真夜中のドーナツ

つまみ

真夜中のドーナツ

起きているのは

星と時計とわたし


真四角のダイニングテーブルに置かれた

丸い小皿 薄い紙ナプキン

その上のドーナツ


静まりかえる部屋のなか

まぶされた粉砂糖を 指につけたまま

ふんわりと噛み締める

油を吸った生地の かなしい食感

ひとりの夜の 浸したさびしさ


一口

二口 欠けては


埋まらない夜が

三口

四口と増えていく


グラスに半分注がれた

真っ白なミルクだけが

てらいのない明るさで そこにあって


流しこんでいく

飲みこんでいく

赦されたいわけでも

ないけれど


カケラの散らばる小皿

丸められた紙ナプキン



拭った指先に 儚く

甘い香りだけを残す







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真夜中のドーナツ つまみ @nagaimo-zakuzaku

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