ロリコンJK、小学生の妹ができる

ゼロ

第1話 JKとJS

稲村春奈。ただのJKで、ただのロリコンだ。


いや、違う。


勝手にロリコンだロリコンだ言われているだけで、別にロリコンではない。


仕切り直そう。


稲村春奈。ただのJKで、ただの幼い女の子好きだ。


…全然変わってないっていうツッコミはなしで。


そんなことはどうでもいい。


何故、私は女の子好きになったのか、という話をちょこっとだけ。


私も周りと同じように、普通の高校生になるはずだったのだが、第一志望校に落ちて、第二志望の方に入学したら、女子校だったのが全ての発端だ。


まあ、私が悪いのだけども。


ともかく、女子校に通っているうちに、なんだか男子より女子のほうが興味が湧いてきてしまって。


もともと子供が好きだった私は、幼馴染からは「ロリコンモンスター」と、呼ばれるまでになってしまったのだ。


先に断っておくが、私は犯罪まがいのことはしない。単に幼い女の子が好きなだけだ。


そんな感じでも、普通の女子高生とは少し違うかもしれないけど、私的には普通に高校生活をエンジョイしていた。


そんな私の生活は、あることをきっかけに、大きく変わっていくことになる。



「浮かない顔してどうしたんだ、ロリモン」


重い足を引きずりながら、ようやく学校に着いたら、噂の幼馴染が下駄箱で声をかけてきた。


「いやちょっとね…というか、ロリモンってなに?」


「ロリコンモンスター。略してロリモン」


何だそのどっかの国民的ゲームみたいなあだ名は。


「その呼び方やめて。というか、雪季は私のこと待ってたの?」


「ん?や、普通にいま着いたとこ」


「あそう」


この子は、恵山雪季。小学校から高校生まですべて同じクラスとかいう…幼馴染の腐れ縁にしても、運が悪い。


「で、ロリモンはなんか、やなことでもあったの?」


あだ名に関しては、もういいや。多分、私がどれだけ言っても、飽きるまで続ける気だ。


「実は親が再婚するらしくて…」


雪季ならいいか。と思い、思い切って口を開けてみる。


「へー!あのお母さん再婚するんだ!ちょっと意外かも」


「うん。それで…」


続きを話そうとしたら、雪季が私の口を手で塞いできた。


「まって、当てる。…再婚相手があんまり良くないとか?」


「ううん。再婚相手は別に普通の人なんだけど…」


「けど?」


「再婚相手にお子さんがいるらしくて…」


ふむふむ、と雪季が何度か頭を縦にふる。


「つまり、そのお子さんに問題が?」


「いや、その、小学生の女の子なんだって…」


ん?と雪季が私の発言に引っかかる。


「それって別に問題じゃないんじゃ……あっ」


少し考えてから、ようやく勘づいたみたいだ。


雪季はゆっくりと私に歩み寄り、私の肩に手をポンと乗っける。


「これから毎日が楽しくなりそうだね。ロリコンモンスターっ」


何故最後だけあだ名がフルネームなのかは、聞かないでおくことにした。



「ただいまー」


無駄に長ったらしい部活を終えた私は、ヘトヘトになりながら、玄関のドアを開ける。


「お、ちょうどいいところに」


リビングに立つお母さんの奥には、再婚相手と、見知らぬ女の子が立っていた。


「この子が、今日から春奈の妹になる…」


「こ、小水渚です…」


私の胸ぐらいしかない身長の女の子が、ひょこっと人影から出てきて、私に自己紹介をする。


「これからは、この家で一緒に暮らす一員になる子だから、仲良くしてね」


これから子のこと一緒に…


「よ、よろしくお願いします…」


今まで、平常心を保つよう頑張ってきたが…そろそろ私も限界だ。


正直言ってこの子…


超かわいい!!


めちゃくちゃかわいい!!


すっごくすっごいかわいい!!


その整ったお顔!!


そのちっちゃなお手々!!


そのかわいいおむn………やめておこう。


…それでもって、小学生にしては少し低い声が、私の心にぶっ刺さる!!


まるで、下界に降りてきた天使!!


それ以上に適している表現が見つからないほどに天使!!


………。


ダメだ。せめて今のうちだけでも平常心を保て私。


とりあえず、私も自己紹介をしよう。


私は、一つ大きな深呼吸をしてから、初めてできる妹の前に立つ。


そして、目線を合わせるために、少ししゃがむ。


「はじめまして渚ちゃん。私は稲村春奈…って言っても、もう少ししたら小水かな?ともかく、これから、よろしくね!」

 

渚ちゃんは、コクリと一つ頷く。


そして私は思う。


この子本当にかわいい過ぎるな、これ。


思いっきりギューして、この子のいい匂いいっぱい嗅ぎたい。


ほっぺすりすりして、この子の触感を楽しみたい。


もう、なんか、私の妄想してきた理想の女の子がそこにいて、一歩間違えたら理性が吹っ飛んでしまいそうだ。


この子が妹になるのが本当に惜しい…。


恋人になりたかった…。


「じゃ、お母さんたちは、引っ越しの手伝いするから、あなたたちは、おやつでも食べに行ってきたら?」


そしてまた、渚ちゃんはコクリと一つ頷く。


「じゃあ…」


何処へ行こうか悩んでいたら、私の服の袖が引っ張られて、お母さんの方に引き寄せられる。


そして、お母さんは小声で「これ渡すから、渚ちゃんと仲良くなってきて」


そう言うお母さんの手には、紙幣が握られていた。


なるほどなるほど。


私は、回れ右をして渚ちゃんの方に改めて顔を動かす。


「渚ちゃんは好きな食べ物ある?」


突然の質問に少し戸惑いつつも「…パンケーキ」と、少し恥ずかしそうに呟く。


パンケーキか。それなら…



「ドンッ」と、少し重量感のある音が机を揺らす。


そして、眼の前には、思わず見上げそうになってしまいそうなほど、大きなふわふわしたものが私にのしかかるようにそびえ立つ。


その正体は、言わずもがなだがパンケーキ。それも特大の。


大きく膨れ上がったパンケーキは、一枚二枚三枚と重なり、そして、その上にはこれまた大きな、半球の形をした、バニラアイスが乗っかっている。


この特大ふわふわに隠れてしまった、渚ちゃんを、パンケーキの横から確認する。


そこにいた渚ちゃんは、まさに「パァ〜」という擬音がよく似合うほどに、目を輝かせていた。


そして、私とは違い、マウンテンパンケーキを、あたかもエベレストのように、比喩ではなく本当に見上げる。


「結構大きいけど…食べられる?」


聞いたところで、食べられないと言われたらどうしようと思っていたが、渚ちゃんは、ぶんぶんと首を縦に振った。


うわぁ、その笑顔かわいすぎるでしょ、と自分の中でなんども復唱してから


「じゃあ食べよっか!」


流石にこの量を渚ちゃん一人では無理だと思うので、私も食べる。


なので、まず、パンケーキタワーを四分の一に切り取り、取り皿に乗せる。


そして、その取り皿を渚ちゃんに渡す。


この工程を私の分も行うのだが、その間、渚ちゃんは私のことを待っていてくれた。


かわいくて、性格もいいとか、やっぱ天使じゃん。と、渚ちゃんに見惚れてしまい手が止まりそうになるが、待たせるのは悪いと思い、必死に手をギコギコと動かす。


私がようやく準備を終わると、渚ちゃんはさっきよりも少し大きな声で「いただきます」と言うので、私もつられて「いただきます」と声を出す。


渚ちゃんは、少し大きめにパンケーキを切り、「はぁーむっ」と、一口で頬張る。


「んん〜」と、ほっぺ手を当てる渚ちゃんが、どうにもかわいくて、パンケーキよりも、私は渚ちゃんを食べてしまいたいほどだ。


でも、ずっと渚ちゃんを見てるのも何だか悪いので、私もナイフとフォークを駆使し、パンケーキを頬張る。


少々甘ったるいほどのパンケーキは、何だか懐かしい気持ちを思い出させる。


「すっごく美味しいです!」


「良かったー。昔は私、ここの常連でね。よく友達と来てたんだよ」


雪季とね。と、心の中で呟く。


別に雪季と、仲が悪くなったわけではない。


ただ、お互い忙しかったり、他の友達もできたりして、小中学生のときよりは、まあ、あまりここにも来なくなっていった。


そんなことを考えていたら、不意に、出かける前のお母さんのセリフを思い出す。


そうだ。仲良くならないと。


えーっと、まずは…


「なにか好きなものとかある?」


ありきたりだが、これが正解だと思う。


「アニメを観…ます」


少し曖昧な敬語は、何だか趣がある。


「へー。一番好きなアニメ何?」


「……あんまり、アニメ好きにその質問しないほうがいいかと思います…」


なるほど。確かに一番は決められないかもしれない。


そういえば、雪季にも昔言われた気もする。


「ごめんごめん」と私が軽く謝ると、渚ちゃんは、何かを言おうとして口を止める。


そして、少し悩んでから私に質問する。


「……あなたのこと、なんと呼べばいいんでしょうか」


いい質問だ。


言われてみればどうすればいいのだろうか。


多分、この子は私のことを「姉」だとは思っていない。


だったら…


「何でもいいよ。春奈さんでも、春奈ちゃんでも、お前でも、あんたでも…ただ」


「…ただ?」


「渚ちゃんが、私のことを家族だと思ってくれたときでいいから、できれば、お姉ちゃんって呼んでほしいな」


「じゃあ…」と、渚ちゃんはゆっくりと口を開き、


「と、とりあえずは、春奈さんで…」


「おっけい!」


お姉ちゃんと呼んでくれなかったことに関しては、ちょっとショックだが、まあ最初はこんなもんなのだろう。


こう言うのは、地道が一番って言うし。


…今考えたけど。


「改めて、これからよろしくお願いします」


私が頭を軽く下げると、渚ちゃんも合わせる。


「よ、よろしくお願いします」


そして、2人とも頭を上げたあと、私が笑って見せると、渚ちゃんも、少しぎこちない笑顔を見せてくれた。


その笑顔は本当にかわいくて、愛おしくて、尊くて…


これからの生活が、また一段と楽しみになっていった。

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