第十三話 思わぬ掘り出し物
…なんてことをクヨクヨ悩んでいるうちに、広場に到着した。
シルフェの街の真ん中部分を、くりっと円形にくり抜いたように形作られた中央広場。
そこに大勢の人々が集まって、角材をぎこぎこ切ったり、トンテンカンカンと釘を打ったりして何かを組み立てている。
休憩中だろうか、机を囲んでジョッキを呷っているオジサンたちの姿もちらほら見えた。
彼ら相手に商売をするためだろう、広場の周辺には大小の屋台が立ち並んでいて、食べ物や飲み物を売っているようだ。
色々な美味しそうなものの香りが混ざった、お祭り特有の雑多な匂いが漂ってきている。
「おおう、ニアちゃん。来てくれたんか」
広場に足を踏み入れてすぐに、お祭り準備の統括をしているオジサンから声がかかった。
髪の毛がちょっぴり薄いそのオジサンの顔は、何やら真っ赤だ。結構お酒の匂いも強い気がする。
「中々来んから心配したぞ!」
「すみません、急な仕事が入ってしまって…」
「がっはっは!気にせんでいい、気にせんで!」
謝罪するハルニアの肩を、バンバンと親しげに叩く酔っ払いオジサン。
ちょっと苦手なその雰囲気とお酒の匂いに、私は思わず「うっ…」と身を引いてしまうけれど、ハルニアはニコニコと朗らかな営業スマイルを浮かべたままだ。
内心ではハルニアもいい気分ではないはずなのに…こういうところ、本当にすごいなと私は思う。
「お、今日はちっこい嬢ちゃんも一緒か」
と、そこで、オジサンの目がこちらに向いた。
「相駆らわず薄っぺらい身体しとるなぁ。ちゃんと食べてるんか?」
……ち、ちっこい?薄っぺらい…!?
密かに気にしていたことをずけずけと口に出されて、私はちょっとムッとする。
それでもできるだけ表面には出さずに、頑張って笑顔を作った。
「あ、はい。食べてます…一応」
「って、嬢ちゃん。なんか変わった魔物を連れとるなぁ。
「えと、そんな感じです」
「おお、おお!そうかそうか、嬢ちゃん、そんな才能があったんか」
適当に答えを返したら、頭をガシガシ上機嫌に撫でられた。
うぅ…だから、あんまり知らない男の人にそうやって無遠慮に触られるのは苦手なんだって。
それになんていうか、撫で方へたくそだし、お酒臭い…。
笑顔がちょっぴり、引きつってしまった。
☆
その後はオジサンの輪に軽く顔を出して、しばし漫談するだけで私たちは解放された。
今ある作業は力仕事ばっかりで、私やハルニアみたいな女の子や、怪我のせいで満足に動けないアルではあまり役には立てなかったらしい。
となれば次は、広場の周りに出ている屋台で朝食探しだ。
どんなものが良いか、ハルニアと話しながら三人で屋台をまわっていると、
「ちょっとちょっと、そこの珍しい魔物を連れたお嬢ちゃん!」
「?、私ですか?」
「そう、そこのキミだ!」
唐突に声をかけられて、私はふと足を止めた。
声の主はと顔を向ければ、すぐ近くの屋台のカウンター越しに1人の若い男性が自信に満ちた笑みを浮かべていて、
「少し、ウチの商品を見ていかないかい? 面白い品がたくさんあるよ」
「は、はぁ」
私は曖昧に笑って返すと、目の前のカウンターに並ぶ品々を見廻した。
ここはどうやら、遺跡から掘り出された珍しいものを扱うお店らしい。何に使うのかよく分からない妙ちくりんな物体が、たくさん置いてある。
……確かに面白そうだけど、私たちが今探してるのは朝ごはんなんだよね。
「今日のイチオシはこれだ! ”風がなくてもひとりでに回る、古代の風車”!」
その場を離れたそうにしている私の様子に気づいていないのか、それとも気づいていてあえて無視しているのか。
屋台のお兄さんは勝手に商品を紹介し始めた。
その手には、手のひらサイズの棒の先に風車のような羽が三枚付いた、謎のアイテムが握られている。
「このボタンを押せば…そらっ!」
「わっ」
お兄さんが棒の一部、凸部分をぐっと押し込むと、風車の羽がヴィィィンと音を立てて回り始めた。
確かに風もないのに自分から回っている。不思議だ。
…あと、なんかちょっと涼しい。
「スゴイだろう?陽の当たるところなら、魔力消費無しで使える優れモノさ。
「えと、そうですね…」
何やら楽しそうに語っているところ申し訳ないのだけれど、今の私たちは別に古代の遺産を買い求めに来たわけじゃない。
救いを求めて後ろの二人を見やると、アルは「時間を無駄にするな」と言わんばかりのむっすり顔で。
ハルニアは”話を切り上げたくても切り上げられない”私を見て、苦笑していた。
「しかも、ここまで状態のいいシロモノには中々お目にかかれない。それがなんと、今ならたったの―…」
「悪いんだけれど、あたしたちはここに遺物を買いに来てるわけじゃないの」
そこで、ハルニアの助け船が入った。
「ごめんなさいね」
お兄さんが大仰な身振り手振りを交えて始めた話をバッサリ遮って、ハルニアは相手に向けくすりと微笑んだ。
あどけなさと艶っぽさが同居した、魅力たっぷりの笑みだった。
…今の私には絶対に真似できない、大人の笑顔だ。
その笑顔に見惚れたか、お兄さんの口上がふっと途切れる。
今のうちにと、私たちは屋台に背を向けて足早に立ち去ろうとした。
「あ、ちょっと!他にも、”雷の力で高速回転する独楽”とか色々…」
背後であれやこれやと言っているようだが、今度こそ無視だ。
その場からそそくさと退散しようとする私だったが、
「あれ?」
あるものを見つけて、またも足を止めてしまう。
遺物屋さんの屋台のカウンターの上、その端っこの方に他の遺物の影に隠れるようにして置かれた物体が二つ。
それは、煤けた白い装甲を持つ丸みを帯びた三角形で、大人の前腕ほどの大きさがあって…。
私にとってはとても、とっても見覚えのあるものだった。
「これ、
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