第8話 アートモデル

 



 美咲は幼少期の頃から優秀な子供であったが、幼少期の美咲は決して美少女ではなかった。


 それはズバリ!ガリガリで超小柄で貧相な子供だったからだ。そして幼少期のあだ名はサル。そんな美咲だったが、お転婆で土佐の海や野山を駆けずり回るガキ大将。


 いくら学業が優秀でも特別可愛いわけでもない普通の子供だったので、妬まれることもなく学校生活を謳歌していた。また幼少期から先頭に立って行動するヤンチャ娘だったので、それが延々と続いて誰も刃向かう者などいなかった。


 そんなサルのような女の子だったが、中学生から身長がグングン伸びて父親譲りの高身長の超美人に変貌を遂げていた。そして高身長に加えてガリガリだったので運動神経が抜群で走るのがとっても早い女の子だった。


 何故美咲がガキ大将になれたのかというと、あんな出来損ないの父だったが、あの時代はホスト同士の喧嘩が絶えなかった、そこで否応なしに腕力が鍛えられていった。腕力を持て余していた父は、娘に遊びと称して幼少期からキックボクシングを見様見真似で教え込んだ。こんな事もあり美咲は鉄拳と子供たちから恐れられるようになった。


 高校卒業と同時に東京に出た美咲は、お金でそれはそれは苦労した。やはり先立つものそれはズバリお金!それでも当面は何とか生活出来た。それではそのお金をどうやって調達できたのだろうか?

 

 実は……美咲は土佐の海を徒党を組んで子供たちと遊びまわっていた人脈があった。その中には網元の娘や医者の息子などのお金持ちの子女も多くいた。だから美咲はボスなので、お金に困ると子供たちからお金を調達していた。


 それでも子供達もよく金を出したものだが?


 美咲は親があんな半端者なので、頭の良い美咲は小さい頃からお金を捻出する術を心得ていた。


 子供達を手懐ける術。それはガキ大将だった美咲は「虐められた」と聞けば乗り込み虐めから守っている頼もしい存在でもあった。だから、小中学校時代は美咲は恐れられる存在で刃向かう者は誰もいなかった。こうしてその人脈は延々と続いていた。


「よくも可愛い私の子分を虐めてくれよったなぁ。舐めたらいかんぜよ!オイ!皆早うやらんかい!」

 小っちゃい子供等を連れて殴り込み。

 

 ボカン//✕/ ドスン/✕// グシャン///✕ 


「美咲ちゃん止めとうせ!もう悪い事せんけに!」


「そうか?分かったけに……だが……今度わてに逆らったら只では……只ではおかんぜよ!」

 

 このような調子で子供たちの中では凄い勢力を持った美咲だったので「鬼龍院姐さん」と恐れられていた。


 それは高知を舞台にした映画「鬼龍院花子の生涯」は地元ではあの頃は有名だった。例え10年前の映画といえども、大人も子供も全員知っている土佐自慢の映画だったので、映画の題名を取って「鬼龍院姐さん」と呼ばれ恐れられていた。


「分かっとうな?これからも助けたるで、ま~るい銭早う持ってきとうせ」


「分かっとうが「鬼龍院姐さん」の為なら親から貰って来るぜよ」


「あっ!わてが金持って来い言うたことは絶対に言うたらあかんぜよ。シ―――ッ!」


「分かっとるがな」

 ★☆

 

 美咲は医者を目指して東京に出て来た。


 そして、最初から想定して安いボロアパートに住み出したが、勉強もしなくてはならない。それでも……最初は金持ちの子供たちから、くすねたお金で持ちこたえていたが、いよいよお金が底を付いた。


 そこでコンビニのアルバイトをしながら何とか生きながらえる事が出来た。それでも生活はカツカツだ。

 そんな時、東京に出て来て親しくなった同郷の友達早苗から電話が入った。


「美咲暇な日ある?」


「嗚呼……今度の木曜日空いているけど……」


「じゃあいつもの待ち合わせ場所、東京駅の時計台の前で11時に会いましょう」


 こうして木曜日がやって来た。 


 美咲は医学部は1年目は合格できず。浪人を余儀なくされたが、同じ医学部を目指す同じ高校の同級生と同じ医学部を受験したことで親しくなった。


 その女の子は親が開業医なので親からの仕送り額も相当なものなので、アルバイトはしていない。それでも受験に際しての準備段階として受験に出そうなポイント合わせなどの為に、会う機会も多々あった。そんな時にもう1人の友達を連れて来た。


「美咲今日はお友達連れて来たわ」


「私は美大に通う乙葉と申します」


「嗚呼……私は美咲です。早苗とは高校が同じです」


「もうお昼だから、3人でどこかでランチしない?」


「本当ね。どこでランチする?」


「今日は私のおごりという事で、美咲には勉強しょっちゅう教わっているから」


「本当にヤッホー」


「早苗ありがとう。ランチねお洒落なところも良いけど……私はラーメンが良いな」


「じゃぁラーメンにしましょう」

 こうして3人は有名人気ラーメン店に向かった。すごい長蛇の列が出来ていたが暫く待っていると中に通されラーメン店に入った。


「美咲は優秀だから勉強のポイント教えて貰っているのよ。来年こそ絶対合格勝ち取らないとね」


 早苗は高校時代決して優秀な方ではなかった。高知県にも私立の医学部があるというのに……それなのに何故東京に出て来たのか?


 実は両親が離婚していて継母と折り合いが悪く、母のいる東京に逃げて来たのだった。


 こうして3人はいろんな話女子会で盛り上がっていたが、その時早苗が連れてきたお友達乙葉が、思いもよらない美味しい話を美咲に持ち掛けた。


「美咲さんスタイル抜群でお奇麗な方ね。私たち美大生はアートモデルのデッサンもあるのよ。確か……友達がアートモデルいないか探していたわ。あなたなんかピッタリだと思うんだけど……デッサンモデル2時間で6万~10万円だって言っていたわ」


「まあ、かなり高額ですね」


「その気有るのだったらそのお友達に話してみますよ」

 あの時代にアートモデルでそんなに出す所は滅多になかった。それでも美咲は背に腹は変えられなくて乙葉に紹介してもらう事になった。


 そこには………?




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