絶対出会うべき人。

 高橋穂乃佳(たかはしほのか)



 不登校になることにする。

 もう辛い、せっかくこんな良い高校に入れたのに、パーにしてしまう自分が辛い。


 何日も友達が家に来てくれた。

 配布物を持ってきてくれたり、学校での出来事を話してくれたり。親友は私の気持ちをわかってくれていて、皆が私を待ってるって言ってくれた。

 毎日友達も来てくれて、私も家でのびのびと勉強。そんな生活ができるかもしれないと、少し気持ちが楽になってきたところだった。


 でも、そんな日は長くは続かない。

友達は来なくなったし、連絡だって、私からしないと何も来ない。ああ、見捨てられたんだなって思った。まぁ当たり前か。不登校の子と一緒にいても楽しくないよね。


 勉強も家のことも何も手につかない、そんな日が続いた。



 そんなとき、愛染さんは来てくれた。


「お邪魔します。高橋さん久しぶりだね。」


「あ....うん、久しぶり。ていうかなんで家知ってるの?」


「高橋さんの友だちに聞いたの。高橋さんと話したかったから。」

 愛染さんがそう話す。



「えーーー!穂乃佳にこんな友達がいたなんて。愛染さんでしょ!すごい可愛くて有名よね~!」


 お母さんが嬉しそうに話す。


 やめてよ、恥ずかしい。

「せっかく来てくれたんだし、穂乃佳の部屋で遊んだら?」


「穂乃佳さんが良ければ、そうしたいです。」


「いいわよ、いいわよ!ねぇ穂乃佳?」


「え....う、うん」

 

つい、了承してしまった。




そして、 愛染さんが私の部屋に来た。


「好きな所に座って!ていうか、愛染さんが来るとか意外だったな。」


「そう?高橋さん、何日も来てなかったから心配だったんだよ。それと、いろいろ聞きたいことがあるんじゃないかなって。」

 .......!やっぱり愛染さんは気づいてたんだ。


「....東堂くんのことだけど、私についてなにか言ってた?」

 傷つくかもしれないけど、どうしても気になった。


「言ってるのか、言ってないのかはわからない。じょう......東堂くんは退学したの。」


「え....?そうなの?」


「一年生の頃から色々しでかしてきてたからね。高橋さんの体調はどう?体調不良で休んでるって来たけど。」


「あー..........」

 どうしようかな。言おうかな。

 愛染さんは大人びてるし、私が悩みも真剣に考えてくれそうだけど.....困らせてもう来なくなったら?


また一人ぼっちだ。


 ......軽く言ってみようかな。





「皆の前で大泣きしちゃったから、学校に行ったらからかわれそうでさ。それが怖いっていうか不安っていうか、ね。」

 愛染さんを見る、私の目を真っ直ぐ見ていた。


「確かに悪ふざけで言う人がいるかも知れないね。そうしたら、今よりもっと辛い気分になっちゃうよね。」

 愛染さんは私に優しく語りかける。私はそれにコクリと頷いた。


「じゃあさ、学校じゃあ私と一緒にいる?そしたら、何かあったときも、少しは不安が軽減されるんじゃないかな。」

 愛染さんに話して正解だった。愛染さんの言葉に私の心はすっと軽くなる。


 でも私は、それでも怖かった。




「それはすごくいいと思う...けどね?やっぱり怖いな。人からなにか悪いことを言われたり、変な目で見られたらと思ったら。」

 ....言い過ぎたかもしれない。私は愛染さんを見上げる。




........





「.....それじゃあサボっちゃう?一緒に。」


「え....?」


「私も学校行きたくないもん。悪口言われるの怖いし。学校行くふりして一緒に遊ん

で見る?」


 びっくりした。優等生の愛染さんからそんな言葉が出てくるとは思わなかった。

 .....ほんとに一緒にサボってくれるのかな。

でも、私、こんな友達が欲しかったの、ずっと。


「ほんとに一緒にサボってくれるの?」

「うん。でも、行けるなーって思えたら一緒に行こうね。」


「うん.....!」

 なんて人なんだろう。こんなこと想像もしてなかったけど、一番うれしい事になった。

 



こんな人がいた。私を幸せにしてくれそうな人。

こんな近くにいた。私の絶対出会うべき人が。

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