第2話  婆、策を練る!

「よく来てくれたね、毒島さん!」

「毒島って苗字、気に入ってないから妙って呼んでや」

「妙さん、僕が君を呼び出した、多田野太郎だよ」

「多田野君……」


 妙が現在作成中のアタックリストには無い名前だ。妙は、多田野君に対する興味が半減した。どうせなら、もっとイケメンが良かった。成績も上位ではないはずだ。妙は、帰ろうとした。


「待ってよ、妙さん」

「悪いけど、私、あんたに興味が無いねん」

「ちょっと待ってよ、じゃあ、誰か好きな人がいるの?」

「あんた、成績は?」

「上の下くらいかな」

「親は? 親は何をやってんの?」

「親は医者だよ」

「あんた、それを早く言わなアカンやんか」

「え、そんなに大事?」

「親が金持ちっていうのは魅力の1つやで」

「そうなの……かな?」

「あんた、なかなか見所あるやないか、帰りにコーヒーでも飲んで帰ろうや」

「うん、カフェに行こうよ!」



「で、ゲームばっかりやってたんだけど、そんな自分を変えようと思ってるんだ」

「ふーん」

「今回、関東から関西に引っ越してきたのはいい機会だと思ったんだ」

「ふーん」

「それで、告白というのをしてみようと、勇気を出したんだ」

「ふーん」

「いやぁ、勇気を出して良かったよ、早速、妙さんと一緒にコーヒーを飲めるんだから。って、妙さん、僕の話を聞いてないよね?」

「あんたの話、おもんないねん」

「え! ショック……」

「もっと、私が喜ぶ話をせなアカンで」

「ごめん……じゃあ、どんな話題がいいの?」

「そやなぁ、あんたの親の年収はなんぼや?」

「え! そんなの知らないよ、聞いたこと無いし」

「あんた、使えん奴やなぁ。そういう所が大事やのに」

「でも、そこそこあると思うよ。開業医だし。父が医者で、母が看護師なんだ」

「そういう話が聞きたいねん。ほな、あんたも将来は金持ちになるんやな?」

「僕はどうだろう? 親には後を継げって言われてるけど、まだ勉強に力を入れてないし。まだ医者になるか決めてないんだ」

「医者になりなさい! 医者になったら付き合ってあげるわ」

「妙さんって、やたら上から目線だね」

「あんたの方から“好きや”って言うてきたんやろ? 私の方が立場は上やんか」

「でも、付き合うならフィフティー・フィフティーだろ?」

「あんた、この私と対等な立場になるつもりなんか? 私みたいな美少女を相手に」

「妙さん、そんなに美少女じゃないよ」

「ほな、なんで私に惚れたんや?」

「ニコニコしてる妙さんが好きなんだ。妙さんがニコニコしていると、僕もニコニコ出来るんだ。妙さんの笑顔が素敵だから」

「多田野君」

「何?」

「そうやって、私を褒め称えなさい。私はそういう話題が好きやねん」

「でも、他に妙さんの良いところってある?」

「無いんかい! 私の良い所、もっと探さなアカンで」

「わかった、探すよ」

「でもな、多田野君。多田野君には申し訳無いけど、私には他にアタックしたい男子がおるねん」

「え! そうなの?」

「まあまあ、最後まで聞いてや。私も、もしかしたらフラれることもあるかもしれへん。そういう時って、1人確保しときたいやんか」

「え! それって……」

「多田野君、あんたは私のキープや!」



「え?」







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