乙女ゲームの転生モブ子は、聖女の闇堕ちを阻止したい
小糸 こはく
第1話 異世界転生しました
わたしの趣味は、マンガやアニメ、それに乙女ゲーム。
だけど学校では、オタ
学校にいる同じ趣味の子たちは、すでにグループができちゃってて話しかけづらい。わたしって、ちょっと人見知りなところがあるから。
中学時代。オタ趣味で友人ともめてから、そういうのを公言するのが
「わたしとあなたは友達です」
はっきりそう言ってもらえると安心できるけど、「友達だよね? ……え? 違う?」みたいな
学校では、話が合う友達は少ない。でも、私生活はそこそこ充実してるよ?
マンガの新刊発売日や好きなアニメの放送日は、朝からテンション上がるし。
ネットで
リア充でも非リア充でも、女子高生は忙しいんだ。
「キミは自分の外見すら気にしないのに、ボクのなにが気に入らないんだい?」
これは中学1年生のとき、初めて乙女ゲームをプレイしたわたしに投げつけられたセリフ。
そのキャラはチャラ
中1女子でしたからね、オシャレに目覚めるお年頃だったのかもしれないけど。
とはいえ、自分の外見を意識する。その
「乙女ゲームが、自分をいい方向に
まぁ、それがきっかけでわたしは乙女ゲーにハマり、しっかり「オタク街道一直線」になったんだけどね。
◇
街に
行きつけにしている学校最寄駅前の書店でも、いろんな作品のクリスマス限定グッズ予約が始まっている。
欲しいけど、お金がない。うちの高校アルバイト禁止だし、そもそも両親がアルバイトを許してくれない。
わたしん
勉強には厳しいといっても、わたし、パパもママも好きだよ? ちゃんとかわいがってくれるし、生活で苦労したこともない。
ご飯はちゃんと食べれてる。文房具や参考書だって自由に買える。
それはね、ありがたいって思う。お金で苦労しているクラスメイトだっているから。
だから両親になんの不満もないし、むしろいい親だって思ってる。ただ、実力以上の期待をされてるっぽいのは、ちょっとプレッシャーだけど。
行きつけの書店のマンガコーナーには、
「あった」
今日発売の新刊コミックが平積みにされていて、わたしはお目当ての作品の前で立ち止まった。
この作品、アニメ版の主人公が推しの声優さんなの。わたしは声優さん目当てで、アニメから作品に入ったニワカだけど。
「どれにしよっかなー♡」
今回の新刊には、初回限定でシールが付いてくる。シールは全部で7種類あるけど、さすがに7冊は買えない。
少し迷ったけど、
(早く読みたいけど、まずは
会計を済ませて書店を出た直後。
それは起きた。
最初は熱。それから、赤。黒。白。
熱さとはっきりとした色の渦にのみこまれ、わたしはその〈世界〉での命を終えた。
それからは、よくあるテンプレ展開。
どうやらわたしは、『女神が魔法を
女神って、なんだそれ? あまりに現実味がない。
だけど、女神のやらかしに巻きこまれた死者は、わたしを含めて万人単位。死ななかったけどケガをした人は、その倍以上いたんだって。
「ごめん、ちょいミスった」
から始まる、やらかし女神の言い訳と開き直り。めっちゃ美人さんだけど、全身からポンコツ感がにじみ出ている。
ここから女神とのやりとりが始まったんだけど、ほぼほぼ無駄な労力だったから
「あれもダメ、これもダメ、じゃあどうしろっていうのよっ!」
って感じだったし。
話し合いというか確認作業の
「じゃあ、異世界転生にします……」
だった。
というか女神の
比較的マシなので、
「だから元通りはムリだって。だったらさ、
そんなのだったし。
魔竜ってトカゲだよね。さすがにトカゲは嫌だ。それに勇者倒してどうするの、完全に
でもまぁ……異世界転生は最近のトレンド(オタ
(パパとママに、ちゃんとお別れいいたかったな……)
もちろん買った本も読みたかったし、明日放送の深夜アニメも見たかったけど。
ちなみに、女神のやらかしに巻きこまれて死んじゃった人たちは、わたし同様に異世界転生したり、中には魔竜になった人もいたらしい。
だけど一番多かったのは、「天国に送った人」だったって。
それはそっか。
ろくな選択肢なかったもんな。
◇
そんな
この〈世界〉は剣と魔法のファンタジー
でもね、わたしは気がついたの。
この〈世界〉が、わたしが前世でどハマリした乙女ゲーム、
『
……通称“ぐれたば”の世界設定に似てるってっ!
わたしが最初にそう感じたのは、まだ幼いころだった。
まずは国名。
そして、自分の名前。
わたしが生まれたのはファングル王国。それは、“ぐれたば”の舞台になっている国と同じ。
そしてこの〈世界〉での名前は、マルタ・ロマリア。身分は男爵令嬢。
“ぐれたば”には、男爵令嬢のマルタ・ロマリアというモブキャラが登場する。
モブだけあって出番は少ない。〈ゲーム〉の攻略キャラのひとり「スノウ・レイルウッド」に告白してフラれるだけの、
だけど、ファングル王国在住の、マルタ・ロマリア男爵令嬢……?
それって、わたしなんですけど!?
「ここは、乙女ゲームの世界かもしれない……」
最初は「あれ?」「もしかして?」くらいだったけど、成長するにつれわたしはこの〈世界〉を学んでいき、「もしかして?」は「ぜったいそうだっ!」へと変わっていった。
だからわたしは、前世で夢中になって遊んだ「
「これって、未来がわかるってことじゃない?」
わたしは「未来」がわかる。
ここが本当に“ぐれたば”の世界だったらだけど、この〈世界〉で15歳まで成長したわたしには「間違いない」としか思えなくなっていた。
「もしかしてこれ(前世の記憶や異世界転生)は、全部わたしの
そう思わなくもなかったけど、国名や地名、そして歴史。
それら全部が〈ゲーム〉の世界と同じだった。同じとしか思えないほどに
こんな偶然ってある? ないよね!?
ここは『紅蓮の聖女と花束の騎士』の〈世界〉だ。
わたしは“ぐれたば”の〈世界〉に転生したんだっ!
“ぐれたば”の主人公は、その名をセシリア・ガーノンという。
成長して聖女になり、五人の騎士たちと共に魔王と戦う運命にあるけれど、見た目も性格もかわいらしい女の子なの。
ちなみにセシリアはディフォルト名で、〈ゲーム〉では変更可能だったけど、名前を変えちゃうと声優さんのセリフが不自然になっちゃうから、わたしは変えなかった。
未来の聖女セシリア。そして彼女と同級生になるマルタが、“ぐれたば”の
そして今、現在。この〈世界〉は大陸歴800年を迎えたばかり。
ということはわたしは、マルタ・ロマリアはあと数ヶ月で、貴族や王族、そして国が認めた優秀な人材だけが通える
実際、入学する方向で話が進んでいるし。
もうすぐ始まるんだ、“ぐれたば”のストーリー展開が。
わたしの異世界ライフは、きっとここから始まるんだっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます