縁切り神社に行きたい

@ku-ro-usagi

読み切り

少しばかり久々に会った友人が、

「旅行でね、有名な縁切り神社あったから軽い気持ちで予定に組み込んで行ったの。

そしたら、仲がいいと思ってたし実際仲が良かった旦那の浮気が発覚。

挙げ句、

『ごめん、俺、やっぱり浮気相手と一緒になりたい』

って言われて離婚する羽目になったのよ。

それ以来、縁切り神社怖いし嫌い、行くなら気を付けてね」

って溜め息吐きながら離婚の報告をしてくれた。


凄いな縁切り神社。

興味が湧いて、行ったことある人いるかなと周りに聞いてみた。


同僚

「友人だけどね。

悪い縁を断ち、良き出会い求めて~って縁切り神社へ行った帰りに、結構なでかい事故に巻き込まれてさ。

悪いものでも連れて帰って来たんたじゃないかとかみんなで噂してたんだよ。でもね、入院した先の病院のリハビリ担当の人とめでたく結婚した」


後輩

「何だか、ある日を境に怒涛のようにトラブルや嫌なことが起こり始めて。

やたら続いて困ってて、それで、ダメ元で縁切り神社でお願いしたんです。

そしたら、その日仕事から帰ったらですね、同棲してた彼氏が、理由も告げずに自分の荷物纏めていて、何を聞いても教えても貰えず、まるで夜逃げのように、私から逃げるように出て行ってしまいました。

当然関係もそれっきりです。

呆然として一人取り残されたんですけど、その途端にですね、同棲始めてからずっと続いていた不運がぴたりと収まって。

疫病神とでも一緒に暮らしてたんですかね、私」


上司

「あぁ、行ったことあるよ。

『売り上げ不振と縁を切りたい』

とお願いしたらね、前にいた店舗が閉店してね。

アクロバティックだよねぇ、神様は」


うーん、みんな結構行ってるのね。

そっちに驚くよ。

それでさ、最近、仕事先で偶然にも同級生の友人と再会したんだ。

これも何かの縁。

いい縁だといいなと思いつつ食事に誘ったんだ。

思い出話もほどほどに、私は、また何か楽しい話が聞けないかと、縁切り神社に行った事はないかと訊ねてみた。

そしたら。


あるある、行ったよ。

婚約した友人と、最後の独身旅行だって言って、一緒に旅行したんだ。

私の希望で、なにやら噂で強い神様がいるって神社へのスケジュールも組んで行ってみたよ。

それで。

旅行から帰って少しした頃。


中学生の頃に同じクラスだった同級生の男子と偶然カフェで再会して話してたら、

『実は君のことが好きだった、忘れられなかったし今日ここで出会えたのも、これも運命だと思ってる』

って告白されてね。

びっくりしたよ。

それで、同じ時期に一応ね、男の幼馴染みにも婚約の報告したの。

そしたら、

『お前は俺と結婚するって約束してたじゃないか!俺はまだそのつもりだ!お前を諦めてない!』

って抱き締められちゃったの!!


「ってね。

一緒に行った、婚約した友人からね、報告された。

『きゃ~!どうしよう~!私、超モテ期だよ~!?あそこの神社のご利益凄い~!!』

ってさ。

あぁ、そうなんだよ。

どっちも婚約した友人の話。

なんかでかい御利益をね、全部を友に持ってかれた感じ。

あ?

うん、当然こっちには何もないよ。

もう次は1人で行く。絶対1人で行く。

え?

その友人には?

『知らねーよ』

って返しといた。

人の御利益分までかっさらっといて、

『もうどうしよう~困っちゃう♪』

じゃねぇっての。あー腹立つ」


私は、

「その大変強そうな神様のいる神社の名前を教えて欲しい」

と言葉がもう舌先まで出かけてたけど、友人が、思い出し笑いならぬ、思い出し舌打ちをしているため、何とかギリギリ言葉を飲み込んだ。

友人にご縁があった暁には今度こそ聞いてみたいと思う。


そんな、縁、縁、縁と、縁の話にアンテナを広げていたためか。

その後にね、また妙な、いや素敵なご縁があってさ。

あぁ男でなく女性ね。

何だかそれらに詳しいらしくて、話を聞かせてもらったんだよ。


「大層手荒で乱暴なご縁の結び方は神様ならでは。

どこのお寺や神社にでも、本当にお願いに行くときは覚悟を決めて行って下さいな。

イメージ的には、

『温泉へ行きたい』

と思ったら、

『丸裸で丸められて山奥の天然温泉に投げ飛ばされる』

くらいの勢い。

本来繋がっている縁を、それこそ神様のお力で無理矢理引き千切るため『血』が流れることも至極当然、ことのほかお気を付けを」


とのこと。

うーん。

しかし、

「行っても何の御利益もなかった」

って話も聞いたけれど。


「人だけでなくお寺も神社にも、それぞれ相性と言うものがございますから」


友人が自分の分まで吸われたって言うご縁は?


「ただ、大木とマッチ棒の違いでしょうか?

マッチ棒から仏像は彫れないでしょう?」

小さく笑われた。


おい友人、君、マッチ棒とか言われてるぞ。

まぁ、そういう私も、多分同族のマッチ棒なんだろうね。

せめて、火を点けても湿気って燻って終わり、なんて事にならないようにはしたいけれど。

え?

すでに湿気ってる?

余計なお世話だよ。


後でマッチ棒の復活の仕方、調べよう。




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