第3話 とどめをさしてやろう

俺は女に案内されて帝国軍の本部までやってきた。


本部はテントで簡単なものだった。


中からは声が漏れて聞こえていた。


「なんだ、これは?王国軍の戦力が10%も一瞬にして消えたぞ?!」

「なにが起きてるんだ?!」

「今のは我が軍の攻撃なのか?!」

「たが、あんな魔法見たこともないぞ!!」


女はテントの入口を開けたて口を開く。


「軍団長!報告があります!」

「なんだ?」

「王国軍から投降者が出ました。戦争を放棄したのです」


俺を紹介してくれた女。


相手は180センチくらいはありそうな大きな女だった。


(これが軍団長か)


軍団長が近付いてきた。


「その軍服。たしかに王国軍のもので間違いないな」

「あぁ、俺は王国軍の佐山 大地」


そのとき、同じ部屋の中にいた少女の声。


「その人です。私を助けてくれたのは。私殺されそうだったんです」

「なんだって?この人がキミを助けたのか?ミーナ」


声の主を見ると、そこにはさっき俺が馬車で助けた帝国兵の少女がいた。


「俺は確かにその子を助けた。でも恩義を感じるまでもない。人として当然のことをしたまでだよ」


「かっこいぃ♡」

「素敵ーー!」

「顔も心もイケメンしゅぎるよぉぉぉ」


なぜか分からないけど、テントの中の帝国兵(主に女子)が騒ぎ出した。


素敵って言われるようなことをしただろうか?俺は。


考えてみても分からないな。


俺をここまで連れてきた帝国兵の男子たちも騒ぎ始める。


「こいつすげぇんだぜ。見たこともない魔法で王国軍のやつら吹き飛ばしやがった」

「すっげぇ爆風だったよな、あれ!」

「くぅぅぅぅぅ!!俺もあんな魔法使いてぇ!」


テンション上がったのかすごい大声になっていた。


そのとき、戦況を見ていた別の兵士から声が上がった。


モブのような顔をしていた。


「軍団長。報告ですっ!王国軍の総軍が攻め込んできているようです!」

「なんだと?!」

「王国はこのまま一気に勝負を決めるつもりでしょう!」

「くっ、どうすれば……」


俺は手を挙げた。


「俺に任せてよ」

「な、何を言ってるんだ?王国軍の兵士の数は3000万人。ついさっき300万人が謎の魔法で消えたとは言え……」

「いいから、任せて」


俺は少し強めの言葉で言った。


戦況を見ていたモブが口を開いた。


「王国軍到着まで1時間ほどかと。このまま攻め込まれたら、我々3000の兵力では太刀打ちできません!いったい一人何人の王国兵を倒せばいいのですか?!」


俺はモブの顔を見た。


「俺が3000万人消し飛ばそう。それで終わりだ」


テント内が騒がしくなる。


「3000万をたった1人で消し飛ばす?!」

「そんなことができるのか?!」


軍団長は頷いた。


「くっ。大地様、あなたに頼るしかないようだ。どうか帝国をお守りください」


「軍団長、この辺りで一番背の高い場所に案内してくれ」

「背の高い場所、となると、近くにやぐらがある。そこでいいですか?」


「いいよ」


「そこの一つ星の新兵。たしか、リエルと言ったな?」


俺をここに連れてきたのはリエルという少女らしい。




「大地様の案内を頼めるか?やぐらまでお連れしろ」

「はい、おまかせを」


ビシッ。

敬礼してからリエルは俺の手を掴んだ。


「こっちにきて、大地くん」


俺は頷いて彼女についていくことにした。


やぐらにはすぐについた。

やぐらをのぼる。


遠くには豆粒みたいなサイズの人間が見える。


そいつらがどんどん近付いてきていた。


「王国軍3000万に対して私たちは最終的に3000人しかいなかった、頑張ったよね」


「なんでそんなに少なかったんだ?」


「帝国の皇族が言ったんだ。『無駄に人死させるくらいなら負けよう』って」


「いい皇族だな。でも、それなら初めから戦争を放棄して降伏しそうなものだけど」


「初めは降伏しようとしたけど王国側が提案を蹴ったの。『帝国側から全部奪ってやる』って」


ギリッ。

歯を食いしばっていた。


「野蛮人だよあいつら。お願い大地くん、帝国を助けて」


「任せろよ」


俺はそう言うと王国軍の方に手を向けた。


そして


「魔弾、魔弾、魔弾」


魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾魔弾。


何十発もの魔弾を放った。


ピカッ!!!!!!!


あちこちで魔弾が着弾すると凄まじい光を放った。


そして、爆発した。


ゴァァァァァァァァアァァァァアッ!!!!!


地面が削れながら吹き飛んでいく。


さっき見たものより一回りは大きい爆発が起きていた。


俺たちのところまで爆風は届いていた。


「くっ、なんてすごい爆風なのっ?」


その場にしゃがみこんで必死に爆風をやり過ごそうとしていた。


やがて、爆風は収まった。


「もう大丈夫だよ」


立ち上がって王国軍の方を見たリエル。


「すっごい。あんなにいた王国軍が一瞬で消えちゃった」


ヤグラの下から声が聞こえてくる。


ちなみにこのヤグラはテントのすぐそこにあるので、声が聞こえてくる。


「軍団長、報告です。王国軍約3000万が一瞬にして消えました。信じられませんが、どう見ても我々帝国軍の勝利ですっっっっ!」


隊長がテントの中から出てきた。


「ありがとう!大地様!あなたのおかげだ」


俺はヤグラから飛び下りた。


「なんとお礼を言えばいいか、このままでは我々は負けていたことだろう」


「気にしないでよ」


そうして話していたところだった。


中からさっきのモブが出てきた。


「軍団長、どうしますか?王国に攻め込みますか?奴らはかなりの手負いです。今なら王都もがら空きかと」

「いや、やめよう。まずは帝国にいる皇族にご報告を。元々皇族の方々は戦争を望んではいなかった」


「了解しました!皇族側に話を通します!」


軍団長は俺を見てきた。


「今からあなた様を帝国へご客人として案内したい。同行お願いできますか?きっと、報酬を用意してくださると思います」

「いいよ」

「では、こちらへ。足元石ころなどがある可能性があります。お気をつけを」


俺はまるで要人のような扱いを受けて案内され始めた。


帝国の入口は高い要塞で守られていた。


その前にいた2人の兵士が俺を見るなり口を開く。


「何者だ?!王国の軍服を着た怪しいやつ!離れてください!軍団長殿!」


「無礼者。黙ってお通ししろ!この方は大地様であられる。いずれお前たちも知るだろう。たったひとりで一瞬にして戦争を終戦させた英雄としてな」


「なっ、ひとりで戦争を終わらせた?」

「ありえん」


兵士たちはゴクリと固唾を飲んで、少しの間固まっていた。


しかし、


「失礼しました。お通りくださいませ。非礼をおゆるしください」


すぐに土下座して左右に分かれて俺のために道の真ん中を開けた。


なんだかVIPになったような気分である。

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