第14話
翌日、俺はセイレーンと共に王城内にある小さな工房を訪れていた。
中ではキレイなお姉さんが武器を作ってた。
「皇女様。こんなところまでよくお越しくださいました」
「指輪を見に来たのですが、結婚指輪でございます」
「それならここにひとつありますよ」
セイレーンが小箱を受け取った。
中を開けるとそこに入っていたのは小さなペアの指輪だ。
「はい、大地様♡」
片方を俺に渡してきた。
「お互いにつけ合いましょう」
「そうだね」
俺はニコッと笑ってセイレーンと指輪をつけ合った。
「はぅ〜。大地様からつけていただけるなんて天に昇るようですぅ〜」
両頬を抑えて嬉しそうにしていた。
「セイレーン、この指輪にはなにか追加効果があったりするのかい?」
「ありますよ」
ニコッと笑ってセイレーンはカツン、と靴裏で石畳の地面を叩く。
ビシビシビシ!
亀裂が入った。
「実はこのように、大地様の力を少しだけ使うことができるのです」
俺の顔を見てニコッと微笑んできた。
「私は守られるだけの女ではありません。多少の自衛はできます」
俺はひび割れた地面を見て思った。
(これは多少の自衛能力なのか?過剰では?)
まぁ、いいや。
「それはよかったよ。セイレーン、君のことは心配だったんだ、俺がいない時に暴漢に襲われたりしたらどうしようって。心配で心配で」
「大地様♡そんなに私のことを想ってくれていたのですね。でもご安心を。暴漢なんてミンチにしてさしあげます♡」
俺とセイレーンはお互いに見つめあっていた。
そのときだった。
「おはよう、セイレーン」
凛と澄んだような女性の声が聞こえた。
そちらを見ると女の人が立っていた。
「お姉様、おはようございます」
ぺこり。
頭を下げたセイレーン。
お姉様と呼ばれた女は俺を見てきた。
「あなたが大地様ですね?」
「あなたは?」
「第二皇女のクローディアと申します。第三皇女セイレーンの姉でございます」
ニコッと笑ってきた。
(セイレーンの姉か。順当に行けばこの子より更に巨乳なんだろうなー)
ぺったーん。
(なるほど、順当にはいかなかったわけだな。まぁ、そういうこともあるだろうな)
しかし、クローディアの方はセイレーンを更に大人にしたような雰囲気があった。
(これはこれで……なかなか好みだな)
そのとき、
「クローディア、お待たせ」
男の声が聞こえた。
タッタッタッ。
走って近寄ってきたのは白い軍服に身を包んだ男だった。
「ガリットさん、待ってはいませんよ」
(少し興味は湧いたが、男持ちか)
俺がそう思ってたらクローディアはセイレーンを見て言った。
「先を越されてしまいましたわね、セイレーン。でもあなたなかなかいい殿方と結婚しましたわね。大地様ならきっとあなたを幸せにしてくれるでしょう」
「はい。姉様。私は大地様と幸せになります」
ガリットと呼ばれた男が俺を見てきた。
「君が大地くんだね。よろしく、僕はガリット。クローディアの婚約者だよ。握手しよう」
スッ。
手を差し出してきた。
「よろしく、ガリットさん」
「さんはよしてくれよ。僕も君も人の子だよ、ははは」
優男風に笑っていた。
良い奴そうだな。
俺は漠然とそう思っていた。
そのとき、ガリットは工房の女性に声をかけていた。
「頼んでいたあれはできたかな?」
「出来ておりますよ、こちらをどうぞ」
ガリットは女性からなにかを受け取っていた。
(首輪か?)
そうとしか思えないようなサイズの輪っかを受け取っていた。
この王城には似つかわしくないものに見えるが……。
「それは?」
「【隷属の首輪】というアイテムだよ。獰猛なモンスターに付けると制御出来るようになるというコントロールアイテムさ。作ってもらったんだ」
「へぇ」
「モンスターだって生きてるからさ。獰猛だからって殺すのは可哀想だ。だからペットにしようって思って」
グッと拳を作ったガリット。
「僕の夢は世界から争いを無くすことなんだ」
こいつの夢には死ぬほど興味が無いけど。
(モンスターを制御出来るようになるアイテムか。それは少し気になるな)
「ガリットさん、その道具少し見せてくれないかな?」
「いいよ、はい」
俺に道具を渡してきた。
俺はそれを【分析】した。
そして、分析した結果を外部に【出力】。
カシャッ。
俺の手にもうひとつの【隷属の首輪】が現れた。
俺はこの一連の作業を【コピー】と呼んでいる。
「すごい!もうひとつ首輪が現れました!」
セイレーンが目をキラキラさせてた。
「これは驚いたな、君は天才か?今の一瞬でコピーを作り出すなんて、すごいな」
ガリットも驚いてた。
「大したことはありませんよ。こんなもの」
謙遜しているとクローディアが口を開いた。
「そうだ、セイレーン。あなたの花畑を案内してあげましょうよ」
「そうですね、姉様」
俺の手を握ってきたセイレーン。
「大地様。こちらへ。私はガーデニングが趣味でして、家庭菜園をしているんです!ぜひ見てください」
ニコッと笑うセイレーン。
俺はついて行くことにした。
セイレーンが持っているという庭までやってきた。
(でかいな、思ってたのと違う)
小中のころに使っていたプールくらいの面積があった。
花の種類は全然分からないが、かなりの数植えられているようだった。
「こっちへ」
俺はセイレーンに引っ張られてとある植物の前まで歩いてきた。
目の前まで来て気付いたけど
「光ってるんだね、この草」
「はい。これは、使えばどんな病気だって治ると噂の幻草と呼ばれている草です」
「へぇ、そんな薬があるんだ」
「私はこの草を増やして一般的なものにしようと頑張っているのです」
「つまり、俺にこの草を増やせるか試して欲しいってこと?」
「はい」
ニコッと笑っていたセイレーン。
俺は幻草に触れて【コピー】してみた。
ポンっ。
すぐ側に幻草がもう一本生えてきた。
「すごい!すごいです!大地様!」
だきっ!
俺に抱きついてきたセイレーン。
「ちゅっ♡」
「セイレーン、人前だよ?」
俺は少し呆れたような顔をしていたが、それでも内心はもちろん悪い気はしていない。
「大地様が凄すぎて感情を抑えきれませんでした。ごめんなさいぃ、はぅぅ」
ガリットが口を開いた。
「クローディア、僕達はお邪魔のようだね、先に行こうじゃないか」
「どうやらそのようですね。幸せにね、セイレーン」
そう言って二人は歩いていった。
俺は2人が去っていったあとに幻草、というか菜園自体に触った。
「何をしているのですか?」
「君の大事なものなら俺も守らないなと思ってさ」
【セイレーンの菜園に防衛システムEXをインストールしました】
悪意を持ってこの菜園に近づけば即座に防衛システムが起動して悪人を排除するというシステムである。
「なにをしたのですか?このお城の人達はいい人ばかりなので、なにもしなくても大丈夫だと思いますけど」
「念の為細工をさせてもらったよ。俺は君の顔が少しでも曇るのを見たくないだけだよ」
頭を撫でる。
「大地様♡ちゅきちゅきちゅきー!!」
「セイレーンはほんとにかわいいね。今日も可愛がってあげるよ、ちゅっ」
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