37
花、を買った。
花束。白い花。名前は知らない。
きっと彼女に良く似合う。
自宅に帰る。自分の部屋。驚く程に綺麗に片付いている。余計なものは一切無い。真っ白な絵の具を塗りたくって汚されたキャンパスの様な部屋だ。
「那由多……何処?」
呟いても返事は帰ってこない。
「君にプレゼントを買ってきたんだ。キミに似合いそうな白い花の花束。喜んでくれるだろうか?」
プレゼント。そうは言っても、コレを買ったお金は彼女のモノなのだろう。俺のモノはもう何一つ残ってはいない。全部、彼女のモノ。
「謝りたかったんだ。ごめんなさい、って。酷いことをして、ごめんなさい。取り返しのつかない事をしてしまって、ごめんなさい」
これまでちゃんと謝ったことはなかった気がする。やっぱり1度もない。だから、ちゃんと謝りたかった。
「ごめんなさい」
全部、俺が悪い。
屑で、卑怯で、嘘吐きで、最低最悪のどうしようも無いヤツだ。わかってる。それは俺自身が1番よくわかってる。
でも、
もう悪いことはしない。他人に迷惑をかけたりしない。真面目に生きる。嘘もつかない。
真っ当に、誠実に、紳士に、これから生きていくことを誓う。
もう、間違ったりしない。間違いを起こしたりしない。そう約束する。
だから、
どうか、
「許して欲しい」
意識せず、言葉が自然と口から滑り落ちた。
そうか?そうなのか?
俺は許されたかったのか?許してもらいたかったのか?
犯した罪への贖罪を終わらせたかったのか?
もういいだろ。もう十分だろうと。これで終わりにしていいだろうと。終わらせたかったのか?
ここから抜け出したいと、元に戻りたいとそう思っているのか?
そんな訳は無い。俺みたいなヤツは許されるべきじゃない。
このまま一生をかけて犯した罪を償って、償って、償って、死ぬまで償い続けるべきじゃないのか?
いや、そこまでのことをしたのか?
それで一生を終わらせていいのか?
このままずっと、このままでいなければならないのか?
そうなのか?どうなのか?
俺はどうするべきだ?
どうしたらいいんだ?
これからどう生きていけばいいんだ?
望みはなんだ?
何がしたい?
どうなりたい?
分からない。
何も分からない。
許されないのか、許されたくないのか。開放されたいのか、開放されたくないのか。終わらせたくないのか、終わらせたいのか。
分からない。
分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
ああ、誰か。
誰でもいい。
教えてくれ。
俺は……。
【分岐】
許される/許されない
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