イケメンに片想いされるお局がいるが周囲の女子が何も言わない件について
翠川稜
「あのさ、吉澤にモーションかけるのは、あんたの自由なんだけどさ、あー別にあたし吉澤狙いじゃないから、でも蓮田に絡むのはやめておいた方がいい。あんた今、蓮田のことすっげえ目で睨んでたでしょ、吉澤が一方的に蓮田狙いなのはバレバレだけど、だからって蓮田に絡んだって得はないよ。蓮田は鉄壁のディフェンスだから。てか、あんたが泣かされる羽目になるから。そんでもって、逆に吉澤に嫌われるだけだから、確かに吉澤は顔はいいし、仕事もできるし、結婚狙いの女なら、優良物件カテゴリーだけど、あれ、蓮田狙いだもん。さんざん蓮田に袖にされ続けて5年ですよ。吉澤も落ち着いてきたけど、あれは若いころ女食いまくってたらしいし、今も多分テキトーに食いまくってる噂もあるけど、全部本気じゃないのは有名な話よ。
本命には手が出せないもんだから、よそで発散させてるじゃないかって。いやいや、牽制とかじゃないから、マジで心配だから忠告してんだって、泣きを見るはあんただよ、まあそれでもいいっていうなら止めないから」
「……ナニ、話しろって? 聞く耳あるんだ。いや、失礼。吉澤のこと? 女食いまくってる話? あーそれ本当。だって蓮田が調べたんだもん。自腹で金つかって。なぜかって? だから蓮田、男嫌いだから。自分に言い寄る吉澤をなんとかしたくて興信所使ったんだって。そしたらいろいろ出る出る。それを理由に蓮田は吉澤に断りを入れてんだよね。だから吉澤は蓮田に振られ続けてるのよ。
どーして吉澤が蓮田なのか、そして周りの女子が何もいわないのか謎だって?
あんたもいうねえ。
蓮田ねー。愛嬌あるっていうか、可愛い系だけど、めっちゃ男嫌いだから。男に対してあの顔で毒吐きまくりだから。
あんたも童顔のお局がって言ってたじゃんよ。
伝説があってさ。新歓の飲み会があって、新入社員の女子に対して部長アルハラというかセクハラをかまそうとしたわけよ。そこに蓮田が割って入って、蓮田被害被ったんだけど、蓮田、肉を切らせて骨を断つじゃないけど、自分が被害にあうところを対面に座ってる吉澤にスマホ預けて動画取らせてたんだわ。
……スケベジジイに身体触らせるっていうのもあれだけど、調子にのった部長が蓮田を持ち帰ろうと口説くわけよ。みんなさすがにドン引きだし、やばいし誰か止めろとか言い出して間に入ろうとしたところ、蓮田がいうわけ。
『吉澤さーん。いまの一部始終撮った? 動画撮影できたー? ちょお見せて』と、
みんな吉澤に視線いくわ。吉澤からスマホ受け取った、蓮田に注目は移るわ。そんな中でかい声で
『あーよく撮れてるねー吉澤さんカメラワークいいねー。会社名出しとくー? 部長のフルネームなんでしたっけ?』
……そーだよ、そのまさかだよ。
自らSNSに動画UPしようとしたんだよあの女。会社名と部長の実名付きで。
……引いたな……蓮田に絡んだら何されるかわからないって忠告してんのはそこよ。
怖いだろ、そりゃーアルハラ、セクハラかましてた部長も固まったわ。
それと同時にそれまで部長のアルハラセクハラに泣かされていた女子社員が一斉に蓮田についた瞬間だったね。
『蓮田さん! 部長の顔は公開しても、被害者女性である蓮田さんの顔はモザイクかけておかないと!』
『誰かーPCもってるやついるー? モザイク修正しておかないと! したら速攻でUPね!』
ノートPCやらタブレットやら、バッグから持ち出し始めて、ガチでやりかねなくなった女子社員の行動に課長達はじめ、男性社員達が止めに入るというカオスになったんだわ。 だけど蓮田の攻撃というか口撃がとまるはずないっしょ。スケベジジイに触られまくりだったんだから。
『あらー、無礼講の酒の席だから、女子社員にナニをしてもいいとか思ってるんですよね、だから課長達も黙ってたんでしょう? SNSにUPするのも無礼講の酒の席でやってもいいんじゃないのー? 大体コンプライアンスに連絡するよりてっとりばやくないですか? 女子ならそう思うよねー?』
という、いかにも私も結構酔っぱらってますの振りをする蓮田の言葉に、女子社員一斉に『思いまーす』って唱和する始末よ。
『じゃあ、課長達に免じてSNSの公開はあきらめますけど。部長スマホかしてくれますか? 奥さんにラインで送っときますので』
既婚者男性陣は一斉に身を慎もうと思ったらしいよ。でも、まあ部長はわたさなかったのね、スマホ。
『課長達が必死で止めたらから、ご家庭内への連絡でとどめておこうと思ったんですけど残念です』
そんなこんなで、うやむやになったように飲み会は解散したんだけど……。
吉澤が蓮田に説教するわけよ。あんなことするなと、自分を大切にしろと。そしたら蓮田は鼻で笑って。
『大切にしてますよ、もちろん』と。
『触られ損じゃねーか』と吉澤が怒鳴るわけ。
そうでしょ触られ損とか思うでしょ、でも部長飛ばされたから。
だって蓮田、飲み会解散したあと、秘書課の女子に意味深に微笑みながら
『じゃあ、この動画コピー預けますから、よろしくお願いしますね』
……全然酔ってなさそうにガチで声かけするの。そうだよ、専務以上の重役連のグループワーク連絡網に放り込ませたんだよ。まあ協力する秘書課も、部長の被害に一度はあったことある人物だったからね。完全に蓮田派よ。
で、部長飛ばされた後に女子のみで飲み会開いたんだけどさ。もう蓮田英雄状態。みんな蓮田を労う労う、よく身体張ってやってくれたってもんよ。蓮田曰く
『別に好きな男。いないし、男嫌いなんで、まあご家族にはアレかと思ったんですが、でも、ああいう男を一生家族にしてて問題ないか考えてみる機会になればいいかと』
とか。その発言で、いろいろトラウマありそうだなって思った。そうなると周囲は蓮田にいい出会いを!! とかなるわけよ。蓮田にしてみれば余計なお世話で、むしろお前らが幸せになれとばかりで、社内カップリングをまとめ上げて、何組か結婚したらしいよ。
そんな蓮田に興味をもったのが、吉澤なわけ。
女をさんざん落としてきた吉澤にしてみれば、毛色の変わったタイプと付き合ってみるか的なところもあったんじゃないの? これは蓮田の言葉だけど。
社内きってのイケメンで仕事ぶりもいい、蓮田万歳な連中も眉をしかめる奴もでてきてさ、蓮田はそういう連中に発破かけて、吉澤を全力で落とせというわけ。ところがある日、蓮田が
『吉澤はやめておいたほうがいいかも』
とかいうのよ。これは吉澤の猛プッシュにとうとう蓮田が折れたのかとあたしは思ったんだけど。違ったの。
蓮田万歳の女子社員もやっぱ蓮田は吉澤のことを想い始めたのか、応援するふりしてなんて姑息な、とか、そういう雰囲気が蔓延る前に、女子会で興信所を使って吉澤の身辺調査したと、興信所のロゴの入った封筒をその席でぱーんと投げてよこしたの。
『女食いまくってるよ、この男、それがモテる男のバロメーターであたしは全然OKとかいう人は頑張ってください。わたしは勘弁、付き合ってて3か月たったころに、貴方の子を妊娠したのって言われかねない男と付き合ってもちっともときめかない。やっぱり男ってサルだね』
と冷たく言い放ったのよ。吉澤のファン3分の2は減ったんじゃね?
あたしも一時いーなーと思ったけどそれを知って引いたもん。なんで自腹を切って興信所まで使ったかと尋ねたら、
『以前、いろいろあったんで、自分に言い寄る男はすべて疑いかかります』とか。
筋金入りの男嫌いなんだろうと、その場の全員納得。だから吉澤が一方的に蓮田を押してるけれど、蓮田は絶対付き合いそうにない。
はなから成立しそうにない組み合わせなわけよ。
だから女子社員は何も言わない。
だけどさー、さんざんモテて、女食い散らかして、結局、本命からは拒絶される吉澤を最初はみんなざまあああとか思ってたんだけど。5年よ? 5年も振られ続けてるのに、吉澤は蓮田のことを想ってるらしいのね。
『まあ、男だし、適当に食い散らかしてるかもしれないですよ』
と蓮田はいうけどさ。
同じ社の女子社員なんかは、『もーどーなんのコレ』な状態でね……、どうする? あんた、吉澤にアタックすんの?
え……やめんの? 意外と根性ないねえ……蓮田に絡もうとしたくせに、この話聞いても蓮田に絡んだらこれは久々の猛者が登場とかワクテカしたのにさあ。
そんなわけで、あたしたち、オッズ張ってるんだけど。
吉澤が蓮田をあきらめ、いいよる女子と結局まとまって結婚。
蓮田にいいよる吉澤以上の人物が現れて、蓮田がそいつと結婚、寿退社。
奇跡の逆転で吉澤と蓮田が付き合う
あんたも乗る? ていうか、アンタは吉澤にいいよる女子になっても……。
うん? うしろ? 後ろナニ?
あら~吉澤さん~ごきげんよ~~。
あ……人の純情で遊ぶな?
えーさんざん女の純情弄んだ男に言われても説得力がーって蓮田なら言いそう~。
でも頑張ってよ~。
だって、あたし、最後の奇跡の逆転で吉澤と蓮田が付き合うに一枚載せてってから」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
そのむかし自作でなろうでランキングに上がった短編作品です。
ちょっとね、連載止めて何やってるのと聞かれたら、WEBに掲載できないものを手掛けてるので、もうしばらくお待ちください。
で、あまりにもお待たせしちゃってるので、ちょっと申し訳なくて、
(この人、まじで○んでんじゃね?とか思われるのもあれなんで)
なろうから短編ひっぱってきた。
未読の方が楽しんでもらえればいいなって思います。はい。
イケメンに片想いされるお局がいるが周囲の女子が何も言わない件について 翠川稜 @midorikawa_0110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます