第6話 イチャイチャを教えて下さい

 アリサの冗談まじりのお告げを聴いて、クレアちゃんが私を準備体操の相手に誘ってくれた。もちろん嬉しいけど、アリサの事だから他にもしてくるはず。


喜びと警戒を半々にしながら、体育の授業を受けよう。



 今日の体育はバレーのようだ。クラスの人数的に3チームでき、私がいない2チームが試合をしている。


本当に運良く、クレアちゃんと同じチームになれた。彼女は私の隣に座りながら試合を見ている。


「クレアちゃん、これから百合とイチャイチャするのです」

私達のそばにいるアリサが言う。


「えッ!?」


お告げ風に話す姿が見えないアリサの言葉を聴き、クレアちゃんは驚きの声をあげる。このお告げは私にも聴こえているものの、彼女はその事を知らない。


聴こえていないように装うのが意外に大変で苦労するよ。


「神様、ワタシとユリは女の子同士ですヨ? イチャイチャなんテ…」


あまりにもショッキングだったのか、隣にいる私を気にせず尋ねるクレアちゃん。傍から見ると、虚空に向かって話してるよ…。


「今の時代、女の子同士でイチャイチャするのが普通なんですよ」


「そうなんですカ!? 知りませんでしタ…」


純粋なクレアちゃんを騙すとは…。アリサは妖精じゃなくて小悪魔かも?


「最近神の間でも流行り始めたので、流行に疎いと知らないかもしれません。まだまだ認知度が足りませんね」


「神様の間にも流行があるんダ~」


「ありますよ。神様とて、人間とほとんど変わりませんから」


アリサは魔法が使えるから全然違うよ!


「クレアちゃんも知っての通り、イチャイチャするとお互い気持ち良くなります。女の子同士だと気持ち良さを共有できるので、より親睦を深められますよ」


「親睦を…深めル…」


「そうです。隣にいる百合は、クレアちゃんが仲良くしたい相手でしょう? 百合を気持ち良くすれば、クレアちゃんの虜になる事間違いなしです!」


「ワタシの虜ですカ…。良いですネ!」


「でしょう? なら今の内にイチャイチャしなくては!」


「神様。イチャイチャって何をすれば良いんですカ? ワタシ、よくわかりませン…」


「心配しなくても、あたしが手取り足取り教えてあげ…」


アリサの言葉の途中、ホイッスルが鳴る。試合が終わったようだ。


「次は私達のチームだね」

なるべく自然にクレアちゃんに声をかける。


「そう…ですネ」

アリサの説明が途中になったせいで、クレアちゃんは不満そうだ。


「帰り、百合を部屋に誘いなさい。誘えなかったら百合の部屋でも構いません。そこでイチャイチャの神髄を教えましょう」


「はい! お願いしまス!」


それってつまり、クレアちゃんか私の部屋でHするって事? 急すぎない?


「あたしはいつでもクレアちゃんを見守っています。…それでは」


アリサは別れの挨拶を言ったけど、別に消えていない。ちょっと滑稽かな。


「ユリ、試合頑張ろうネ!」


帰りが待ち遠しいのか、さっきと違ってクレアちゃんは笑顔だ。


「そうだね!」



 体育が終わり、帰りのホームルームの時間になる。アリサのお告げ通り動くなら、クレアちゃんはこの後誘ってくるはずだ。


まさか今日Hするとは思わなかったから、部屋を片付けていない。こんな事になるなら、念入りに掃除するべきだった…。


そして帰りのホームルームが終わり、放課後を迎える。…クレアちゃんがチラチラ私を見ている。


いつまでも彼女に甘えてられないし、今度は私から行動だ! 教室を出ず、クレアちゃんの席に向かう。


「クレアちゃんまた明日ね」


この後誘われなかったらどうしよう? ノープランだよ…。


「ねぇユリ。良かったら、ワタシの家に来てくれなイ?」


恥ずかしそうな様子で誘われちゃった。肩の上にいるアリサも満足そうだ。


「もちろん良いよ。クレアちゃんの家、前から興味があったんだ~」


「本当ですカ? 嬉しいでス♪」


クレアちゃんの家に行く前に、カバンを置きに家に寄ろうかな。彼女の家に行くんだから、私の家の事も教えておいたほうが良いだろうし…。


そう心の中で決めた後、私達は教室を出た。

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