悪役令嬢婚約破棄

みんな悪役！

　リータイオン王国の王子であるノストルは思った。

　――顔がキツくて細身で胸も無い婚約者のモーデンより、庶民の出で純真無垢なのに胸が大きくてエロいアールカと結婚したい！

「モーデン！ お前との婚約は破棄する！」

　貴族令嬢のモーデンは思った。

　――ノストル王子の顔も悪くないけど、3つ隣の国の陸軍大尉が顔も体も良くて狙ってて、アタックしに行きたかったのよね！ 小汚い庶民のアールカをいじめるのもそろそろ飽きてきてたし、丁度いいわ！

「ええ結構よ！ 言われずとも！」

　元庶民で今は下級貴族令嬢なアールカは思った。

　――あの陰湿でウザいモーデン様を断罪してくれてラッキー！ 正直そこまで実害無かったけど、ダルかったんだよね～。さらに何故かノストル王子に好かれてるっぽいし、玉の輿に乗れそうで最高！

「ノストル王子……！」

　ノストル王子のお付きのスリデは思った。

　――王様やモーデン様の家に謝罪や交渉しに行くの面倒くさいですね……。この王子は本当に昔から自分勝手で……。モーデン様も売り言葉に買い言葉は止めたほうがよろしいのでは？ まあ、こんなに面倒な仕事だから高い給金が貰えるのですから、それなりに頑張りますけど。

「王子、こちらへ」

　モーデン嬢のお付きのメイドは思った。

　――親同士が決めたことを、子供だけで安易に取り消すなバカども！ ああもう、モーデン様が宮殿入りすれば私の地位も上がったのに……！ よくも私の人生計画を壊してくれたな！ この場にいる全員いつかぶっころしてやるからな！

「モーデン様……。行きましょう」

　――全員が悪役であれば、それはそれで、そこそこ上手く世の中は回る。

　そういうことである。