第7話 キスするのです!

 アリサのお告げに従い、私を自宅に誘ってきたクレアちゃん。今日、本当にクレアちゃんとHできるのかな? 私の中で、期待と不安が入り混じる。


昇降口を一緒に出る、私とクレアちゃん。アリサは姿を消したまま私達のそばにいる。彼女の表情を見るに、状況次第でまたお告げを言いそう。


「そういえばクレアちゃんの家ってどの辺なの?」

大体で良いから所要時間を知りたい。


「近いですヨ。○○台に住んでまス!」


そこって、私が住んでるところと同じじゃん。なら小学・中学は一緒のはずだけど、外国人がいた記憶はない…。


「ユリはどこに住んでるノ?」


「クレアちゃんと同じ台だよ。でも今の話を聴くまで、クレアちゃんが近くに住んでる事は知らなかったな~」


「ワタシ、春休みの時にパパの仕事の関係で引っ越してきたんでス」


「なるほど、そういう事だったのか~」

納得できる理由が聴けてスッキリした。


「クレアちゃん、これからは百合と一緒に登下校するのです」


やっぱりアリサが口を挟んできた。でも良い流れだから問題ないね。


「それ良いですネ! さすが神様でス!」

声がするほうを見て答えるクレアちゃん。


「また神様からお告げがあったの?」


あくまで私は“聴こえてない”という体にある。これが意外に大変で、アリサの言う事に反応してはいけない。私も聴こえる流れにしても良いかも?


「はい! “ユリと一緒に登下校するのです”って言ってくれましタ!」


「そうなんだ。じゃあ明日から一緒に行こっか」


「うん♪」



 クレアちゃんから住所を詳しく訊いたところ、学校との距離は私の家のほうが近い事が判明した。クレアちゃんの家に行く途中に寄れるね。


「ここが私の家だよ」


「良い家ですネ♪」


「ありがとう」


「ユリ。せっかく家の前に来たんですから、カバンは置いていっても良いですヨ? ワタシ待ってますかラ!」


身軽なほうが良いのは言うまでもない。クレアちゃんがそう言ってくれるなら…。


「お言葉に甘えるね。すぐ戻ってくるから」


「はい」


私は1人で家に入った後、自室に急ぐ。そしてカバンを置いてすぐ部屋と家を出た。携帯さえあれば良いし、スカートのポケットにあるから問題ない。


「お待たせ」


「あれ? 制服のままで良いんですカ?」


「クレアちゃんをこれ以上待たせたくないから急いで戻ってきたよ」


「ありがとうユリ」


「じゃあ行こうか。案内お願いね」


「任せテ」



 私の家から5分ぐらい歩いたかな? クレアちゃんが足を止める。


「ここがワタシの家でス」


外国人が住む一軒家だから外国風の外観かと思ったけど普通だった。そのほうが落ち着くから良いけどね。


「クレアちゃんの家も良い感じだよ」


「えへへ。嬉しいでス♪」


照れてるクレアちゃんは可愛いな~。


「遠慮なく上がってネ」


「そうさせてもらうよ」


私はクレアちゃんに続き、家にお邪魔する。



 「ママただいマ~。お友達連れてきタ~」

玄関先でそう言うクレアちゃん。


どういうお母さんなんだろう? …足音がこっちに向かって来る。


「おかえりクレア。その子がお友達?」


お母さんはクレアちゃんをそのまま大人にしたような美人だ。日本の滞在歴が長いのか、クレアちゃんのようなアクセントの違いは感じられない。


「そうだヨ。ユリって言うノ」


「初めまして、渡辺百合です」


「ご丁寧にありがとう。わたしはレベッカよ」


私を子供扱いする事なく接してくれる。レベッカさんも良い人だ。


「クレア。後でお菓子を部屋に持って行くからね」


「それは良いヨ。後でワタシが取りに行くかラ」


「そう、わかったわ」


お母さんの入室を警戒してる。もしかしなくても、アリサのお告げを真に受けてるね。


「百合さん。ゆっくりしていってちょうだい」


「ありがとうございます。…お邪魔します」


クレアちゃんに続いて靴を脱いだ後、彼女に付いて行く。



 クレアちゃんと一緒に部屋に入る私。…あちこちにぬいぐるみがある部屋だね。私も小さい頃はたくさん持ってたけど、今は全部処分したなぁ…。


「クレアちゃん、百合をベッドのふちに座らせるのです」


しばらく黙っていたアリサがお告げする。もうそろそろなのかな…?


「はい、わかりましタ!」


「神様はなんて言ったの?」


「『ユリをベッドのふちに座らせるのです』だっテ。どういう事だろウ?」


そりゃベッドの上は色々やりやすいから…。クレアちゃんが座ったのを見届けてから私も座る。


ここからだ。きっとアリサはこの辺から仕掛けてくるはず!


「クレアちゃん。いよいよ百合とイチャイチャする時ですね」


「はい…。緊張しまス…」


「心配しなくても、あたしの言う通りにすれば間違いありませんよ」


クレアちゃんは深呼吸を数回行う。


「…神様。ワタシにイチャイチャを教えて下さイ!」


「どうやら覚悟が決まったようですね。今から百合をベッドに押し倒してキスするのです!」


「えっ(ッ)!?」


聴こえてない設定の私も思わず反応してしまう。アリサはどういうつもりなの?


私とクレアちゃんは次の言葉を待つ…。

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