第67話 捨てられ王子、ラピ◯タ計画実行
ライムを取り逃がしはしたが、いつでも協力をしてもらえるようになった数日後の話。
「か、完成ですぞー!!」
「や、やったな、イェローナ!!」
「レイシェル氏のお陰ですぞ!!」
俺は今、ラピ◯タ計画のための陸地浮遊装置を開発しているイェローナの工房に手伝いとして来ていた。
手伝いと言っても俺にできることは少ない。
余計な物資の消費を抑えるため、度重なる実験の過程で生じた故障した魔導具を『完全再生』で修理する程度だ。
その他の専門的なことには素人なので一切合切手を出していない。
……口は出したりしたけど。
「いや、レイシェル氏のお陰ですぞ!! 物が上から下に落ちる理由、重力の存在を知っただけで研究は半分終わったも同然ですからな!!」
ということらしい。
この世界には銃を始めとした近代的な兵器が急に登場したが、その他の分野では地球にまだまだ及ばない。
というか単純に物が落ちることを疑問に思うことがないのだ。
そう考えると最初に様々な事柄に疑問を抱いた昔の人は凄いなあと思う。
国を浮かせるに当たって、何となく話した重力の話はイェローナにとって衝撃だったそうだ。
「これなら想定よりも遥かに少ない魔力量で重力を弱められますぞ!! そうなったら後は推進装置で細かい軌道を調整してしまえば、敵の手が届かぬ空の国の完成ですな!! 夢が広がりますなあ!!」
「だね――っと、イェローナ!?」
と、興奮した様子のイェローナに程よく相槌を打っていると。
急にふらっとイェローナが倒れそうになる。
俺はイェローナが床に頭を打ったりしないよう、慌てて手を伸ばした。
先に言い訳させてほしい。
決してわざとではないのだ。わざとではないが、イェローナのハリのある柔らかおっぱいを揉みしだいてしまった。
むにゅ♡ もにゅ♡ むにゅ♡
……はっ!! いかんいかん。つい揉みしだいてしまった。
「イェローナ!? おい、大丈夫か!?」
「大丈夫ですぞぉ。ただ、ちょっと五徹が効いたので軽く寝るとしますぞぉ」
「そ、そっか」
俺におっぱいを揉まれていることにも気付かないほど疲れが溜まっていたのだろう。
俺は工房の端にあるイェローナの仮眠用ベッドに彼女を運ぶことにした。
「ふぅ、あとは毛布をかけて――」
「んぅ、もう食べられないですぞぉ」
「え、ちょ!?」
「うへへ……」
ベッドまで彼女を運ぶと、イェローナは俺の腕を掴み、そのまま抱き寄せてきた。
イェローナと抱き合った状態である。
「すぅー、ふぅー。お、落ち着こう、まだ慌てる時間時じゃない」
イェローナは力が強いようで、身動きは取れそうにない。
いやまあ、動こうと思えばできそうだが、すっかり眠りに落ちてしまったイェローナを起こしてしまうことは必須だ。
断じてこのままイェローナのおっぱいに包まれていたいわけではない。
ないったらない。
「……やばいな」
以前、アルカリオンやローズマリーとの結婚式の後で乱入してきた一団に混ざっていたため、手を出してはいる。
しかし、こうして二人きりで誰もいない状況というのは今回が初めてだった。
とても悪戯したい衝動に駆られる。
「……はっ!! お、俺は今、何を!?」
イェローナの大きなおっぱいやお尻に伸ばしかけた手を俺は慌てて止めた。
あ、危ない。
確かに俺はイェローナの身体を味わったが、眠っている彼女に悪戯をしていいわけがない。
……異大陸に飛ばされた時、アイルインにはやったが。
でもあれはアイルインが酔っぱらいで人を空から突き飛ばすような輩だからできたこと。
イェローナは常識人だ。
ちょっと、いや、かなりおっぱいが大きくて魔導具が大好きなだけのメカクレ美女である。
やっぱりエッチな悪戯はダメだ。
俺に許されているのは、不可抗力という言い訳ができるこの状況をこの状況のまま静かに楽しむことのみ。
つまり、このままイェローナのおっぱい布団で眠ってしまうことのみ!!
「よし、おやすみ!!」
そう思って俺は目を閉じた。
……でも結局、数時間が経っても全く眠れそうになかった。
なのでもういっそイェローナの身体にお触りしてしまおうと思う。
いや、これはあくまでもマッサージだ。
疲れが溜まっているイェローナのためにやった、触り方が少しいやらしいだけのただのマッサージである!!
「ふぁーあ、よく寝ましたなあ。……ん!?」
「おはようございます」
「お、おはようですぞ。あー、もしかして某がレイシェル殿を抱き枕代わりにしてしまった感じですかな?」
「そうだよ」
「……こっそり某の顔を見たりしましたかな?」
「それはやってないよ」
真っ先に気にすることが素顔を見られたかどうかなのか。
俺としては助かるが、それでいいのだろうか。
まあ、色々あったものの、無事にラ◯ュタ計画のために必要な魔導具が完成したので良かった。
その数日後、ラピ◯タ計画が実行に移されるのであった。
◆
「おい。今度は何をするつもりだ?」
すっかり少女の身体になってメイド服を着こなすようになったヘクトンは、フードを深く被った女に声をかける。
対する女の方は口元をニヤニヤと歪ませながらヘクトンに問い返す。
「んー? 何でそんなこと聞くの?」
「お前が何もしない方が怪しいからだ」
「酷いなあ。まるで私が常に何かを企んでいる悪人みたいじゃないか」
「世界中に武器をばら蒔いて儲けている奴が善人なわけがないだろ」
「正論はやめたまえ、ヘクトンちゃん」
どこか人を食ったような態度が気に入らず、ヘクトンは「ふん」と鼻を鳴らす。
その時だった。
誰かが二人のいる部屋にノックもしないで慌てた様子で入ってきたのだ。
「I様ぁ!! 大変ですよぉ!!」
「ん、どったの? Cちゃんが慌てるなんて珍しいね」
ぐるぐる眼鏡をかけた白衣の少女だった。
整えたら美しく輝くであろうピンクブロンドの髪はボサボサで跳ねている。
彼女の名前はC。当然、本名ではない。
「大変大変、大変なんですよぉ!!」
「またどこかの国がアガードラムーンに戦争でも仕掛けたのかな。どうしたの?」
「そ、それが!! とにかくこの報告書を!!」
「んー? 何々……」
Cが差し出したのは一枚の報告書。
それを見た女は次第に顔色が悪くなり、眉間を指で押さえる。
「えぇー、まじかぁ。何なのそのオーバーテクノロジー」
「何かあったのか?」
「なんかね、アガードラムーンが空に浮いてどこか行っちゃったって」
「は?」
あまりにも荒唐無稽な内容にヘクトンも顔をしかめて固まっている。
「流石はアガードラムーン、世界一の魔導技術を有するだけはあるねぇ。ここまでとは思わなかったけどさ」
「ど、どうするんですかぁ!? このままじゃ計画に支障が出ちゃいません!?」
「んー。まあ、別に計画には問題ないかな。ただ向こうの情報を得られなくなったのは厳しい。各地に派遣してる諜報員に常に目を光らせておくように言っといて」
「うぅ、わ、分かりましたぁ。ぐぬぬぬ、それにしても流石はイェローナ。我が終生のライバル、まさか国を浮かせるとは」
ぶつぶつ言いながらも部屋を出ていくCと、それを見守る女。
ヘクトンは不機嫌そうに言う。
「おい、計画ってなんだ?」
「んん? んー、そうだねぇ。まだ君には内緒かな。でもまあ、強いて言うなら世界を救うための計画さ」
「……ふん。胡散臭いな」
女はフードを被ったまま、ヘクトンの辛辣な言葉をニヤニヤと笑いながら流すのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「ぐるぐるメガネを外したら美少女ってパターンは王道」
レ「分かる」
「イェローナのおっぱいのトコ詳しく」「ヘクトンちゃん……」「ぐるぐるメガネ美少女はたしかに王道」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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