内気な少年が小説を書いてみた ~皆の輪の中に入れない彼は小説に関わり小さな幸せを見つけて道を歩いて行く~

イーグル

小学生編

第1話 内気な少年は思い切って小説の世界にダイブする

「なーなー、昨日の動画見たー?」


「見たよ、あれ面白いよね!」


 通い慣れた小学校の教室、そこで交わされる日常の会話。


 自分のやっている面白いゲームや大手の動画サイトの面白い動画、そういった話題で会話は盛り上がり皆仲良くなっていく。


 外では運動で身体を動かす子供達が動き回り競い合い協力し合ったりとこちらもまた仲が良い感じだ。



 いずれもそういった輪の中で入れずに教室の隅の席で目立たないように見つめるだけの1人の子供。


 小学5年生、雅野光輝(みやびの こうき)。


 短めの金髪で同級生の中では背の順は一番前と身長が低い、運動が出来る訳でも勉強が出来る訳でもない。


 運動は苦手で勉強も中の下ぐらいでクラスでは目立つ存在ではなかった。


 親から光輝という名前は自分が光り輝く存在であるようにと願って付けられたものだが今の立場はそれとは程遠い、光とは馴染めず影の方が彼には馴染んでしまっている。



 彼の回りには誰もいない、虐められて無視されてる訳ではない。


 ただ彼から輪の中に入れず目立つ存在じゃないのもあって孤立した感じになっているだけだ。



 それでも光輝はクラスでただ1人切り離され、疎外感のようなものを感じた。


 何か知らない間に嫌われるような事でもしてこうなったのかと悩む時もあり、何時もその答えは出せないでいる。


 光輝自身別に1人でいたいとは思っていない、人並みに友達と遊んだり好きなゲームの事で話したりしたいと望むが彼は一歩がずっと踏み出せない。


 何時しか彼の表情は笑う事も少なくなり学校の時は大半1人、親から学校はどうだと言われれば正直答えづらい。


 嘘でも楽しいとは言っておく、実際は辛くないが楽しくもない。


 まるで学校にただ授業を受けに行くだけの機械のような感じ、もうそれが自分の当たり前だと諦めかけていた。








 自宅の二階にある自室で光輝は自分のスマホで小説サイトに通っており最近の家での楽しみはこれであり、特に異世界を冒険する勇者達の話が好きでよく見ている。


「(コメント、しようかな…)」


 目立たないように光輝はその小説に対していいね等の評価を送っていたがある日もっと面白いと伝えたくて普段しないコメントを思い切ってこの日打ち込んだ。


 最深話に関するシーンの面白さ、そしてこれまで密かに見てきた事を光輝は作者へと伝える。


 初めてのコメントを打ち込む時は胸が高鳴っていて送信ボタンを押す前はそのドキドキが最大にまで達していた、初コメントの緊張がタップする手を震わせる。


 それでも光輝は意を決してコメントを送信。



 するとそう時間が経たない内に返信は来ていた。



 内容は見てくれてる事への感謝と光輝が面白いと思ったシーンへの拘り、それを語ってくれているのが見えて光輝は嬉しいと思う気持ちになる。


 人に此処まで感謝されるのは初めてであり光輝は一つのコメントがこんな喜ばれるんだと知った。


 それから光輝はコメントを送るようになると自分のこういう言葉で喜ばれるんだったらやってみたい、そう思う事が彼の中で一つ挑戦したい事が生まれる。




 小説を自分で書く事だ。



 幸い光輝の部屋には買ってもらったパソコンが置いてあり、そこから何時もの小説サイトにログインする事は可能。


 何時も自分が通っている小説の場で今度は自分が小説を書いてみる、結構思い切った挑戦だと自分でも思っていた。



「(異世界ファンタジーとか好きだけど…全部自分で考えて色々設定するの無理かも…)」


 光輝は異世界ファンタジーを好きでよく見ているが自分で設定となれば世界観や人物だけでなく食べ物といった細かい事まで考えなければならない、今更ながらこのジャンルを書いている作者達の凄さを思い知る形となる。



「(自分の暮らしてる世界だったら身近でよく見たりするから、此処は舞台は現代にしよう…外国とか行った事無いから分かんないし場所は日本っと…)」


 自室でカタカタとキーボードの音を出して動かしていけば光輝の考えた設定は最初どうしようと悩んでいたが徐々に固まっていき、休日は自室にこもってパソコンで小説の設定に時間を費やすようになる。



 内気な少年は静かに新たなる一歩を踏み出そうとしていた。

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