OL舞子の転生生活!
崔 梨遙(再)
第1話 舞子、転落する!
舞子は、崖の上で頭を抱えていた。何故、崖にいるのか? 舞子は自殺するつもりだったのだ。だから、名所と呼ばれるこの崖に来た。 しかし、舞子は忘れていた。舞子は極度の高所恐怖症だったのだ。
「無理、無理、こんな高いところ絶対無理」
舞子は、脚が震えていた。
そもそも、まだ20代半ばの舞子が自殺しようと思ったのか? それは舞子の特殊スキルが原因だった。舞子は生まれつきテレパシー能力を持っていた。その能力は、舞子を助けることよりも舞子を傷つけることの方が多かった。親友面してくる同級生の女子が、自分に悪意を持っていることを知った。好きな男子が自分以外の女子のことが好きだと知った。優しい男子が、内心では下心を抱いていることも知った。
そして、決定的だったのは高校2年生の時。舞子は男に襲われたことがある。運良く、人が通りかかって未遂に終わり九死に一生を得たのだが、その時、自分を襲ってきた男のどす黒い性欲を感じとってしまったのだった。それは、舞子にとってトラウマになった。それ以来、男性のどす黒い性欲を少しでも感じると、反射的に拒絶してしまうのだ。
今回こそ、身を委ねようと思って付き合っていた彼氏とホテルに入ったが、舞子はやっぱり拒絶してしまい、相手の男性から別れを告げられたのだ。もう、何人目だろう?
舞子の小学生の時の作文、将来の夢は“お嫁さん”、中学の時の将来の夢も“お嫁さん”、高校の時も“お嫁さん”、舞子の夢は素敵な男性と結婚することだった。だが、こんな状態では結婚なんて出来ない。ささやかな夢も叶わない。だったら、もう今世を終わらせて、来世に期待した方が良いのではないか? そう思い、舞子はこの崖の上にいるのだった。
そして、自分が高所恐怖症だったことを思い出し、途方に暮れているのだった。
「別の方法にしよう!」
舞子は回れ右をした。その時、風が吹いた。風は砂塵を舞子の大きな目に運んだ。目に砂が入った舞子は、2,3歩下がった。だが、3歩目、そこには地面が無かった。
舞子は崖から落ちた。“やってしまったぁ!”と思ったが、よく考えたらちょうどいい。これで来世に向けて羽ばたけるではないか。舞子はギュッと目を瞑った。死ぬときは自分の人生が走馬燈のように見ると言われているが、何1つ思い出さない。ようやく、両親のことを思い出した。
「お父さん、お母さん、親孝行できなくてごめんなさい」
だが、よく考えたら、親孝行もしていないが親不孝もしていない。だったら、まあ、これでもいいのでは? などと考えて、ふと気付いた。
「まだ着地しないの?」
落ちてから、かなりの時間が経っている気がする。舞子は思いきって目を開けた。そこは、何も無い白い空間だった。上下左右もわからない。
「私は死んだの? ここはどこ? 天国ではないようだけど」
その時、頭の中に声が響いた。
“舞子……舞子……”
「はい、なんでしょう?」
“お前は死んだのだ”
「やっぱり! まあ、いいわ。やっと死ねたのね」
“だが、困ったことに、お前の寿命は尽きていない”
「どういうことですか?」
“肉体は滅んだが、こうして魂は死んでいない”
「え! それじゃあ、まるで幽霊みたいじゃないの」
“時々、お前のようなおっちょこちょいがいるから困るんだ”
「えー! せっかく意を決して飛び降りたのに」
“嘘つけ、偶然風が吹いて、偶然目に砂が入って、偶然崖から落ちたくせに”
「う、反論できない」
“そこでだ、異世界での転生を命じる。異世界に空きがあったんだ”
「拒否権は無いんですか?」
“無い。異世界の空席しか無い。そこで新しく人生をやり直すのだ”
「わかりました、ところであなたは神様ですか?」
“好きなように呼べばいい”
「では、転生します。そこはどんな世界ですか?」
“中世のヨーロッパのようなところだ”
「素敵な世界ですね」
“今度は、間違って死なないように寿命が来るまで死なない身体にしておくからな”
「異世界で、私はどんな人生を送るんですか?」
“流れに身を任せていれば良い、今度はお前のテレパシーも役に立つだろう”
「もしかして、このままの姿で行くんですか?」
“ええ、早くいきなさい”
「あ、いってきますー!」
舞子は、いきなり白昼の大通りに放り出された。
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