第2話 オスという生き物

 ここで、自然界における『オス』の生態について話そうと思う。


 誰もが一度はドキュメンタリー番組などで、野生の世界について視聴したことがあると思う。その中でオスという個体同士が喧嘩している場面を見たことはないだろうか?


 大抵『メス』をめぐってあらそっているのである、彼らは。


 彼らは自らの子孫を残すためにこそ争い合う。そして勝者にのみメスと交尾する権利が許されるのだ。

 だから基本的にオスという生き物は自分以外のオスを許容しない生き物である。ライオンの群れを見てみるといい、メスが十体もいるのにオスは一匹しかいない。群れの中においてメスをはらませる権利を持つ者は少ない方が良いと考える。それが自然の摂理せつりというものだから。


 あとはそう、人のオスの陰部はメスの秘部から他者の精子を掻き出す形をしているという。その形をうまく想像することができないという人がいれば、パパに見せてもらうがよろしいだろう。そういうことからもオスという生き物が、いかに他者に対して不寛容であるかを理解していただけると思う。


 さて、ここで忘れてはいけないのは、人間とて、かつては野生の中を生きた自然動物の一種であるということだ。


 オスの特性については野生動物となんら変わったところはない。

 つまり、俺が何を言いたいのかというと──


「男ってのは自分の女が●ックスされるのが死ぬほど嫌なんだよぉおぉ!!」


 自分でも気持ち悪いと思うが、絶対的な真理である。


 自らがつがいと定めた相手が、他者に奪われてしまう。

 そのときの圧倒的な敗北感、情けなさ、やるせなさ。まるで自身の存在価値を根本から否定されるような惨めさは想像を絶する辛さがある。

 その感情は『絶望』と呼称しても過言ではない。

 そしてその感情は、世の中を生きる男たちの大半が経験していることだろう。誰だって女をめぐる争いで常勝無敗なものはいないから。


「うぎゃ、こほ、あうあ……んがぁあああぁあ!?」


 俺の終わらない苦しみは続く。

 俗にこれを『脳破壊』というらしい。

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