チュンガハ・フミンミン
呪わしい皺の色
妊婦の死体通り
妊婦の新鮮な死体の傍で男が電話を掛けていた。呼び出し音が止み、聞き慣れた声が「もしもし」と言うのを聞くと、男はさっそく用件を切り出した。
「十円だけ貸してください」
返事はなかった。
男は電話ボックスから出ると、駄目元で妊婦の死体にも同じことを頼んだ。返事はなかった。男は去った。
さっきの男とすれ違うようにチュンガハ・フミンミンが杖を突きながらやって来た。コツコツと楽しい音を鳴らしていると、突然杖の先が柔らかなものに触れた。不思議に思ってつついてみると、猫の呻き声にも似た声が上がる。動物に優しいチュンガハ・フミンミンはボソボソと謝り、来た道を引き返した。
この場に駆け付けるべき唯一の存在たるマタニティフォト収集家・大山少年は自分の頭の悪さに呆れながら頭皮を熱心に擦っていた。
「計算ドリルがフケだらけ~」と歌う風を追いかけて、夥しい数の全裸の赤子達がハイハイしながらやって来た。妊婦の死体に気付き、順番に見学していったが、便意を催した赤子が一人泣きながら糞をすると、他も釣られて糞をした。夥しい糞を残して彼らは去った。
ジ、ウ、エン。……ジウ、エン。
風が止んだ。公衆電話。夥しい糞。誰もいない妊婦の死体通りのどこかで猫に似た声が上がる。
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