第3話

 ……ほっとけね!


「ガシャン、ガシャン、ガシャン」


 なんかアイツは許さねー。


 ダメだ…理性では逃げろって言ってるのに、足が勝手に進みやがる。


 アイツをブチのめせって、感情が揺さぶられる。


 アドレナリンが大量に溢れてるのか?


 熊よりも遥かにデカい狼を前にしても恐怖を感じない。


 ただ、あのデカい狼をブチのめせって感情が昂ぶる。


「……何ですか? このけったいな生き物は?」


「ケモ…ケモ耳…様…た、助けて…」


 待っていろ、ホルン! 今すぐ助けてやる!!


 でもどうする? 今のオレは進むことしかできない。


 攻撃しようにも武器になるパーツは付いていないし、攻撃力も1しかない。


 今更武器のパーツが見つかるのを待って、ポケ爺に装着してもらう時間もない。


 やる気はあってもガロン族を倒す手段がない…。


「目障りな塊ですね!」


 巨大な尻尾が目の前に「うわっ!」


 ガロン族がいた大岩が真下に見える…オレは今、宙を舞っているのか…世界がスローモーションになっている。


 HPが1しかないオレは死ぬ寸前なのか…そりゃ死ぬよな…宙を舞うくらいの攻撃を食らったんだからな。


 すぐにHPが0になってオレは死ぬのか…。




『鉄壁のスキルを発動』




「ガシャンガシャン、ドタン!」


 なんだ?地面に叩きつけられ木にぶつかり止まった?


 ステータスのHPは1のまま…まだ生きている。


 あの攻撃を受けてどうして生きていられる?


 そういえば急に表示された鉄壁のスキル…それのおかげで助かったのか?


 そもそも鉄壁のスキルってなんだ? どんな効果なんだ?


 鉄壁ってぐらいだから防御系のスキルだよな。


 『鉄壁のスキルとは、HPが1以下の状態で自動発動するスキルです。効果は全ての攻撃を無効化、無敵状態になります』


 なんだなんだ⁉ 鉄壁のスキルの文字を見つめたら文章が出てきたぞ。


 ちょっとこの効果ヤバくないか!


 攻撃を無効化で無敵状態って、オレ絶対死なないじゃ!


 ちょっとチートすぎるでしょこのスキル!


 ゲームにこんなスキルがあったらヌルゲーになってクソゲー確定だよ!


 ……つまりオレは最強ってことか⁉


 ってよく考えたらオレは防御面は最強だけど攻撃面は攻撃力1のミジンコなみだ…。


 この状態でどうやって戦う…。


 というか今のオレは横倒しになってるよね…。


 オレ、自力で起き上がれないんだけど、最強の防御を身につけても戦う事ができないよ。


 「カシャン、カシャン」


 やっぱりダメだ…足を動かしても何の手応えもない。


 まったくこの場から動けない…。


「やれやれ、まだ動くのですか、あの金属の塊は!」


「ピョン!ザザッ!」


 うわっ、急に巨大な狼の頭が現れた!


 何だ何だ!体が浮き上がるぞ!


 もしかしてコイツ、オレを咥えてんのか!


 噛む気か?食べる気か⁉


「ガギンッ!」


『鉄壁のスキルを発動』


「な、なんだ、この塊は…わたくしの攻撃が効かぬ…」


「ガギンッ!!」


『鉄壁のスキルを発動』


「どういうことだ…攻撃がまったく効かぬ…わたくしはガロン族最強の一角であるぞ。 そのわたくしの攻撃が効かぬとは認めん…認めんぞ!」


「ガキッガキッガギンッ!」


『鉄壁のスキルを発動』『鉄壁のスキルを発動』『鉄壁のスキルを発動』


「ポロポロポロポロ…」


「わ、わたくしの大切な牙が…貴様よくも…」


 鉄壁、スゲー。 あの巨大な牙を粉砕させちまった!


 どうだガロン族、ご自慢の牙がボロボロになって戦意喪失か⁉


 このまま退散しても良いんだぞ!


 …というかこのまま帰ってくれ。


 じゃないと攻撃手段がないオレはこの後どう戦えばいいのか、わかんないんだよ…。


 「……これは危険な臭いがしますね…深追いは禁物かもしれません…」


 そうだそうだ! 深追いしない方が懸命ですよ! このまま帰ってくれー!


 「ピュン、ザッ」


 ガロン族が後退して大岩上に乗った。 そのまま帰るのか⁉


「ケモ耳の皆さん、命拾いをしましたね。 わたくし愚か者ではなありません。 あのような未知な物体が何なのか、わかるまであなた方と関わる気はございません。 しかし、次会うときには覚悟しなさい」


 え⁉ それって退散するってこと?


 はぁ〜、良かった。 これで少しは平和に暮らせるな。


「ガロン族!逃げる気! 絶対に許さないんだから!!」


 おい!小娘っ!余計な事を言うな!!


 もしもこれでまたガロン族がヤル気を出したらどうすんの〜!


「これはこれは、そのような挑発をして。 わたくしを罠にはめる気ですか?」


 良かった〜。 よく分かんないけど、深く考えすぎて勘違いしてくれてる。


「わ、罠なんかかけない!そんな卑怯な事なんかしない! だけどウチはお前を許さないんだから!」


 だから何でそんな余計なことを言うのかな…。


 もうガロン族は帰る気まんまんだったんだよ!


 今更戦っても勝ち目がないんだよ…。


「勇ましいですね。 しかし、わたくしはこの場を離れさせていただきます」


「ビュシュン!」


 あっという間にガロン族の姿が見えなくなった…。 助かった…。


「ホゲゾウ大丈夫⁉」


「だ、大丈夫だ…肋骨を何本がやられたみたいだが…命に別状はねぇ」


「良かった…そうだ! ケモ神様!ケモ神様、助けてくれてありがとう」


こらっ!ホルン! 嬉しいのはわかるがそんなに揺らすな! 視界が小刻みに揺れて酔う…。


「ケモ神様怖かったよ…みんな殺されるかもって思って怖かったよ…」


「そうじゃな、ケモ神様のおかげでわしらは助かった」


「でも、ケモ神様ってすんごく頑丈なんだね。 ガロン族の牙を砕くくらいの頑丈さなんだもん」


「さすが我が村の勇者様じゃ」


 というかオレは何もしていないんだけどね。 全ては鉄壁のスキルのおかげだな。


 でも次はこう運良く事は運ばないよな…。


 そのためにも何か強力な武器が欲しいところだ。


 でもオレは待つことしかできないんだよな。


 誰か運良く良い武器を発見してくれないかな。


「そ、村長!誰か来るよ」


 おぉ⁉️まさか誰かが運良く武器を発見したのか?

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