「亡者も風邪を引くのですね。困りました。亡者にはどのような薬が効くのでしょう?」


「い、いや、しばらく寝れば治りますから」


「そうは言っても……」


「ほ、本当に大丈夫ですから!! お気になさらず!!」



 どうにかクーファさんに部屋から出て行ってもらわねば。


 そして、早く一人で鎮めねば。


 と、その時だった。ローズが何かに気付いて、大きな声を上げる。



「あ、お兄ちゃんの魔法の杖が大きくなってる!!」


「ローズ!?」



 ローズが俺の愛刀を指差して言ったのだ。


 クーファは最初こそ首を傾げたが、ローズの視線の先を辿って意味を察する。


 そして、顔を真っ赤にした。



「……え? あっ……♡」


「い、いや、あの、クーファさん? これは違うんです!!」



 俺は慌てて弁明するが、クーファさんの視線は俺の愛刀に注がれたまま動かない。



「これが、人間の……大きいですね。悪魔でもこれほどの大きさは中々……」


「何を評価してんですか!?」


「その、レイシェル殿。辛いのであれば、私がお手伝いしますよ?」



 そう言って誘惑してくるクーファさん。


 出会って間もない俺にここまで積極的な理由が分からない。



「ど、どうして……」


「その、何と言いますか。迷いなく人を助ける貴方の姿に興奮してしまいまして。――私では、ダメでしょうか?」


「い、いや、ダメというか……」



 ああ、そうだ。駄目だ。


 今はローズマリーを生き返らせるために冥界までやってきた。


 だから、流石にヤっちゃダメだと思う。


 絶対に我慢せねばならない。俺が歯を食いしばって堪えていると――



『まったく。仕方のない奴だな、レイシェルは』



 ふと聞き覚えのある声が聞こえた気がした。


 その次の瞬間、ローズが何を思ってかバッと立ち上がった。



「お腹空いたから何か貰ってくるー!!」


「え、あ、ちょ、ローズ、待っ――」


「わっ、レイシェル殿!?」



 部屋から去ろうとしたローズを追おうと、俺が勢いよく立ち上がった瞬間。


 思ったように足が動かなくてよろめいた。


 そのままクーファさんを押し倒してしまい、その豊満なおっぱいに顔を埋めた。


 正直、そこから先は覚えていない。


 俺はただ暴走した本能に従ってクーファさんを、クーファの身体を貪る。

 悪魔と言っても何ら人と変わらなくて、素晴らしい時間を過ごした。












 ヤることヤった後。



「すみませんでした」


「い、いえいえ、私も自分から誘いましたし、謝らないでください」



 俺は土下座で謝罪していた。


 自分が思っている以上に性欲が溜まっていたのかも知れない。


 クーファが気絶してもヤってしまった。


 普通なら嫌われてもおかしくないプレイも色々してしまったのだ。


 文句を言われても仕方ないと思っていたが……。



「むしろ、その、男らしくて素敵でした♡」



 なぜかクーファからの好感度は上がっているようだった。


 いや、怒っていないならいいけど。


 でもやっぱり、暴走した性欲を止められなかったのはよくないと思う。


 次からは気を付けねば。



「ところでレイシェル殿、貴方はもしかして生きているんですか?」


「あ、うん。……あ、違!?」



 うっかりしていた。


 ローズパパに無闇に話してはならないと言われていたのに。


 肌を重ねて油断してしまった!!


 いや、待て。厳密にはクーファは悪魔であって亡者ではない。


 ならば話してもセーフなのでは?


 ……いや、普通にアウトだよな!! ど、どうしよう、何か言い訳をしないと!!



「やはり、そうですか。亡者はあまり性欲が無いと聞いていたので、おかしいと思ったのです」


「いや、そのぉ」


「ご安心を、レイシェル殿。誰にも話したりはいたしません」


「……え?」


「はい。私とレイシェル殿の秘密、ということにしておきましょう」



 そう言って人差し指を唇に当て、微笑むクーファ。


 かわいい。


 いや、それよりも冥界中層で生きていると知っても友好的に接してくれる相手が見つかったことを喜ぶべきだろうか。



「……クーファ。実はお願いがあるんだ」


「なんでしょう?」



 俺が冥界にいる理由を、正直にクーファに話した。



「なるほど。愛する女性の一人が亡くなってしまい、その人物を生き返らせるためには冥界神へ会いに行くと」


「うん。だから、下層までの行き方を教えてほしいんだ」


「……分かりました。私が道案内をしましょう。その代わり、条件があります」


「じょ、条件……?」



 悪魔と言うと契約を重んじるイメージがあるが、何を要求してくるだろうか。


 少し不安に思っていると、クーファは頬を赤らめて言った。



「わ、私もレイシェル殿のハーレムに、入れてはもらえないでしょうか?」


「え?」


「その、凄く気持ちよかったので……」



 俺は激しく頷いた。


 いや、これはあくまでも下層へ続く道を知るための交渉なのだ。


 ただエッチなことがしたいだけではない。


 断じて青肌美女とのエッチが新感覚でハマってしまったわけではない。ないったらない。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者(青肌はいいぞぉ……青肌はいいぞぉ……)


レ「こ、こいつ直接脳内に!?」



「青肌美女とか最高やん」「久しぶりにやらかしてて草」「青肌はいいぞぉ(洗脳済み)」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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