詩  「こわれた あの日」

@aono-haiji

第1話 詩  「こわれた あの日」


こわれた あの日は

こわれそうだった 

きのうより

やわらかい風が そこにいたな


わたしが見ているものたちは

わたしに見られることを望んでいない


わたしの耳に届く音は

わたしに聴かれたことを憶えていない


だれかに 教えてあげられる わたしは

ここにいない


むかしから   今も



落ちていく卵

ずっと落ちていって はじけ散る

さよならの その前に

その前に


わたしの 影を 思いだしな


だから わたしは


ここに来たんだ


この世界に



生きている時間とき

ほしかったわけじゃない



生きてうしなわれる ものを

手にしてみたかった



そこに わたしが いられることを

信じてみたかった



だから


わたしのためじゃなかった


あの日


あの日は



わたしの手から


遠く とおく


離れていったよ

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