第12話 戦闘

うそだ なんで どうなってる


マコト「ぃっ…!!」


土砂降りの中、見えない何かに切りつけられた。

利き手の肘から血が流れる。


⁇?「なんか殺し屋ぽくなーい。あ、もしかしてストーカーだった?」


女は間延びした声で言いながら、ずっと笑っている。笑い…。


マコト「人吸いか?」

???「ダサいあだ名やめてよー。私はリリィ!」


否定しない、つまり当たりだ。

バクさんはどこだ?さっきの場所には居ない。


マコト「姉さんはどこにいる。」

リリィ「は?」

マコト「カナエはどこだ!」


聞き出さなければ。なんとしてでも。


リリィ「…あのさぁ。」


ピシィッ!


マコト「っぁ…!」


首に鋭い痛みが走った。深くは切られなかったが、死の予感にゾッとして血の気が引いた。


リリィ「死ンデイクノガオモシロイだけなんだから、黙って殺されてね?」


口角が吊り上がるように笑って、女は鞭を振り上げた。


『し』


『シ』


『死』


『!』


マコト「ああぁあぁぁあああ!!」


僕は咄嗟にナイフを投げ抜き、猛然と女の方へ走り出した。走りながら万が一にと隠し持っていたミニナイフを構える。


リリィ「アハハハハハハハ!」


なにがおもしろい。なんで笑える。

お前みたいなのを殺すのだってこんなに気分が悪いのに。どこまでイカれてるんだ。


ビュンッ!


鞭が跳ねる音がした。けれど無視して突っ込む。

どうせ見えないし避けられない。


僕は押し倒すようにぶつかって、全体重をかけてミニナイフを女の心臓に突き刺した。


-ビクリと魚のように跳ねて、動かなくなった。


バク「帰るぞ。」


突然の声に、僕は反射的に目をむいて睨みつけた。バクさんを認識するまでに何回かまばたきした。


マコト「あぁ…。」


安心したというか、我に返った。

雨に洗われた手が、それでも血みどろに見えた。


-動かない

-死んでる

-殺した!


見下ろした女の死に顔は、恍惚と笑っていた。

吐き気が胃から食道を伝って喉に上がってくる。


バクさんに無理やり立たされて、僕は引きずられるようにしてその場を離れた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無能といっても能のうち! 日々命日 @hibi_meiniti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画