暗いうちに
@takaryan060530
文芸部第75版のお知らせ
部長はいつも眠そうだった。
聞いてるのか聞いてないのかわからない返事はするし、メガネのフレームに隠れているが少し目を細ませていることも度々ある。
部員みんなはあまり気にも留めてないが自分と後数名は気づいているようだった。
そもそも我が文芸部は書かれた本にとやかく文句を言ったり文豪の文句に心打たれて熱心に布教活動をするような部ではない。
ただ、お茶を飲んだりゲームをしたりする所謂サボり場である。
流石に顧問としても放って置けないのか、
「頼むから期末や文化祭では小説なり詩なり書いてくれ」
と頼まれたくらいだ。
何十年と続いている文芸部ではあるようだが時の流れには勝てず、 実際小説を書いているのは数名というほどに。 外聞のために他の部員には詩や短歌を提出させている。
さて、 我が部長もサボり魔かと思われるがいつも必ず小説を用意している。
内容も素人にしては、というか素人なのか? と聞きたくなるほど綺麗な短編小説を作ってくる。 密かにこの部誌が人気なのも部長のお陰らしい。
ちなみに俺の書いた中で一番好評だったのは「夜中に食べるラーメンの魔力」 という随筆だった。
部長が部室で書いている様子は見たことがない。
時期が迫れば俺たちも本を読んでここをパクろうかと考えながら筆を走らせているのに一人だけ本を流し読んだり、 ぼーっとしたりと上の空だった。
俺も高校に入るまで文章なんか書いたことがなかったのになんとなくで入ったサボり部の罠にかかり文章を書くようになったけど部長のように書けているのか不安である。 (随筆を誉められてなんとなく後ろめたい気持ちになったのが小説を書くきっかけになったのだが)
そのうち部長を目で追いかけどこに書くネタを拾っているのか気になっていった。
それが他の部員にもバレバレであったのは後の話だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます