After the cherry blossom

ハルノユウレイ

プロローグ

 面白いくらいに桜が舞った。

 もう笑うことはできないけど、何故だか微笑ましく思った。

 あの子と最後に見た幸せな景色に、とてもよく似ている。


 明日もしなにかが変わったら、私はここを出ていこう。

 籠から放たれた鳥のように、大地を撫でる風のように。闇をも照らす月のように、自由に生きたい。何もない世界に、たった一輪咲き誇る花のように。


 希望もない世界だと分かりきっているのに、明日を望んでしまうのはなんなんだろう。聞いてみたい。あの子に。きっと私と同じ答えが返ってくる。


 桜の花びらがひらり、あの子のいる方へ舞った。あの花びらをあの子が捕まえてくれればいいのに、と思った。

 花びらはひらり、ひらりと舞って私の目の前に落ちた。


 明日はどうしようか、何もない世界で何をしようか。


 そんなこと決まってる、と軽く口に出してみた。自然と顔が前を向く。私は、私たちは、私たちの幸せを壊す奴らを消し去るためにいるんだ。誰も仲間がいなくたって、1人で動けばいい。1人でも勝てるさ、私は強いんだから。


 一歩踏み出した。一歩、一歩。この大地を強く踏みしめて、私は歩いていく。

 せっかく生きているのだから、あの子たちの魂の分まで生きてやろう。


 桜は風に吹かれて、噂話でもするようにざわめいた。

 

 


 

 

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