第3話 職業選択

私は、ベッドに横になりながら掲示板を見ていた。宝箱に関しては、やはり中に強力なアイテムが隠されているだろうことはわかった。そしてどうやら聖女という職業を発現している人は、掲示板にはいないようだ。やっぱりレア職業であることには間違いないだろう。


これは、もう職業が決まったも同然である。前世ゲーマーだった私が選ぶのは、聖女一択だ。レア職を選ぶに決まっている。何になるか決まったからには早く選択してしまおう。ステータスを開いて聖女を選ぶ。だが、本当のところは聖女になるのは宿命づけられていたと言われた方が納得はした。なぜなら、本来の私なら選ばないであろう職業の気がしたのだ。あの声が関係しているのだろうか?わからない。そんなことを考えていても、時間の無駄だと思い、職業選択をする。すると体が光に包まれたのちしばらくしてから、発光が終わる。聖女になったことだし早速ステータスを確認してみることにする。


レベル 1

職業 聖女


HP 312

MP 500

力 82

知力 82

身の守り 40

魔力 50


Skill

剣術Lv3 隠密Lv2 投擲Lv4 光魔法Lv1

New 聖魔法Lv1


どうやら、職業を選択することによってステータスがある程度底上げされるらしい。加えて職業に応じたスキルが追加されるらしいが聖女の場合は聖魔法であった。


使い方も光魔法と同じくなんとなくわかる。試しにナイフで指を少し切ってみてそこに聖魔法を使ってみる。「ハイヒール」と唱えるとすぐに傷口はふさがり、気持ち肌がきれいになったような気がした。私の感覚では、光魔法で使えるヒールの上位互換であり、状態異常も直せそうなイメージがある。魔法は抱いているイメージ通りに使えるので、今回も感覚が正しいのだろう。もちろんできないことも感覚でわかってはいるので強力な回復魔法を得たからと言って油断することはないようにしなければならないと思った。


そして、斥候や忍者、そして暗殺者などの職業の中には鑑定スキルもちもいるかもしれない。鑑定されては私が聖女であることがバレてしまうし、何より男で聖女っていうのは絶対バレたくない。隠ぺいスキルなどがあれば一番良いのだが、そんなスキルは身に覚えがない。今できることといえば鑑定を持つ可能性があるダンジョン攻略者と会わないようにすることだろう。見つかりさえしなければ鑑定なんてされることがないのだから隠密のレベル上げに努めなくては、と決意する私だった。


さて、ダンジョンの出現から36時間経過したのち、日本の政府にしてはかなり早くダンジョンについてどう扱うか決めたらしい。満18歳以上の国民は、自由にダンジョンに入ることが許可されるらしい。これは、ダンジョンからモンスターが溢れ出てくるかもしれないこと、レベルを上げて転職している者が、数多いることが理由なのかもしれないが実際ところはわからない。


ちなみにテレビに出てきたよくわからない専門家によると、ダンジョンでドロップする石はかなりのエネルギーを保有しているらしく資源不足の日本にとっては神からの贈り物とも思えるものであるらしいので、ダンジョン=危険なものというイメージを植え付けたくないそうだ。そして警察や自衛隊なんかでは数が足りず対応ができていないのも理由の一つだろう。いろいろ考えていると頭がショートしそうになったので、私は考えるのを放棄した。


私は今14歳だからダンジョンに合法的に入ることは許されない。しかし、見つかりさえしなければいいのだ。幸い隠密スキルもあることだし、いまだ見つかっていないダンジョンや人が少ないダンジョンを攻略できるのは今だけだろう。なのでダンジョン巡りに行くことにした。ちなみに学校はしばらくの間休校であり、再開は未定だ。


朝ご飯を食べ、コンビニでお昼ご飯のサンドウィッチを買いダンジョンを探すことにした。すると、神社の横にダンジョンの入り口らしきもやもやがあった。昨日は、ダンジョンに潜った興奮で入口の観察などする暇もなかったが今はあるので、入り口の構造を確認しつつダンジョンの中に入ることにした。


中に入るとそこはお城の中だった。突如剣を構えた騎士が襲い掛かってくる。今回は、昨日ダンジョンで手に入れた片手剣を片手に戦うことにしてみた。しばらく戦っているうちにわかったことがある。それはこの騎士たちに中の人が存在しないことそして、視野があまり広くなく、耳もあまりよくないということだ。視野が狭いのを利用して小石を足下に転がしてみる。


すると、漫画のようにきれいに滑って頭を打った騎士がいた。騎士が転んだ後に兜に向けて、剣を振る瞬間に力を籠めるこめて振り下ろす。どうやら騎士の首を落とすことに成功したようだ。首を落としたら動かなくなった。つまり、頭さえどうにか外してしまえば、このモンスターたちは倒せるのだろう。ここでレベルが上がった機械的音楽が流れた。レベルはまだまだ上がるだろうしここは確認はいったん置いておいて次に進むとしよう。


戦っているうちに騎士には4つのタイプがあることがわかった。1つ目は片手剣に盾を装備した一般的に騎士と言われれば想像するようなモンスターである。2つ目は大斧をもったもの、3つ目に大剣を装備したもの、そして4つ目に槌と盾を装備したものである。ちなみに隠密のレベルを上げるためにも今は、スキルで後ろまで近づき足下に小石を投げ転ばせてから首を、斬るという方法でハメている。首を斬るといったが実際に斬ることはできず剣で殴るのほうが正しいかもしれないが、私は剣といえば斬るというイメージなので、個人の感性を大切にしようと思う。


ところでいままでは気にも留めていなかったが、どうやらダンジョン内でも電波が届いているらしく、メールや電話なんかもできるらしい。なぜかは全くわからないが、両親ともダンジョン内で電波が届くなんて思わないだろうから私がダンジョンにいることは返信さえきちんとしておけば、バレることはないだろう。


さてしばらく歩き回っているうちに2階に進む道を見つけた。どうやらこのダンジョンは複雑な迷路型ではないようだということが推測できた。それはずっと直線的に進んだ先に上に上がる階段があったからだ。つまりこのお城型ダンジョンは、実際の城を模していると考えるのが正しいだろう。城であれば複雑に通路を作るのでは?と思うかもしれないが、魔法があれば強固な城でも的でしかなく、つくりなど関係ないのではないかと思う。実際複雑に作ろうとも意味がないことは、火器の発展からも容易にわかることであるから、使いやすさ、わかりやすさを優先しているのであろうことはわかった。


ちなみに横に入る道は多くあったが、中央の道には豪華な装飾品など飾ってあったり、敵である騎士の数があまりにも多いことからこっちが正解の道だろうとあたりをつけて進んできた。実際に次につながる道があるのだから私の感覚は正しいのだろう。


次に2階層に上がる。するとフードを被った魔法使いらしき敵が現れるようになった。暗殺者のように気配を殺して背後をとり斬っていくこれで大体1撃で敵を葬れるので楽だと思いつつ進んでいくことにした。ちなみに騎士型のモンスターも出現したが1階層ほどは多くなく、魔法使いと連携して戦ってくることもないため簡単に進むことができている。そうやって歩いていると、ボス部屋らしき扉を見つけた。


前回ボスがわくまでに時間があり、集中を解いてしまったことから同じ轍を踏まないためにも注意しなければならないと思いつつ、休憩をはさむことにした。お昼は買ってきたが戦闘する前に食べると吐きそうだし、水を飲んで、飴玉をなめるだけにとどめておいた。ちなみに飴の味は杏子味である。私は、杏子がフルーツの中で一番好きなので杏子味と名の付くものはすべて食べてみることにしており今回は杏子の飴玉であった。最後に、聖魔法で自身を回復させる。


さて、一息ついたところでボス戦といこう!今回は、最初から全力で隠密を発動し、開幕から不意を突いていくことにする。しばらく時間がたってボスが現れた。ボスは2体いる。王冠を被った王様型ナイトと魔法使いの杖を持った女王のようだ。2体ともこちらには気づいていないようだったので、耐久性が低そうな女王から倒すことにした。余計な力を抜いて一撃で倒すイメージを持ちながら剣を薙ぐ。イメージ通りに剣が振れたことに喜びながら、どうなったか見てみると女王のほうは1撃で倒すことができたようだ。順調だと思った。


そして王様は女王が倒れるのを見て激昂した。どうやら理性を失う代わりに能力を上げるもののようだ。ほかの騎士から感じた余裕などはなくただただ怒りのままに剣を振る。当然ながらそんな攻撃は私には当たらない。それは今まで鍛えてきた経験から、次の一撃の位置が予測できているからに他ならない。単純な攻撃しかしてこないのでこれまた足下に石を転がして転ばせてみた。するときれいに転んだので、そのすきを逃さず一閃いれてみた。堅い。手がしびれる。いまだ体制を立てなおすのに時間がかかっている王様から、剣を取り上げてみた。攻撃手段を失った王様は殴りかかってくるようになった。しかし、間合いの問題からこちらが剣の間合いで一方的に攻撃を続ける。しばらくヒットアンドウェイを繰り返しつつ、ゆっくりとダメージを与えていった。なかなか倒せないのに若干苛立ちを覚えたが冷静さを失ってはいけないと思い、少しずつ削り続けた。どれくらいたっただろうか、優に30分以上は攻撃し続けていた。そしてようやく王様型ナイトを討伐することに成功した。


疲れた。宝箱が現れたので開けてみるすると中には、指輪と盾が入っていた。指輪はどうやらアイテムボックスと呼ばれるものであった。そして盾は、重たいため私が使うことはないと思った。この魔法道具と呼ぶべきアイテムも、手に取れば使い方がわかるのである。なぜかはわからないが…。本当にゲームの世界になったみたいだ。


とりあえず家に帰ることにし帰宅すると、両親がそろってお昼を食べていた。私は、今日はお昼はいらないと言っていたので準備はされていなかった。お昼用のサンドウィッチを食べつつ昨日聞きたくても聞けなかったステータスについて聞いてみた。どうやらお父さんのほうは、


名前 綾地修二

Lv 1

職業 見習い


HP 50

MP 10

力 10

知力 100

身の守り 10

魔力 5


Skill

解析Lv1


であるようだ。解析については気になるが今はいったん置いておいてよいだろう。次に母さんのステータスだ


名前 綾地さやか

Lv1

職業 見習い


HP 30

MP 100

力 5

知力 120

身の守り 8

魔力 15


Skill

光魔法Lv1


だそうだ。この結果から、やはり知力はいまだ負けているがほかのステータスは、私が圧倒している。しかし、父は解析母は光魔法と、レアっぽいスキルを持っていたことは、うらやましいと思ってしまった。私は、最初スキルなかったのにと思うとなんだか、余計に疲れてきた。ここでレベルが上がった私のステータスを見てみようと思う。


レベル 20

職業 聖女


HP 1200

MP 2500

力 180

知力 98

身の守り 90

魔力 250


Skill

剣術Lv3→Lv4 隠密Lv2→Lv4 投擲Lv4 光魔法Lv1 聖魔法Lv1→Lv2

New 聖女の祈り


レベルがだいぶ上がったのと隠密のレベルが上がったのは、嬉しい。ちなみに聖魔法のレベルが上がり欠損程度であれば、「ハイヒール」で治せるようになった。そしてお待ちかねの新スキルである聖女の祈りでは、対象者に対して加護を付与して、状態異常攻撃を1度防ぐことができるスキルのようだ。重ね掛けはすることはできないが、状態異常を防いだのちに加護をかけなおすことはできるようだ。つまり加護が消されていたらかけなおすことができるようだ。しかし、対象者の人数には限りがあり1度に6人までしか、かけることはできないようであった。


改めて考えてみると、私は聖女なのに魔法使わなすぎじゃない?と思ってしまう。魔法を使いたいとは思うのだが攻撃魔法は覚えてないし、痛いのも嫌だから攻撃もよけれるならよけている。今攻略した二つのダンジョンでは、攻撃をもらうことはほとんどなかったため、レベルが全然上がっていない。これは大きな問題だと思ってしまった。一層、姿を隠して辻ヒーラーでもしようかと考えてしまったが、それは身バレにつながりかねないためにすぐ案としてなくなった。


ゲームではアンデッドに対して回復魔法は特攻がついていることが多い。ゲームの世界の常識が現実に反映されているところがあるため、次はアンデッドダンジョンに忍び込もうと考えた。とりあえず、ダンジョンの位置だけでも探しておくことは悪くはないだろう。昼からまた外に出ると両親に告げ自転車で街を回ってみた、外から見ただけでは何のダンジョンかわからなかったため、一度は入るようにしていたが家の近くだけでも確認できただけで攻略済みの2か所を含んだ6か所のダンジョンがあることが分かった。


しかし目的のダンジョンは見つけられなかったため、アンデッドといえば墓地ということで墓地に行ってみることにした。当たり前のように墓地にもダンジョンの渦が存在していた。ぱっと見てみた感じ、魔法のレベル上げのために行きたかったアンデッドダンジョンで間違いないようだ。とりあえず、明日また来ようと心に決め今日のところは帰ることにした。決して幽霊が怖かったわけじゃない…多分。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る