白狐の安寿音ちゃん。

猫野 尻尾

第1話:ばあちゃんちにいる妖怪。

一話完結です。(=^x^=)


僕の住んでる田舎は、「稲堀山いなほりやま」の麓にあって昔から妖怪にまつわる話が多い。

とくに、ばあちゃんちは、稲堀神社の近所で僕が住んでる地区よりもっとど田舎。

バスは一日朝夕二度しか来ないど田舎、行くなら足は車かバイクしかない。

僕はいつも愛車のカブに乗って山道を上げっていく。


僕はばあちゃんちで何度か妖怪に遭遇してる。

都会じゃまず見られない妖怪。

人がたくさんいるような場所だと妖怪は肩身の狭い思いをしなきゃいけないけど

ど田舎はのんびりしてるから住みやすいんだろう。

今は、妖怪より人間のほうがよっぽど怖いから・・・。


そのばあちゃんちの古民家にひとりの女の子が住みつくようになった。

近所に民家はない・・・どこから来たのか不明、だからもしかして妖怪?

それ以外、ばあちゃんちに行くたびに僕も何度かその子を見るようになった。


ばあちゃんもひとりで住んでるから、いい話相手ができて寂しくないって

喜んでるみたいだ。

だからその子を追い出すなんてことはしない。


古民家に妖怪が住み着いてたって話は昔からあることで、別に珍しくもなく

不思議でもない。

よく聞くのが座敷童の話。


でもばあちゃんちに住み着いてるその子は座敷童とは違うみたいだ。

なんの妖怪かはまだよく分からない。

でもばあちゃんに聞くと髪が白くてやっぱり白い耳が生えてるんだそうだ。

耳って言うと動物系の妖怪?、猫又、または化け猫?猫娘?


特にばあちゃんに危害を加えるふうはなく、平和にすごしてるみたいだった。


それから一ヶ月ほどしてのことだった。

ばあちゃんは体調を崩して寝込んだ。

病気もせず元気だったんだけど、医者からは「もう寿命でしょう」って言われた。

結局、ばあちゃんはその三日後あの世に召された。


ばあちゃんの告別式が終わったあと、僕は両親とは別行動でばあちゃんが住んでた

古民家へ行ってみた。


っもう誰も住まなくなった古民家・・・あとは壊すだけか。


感慨深いものを感じながら古民家をあとにしようとした時、玄関に例の白い髪の子が立っていた。


「ああ・・・君・・・」

「もう、ばあちゃんはいないんだよ・・・来たところに帰ったほうがいいよ」


「私、妖怪だよ・・・怖くないの?」


「怖くないよ・・・むしろ妖怪は大好きだから僕」

「君、どこから来たの?」


「人には探せない奥深い森の中」

「私、仙狐になるために洞窟で勉強したり、お年寄りの狐に仙術を学んだりして

試験を受けたんだけど落っこちちゃって低級妖怪に格下げになってそれで森を

出てきたの」


「あ〜それでばあちゃんにち住み着いたのか?」


「だから帰るところなんかないし・・・」


「そうなんだ・・・あ、僕「守山 森太もりやま しんた」ばあちゃんの孫。


「しんた?」

「知ってる・・・おまえ知ってる」


(おまえ呼ばわりか?)


「帰るところないって言っても、もうばあちゃんいないよ・・?」


「ここに住み着いた以上、私もここで、この古民家と一緒に朽ちてくの」


「え〜・・・朽ちてくって?」

「この家はすぐに壊しちゃうんだよ・・・君が住むところはなくなるんだよ」


「それも、そうなんだけど、肝心の君、なんて妖怪?」


「私、白狐の安寿音しろぎつねのあずね


「しろぎつね?・・・・あずね・・・」


白狐か、たしかに・・・髪は白いし耳も白い。


「キツネの妖怪なんだ・・・・で、名前がアズネちゃんって言うんだ」

「このまま君をここに放って帰るってのは、後ろ髪ひかれるな」


「どうかな?よかったら僕の家に来ない?」

「新しく住み着く家があったらいいんだろ?」


「どう僕と一緒に来る?」


白狐の安寿音あずねちゃんは、うんってうなずいた。


僕は安寿音ちゃんをカブの後ろに乗せて山を降りて行った。


「じゃ〜山を降りるからね、バイクの後ろに乗って」


「あのさ、変なこと聞くけど、君スカートだよね」


「妖怪もパンツとか履いてるのかな?」


「一応履いてるけど・・・なに?見たいの妖怪のパンツ」


「ああ、いやいや見せなくていいから・・・履いてないと僕も君もなにかと

困るからね」


「さ〜て山を降りるかな・・・」

「あっと、ヘルメット・・・ないけどまあいいか」

「こんな山の中でおまわりさんと遭遇することなんかまずないな」

「じゃ〜行くよ・・・しっかりつかまってね」


みんなは妖怪って漫画や伝承の世界の生き物だと思ってるけど妖怪はちゃんと

いるんだよ。

ただ、めまぐるしい都会は妖怪が生きるにはいい環境じゃないことと人間とは

あまり関わりたくないんだ。


だけど、アズネちゃんをここへは置いていけないからね。

僕はこれから妖怪と一笑に暮らすんだ。

白い狐の妖怪と・・・。


ちなみに白狐は神様の使いなんだって。

縁起がいい妖怪なんだね・・・連れて帰ってからいいことあるかもね。


おしまい。



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白狐の安寿音ちゃん。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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