変態後輩男の執拗なアプローチ

黒猫虎

短編


学年が上がり、靴箱の引越しをする。

新しい靴箱はどこだ?

ここか。

前は女子が使っていた痕跡がある。

写真のシールやデコるシールが可愛くベタベタとされている。

というか、前所有者の上履きが上の段に残っていた。

俺は少し考えて、RINEのIDと「今度洗わせてください」のメッセージを書いた紙を上履きに入れておいた。


しばらくして、RINEの友だち申請が来た。

アイコンがシールの彼女。

おそらく新3年の先輩だ。


「えっと。結構臭かった?」

「いえ、どちらかというと好みの匂いでした」

「君、かなりのヘンタイだね! ヘンタイな後輩に上履き洗ってもらうの大丈夫かな?」

「任せてください。ヘンタイだけに仕事は丁寧だと思いますよ」

「よし、次の金曜日の放課後に渡すから、洗って月曜日の朝に返してくれる?」

「もちろんいいですよ」


やった。

シールの写真もRINEのアイコンも好みだったから、会えるのが楽しみだ。


そして。

実物のセンパイが2年の教室にやってきた。

「本体はめっちゃ良いニオイですね」

「君にこの上履き渡してホントに大丈夫かなー?」

「安心してください。ヘンタイはこだわり強いんで良い仕事しますよ」

「よし、ヘンタイの君に任せた」


それから。

俺はセンパイにヘンタイ要素を前面に出したアプローチを続けた。

大学もストーカーして同じ大学に入った。

センパイの進学先が東大だったから、あの時は結構苦労したよ。

東大ミスコン準ミスのセンパイにヘンタイ後輩ムーブをかませるのは、世の中広しといえども俺だけだろう。


「センパイ、今度炊事洗濯させてくれませんか」

「今卒論大変で家事代行お願いするのはかなり魅力的だけど、君がヘンタイな後輩だと高校の時分から知ってしまってるからなー。記憶消す方法知らない?」

「それは知らないですけど、無料ですよ。それに今ならマッサージも付いてます」

「ヘンタイな後輩のマッサージかー」

「ヘンタイですから執拗なマッサージですよ」

「うーん、執拗なマッサージかー。とても魅力的な響きだね。ヘンタイじゃなければ」


そして卒業して就職を期にプロポーズした。

ヘンタイらしく執拗にプロポーズする予定だったけど、センパイは1回目で即快諾した。


「センパイいいんですか、ヘンタイの後輩の妻になってしまっても」

「だって、ヘンタイだから執拗に愛してくれるんだろう?」

「はい、もちろんですよ。ヘンタイですからね。ではさっそくココにハンを押して、センパイ妻のニオイを嗅がせてくださいよ。ヘッヘッヘ」

「先にヘンタイ3ヶ月分のヘンタイ婚約指輪を要求する」

「ヘヘー、分かりましたー」


今でも俺はセンパイをヘンタイ的に執拗に愛している。


もちろん、死ぬまで。

いや、来世まで。

いやいやいや、来来来世まで、執拗にヘンタイ的にストーカーする所存である。



靴箱の引越しが結んだ先輩後輩の異様な縁の話 END




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変態後輩男の執拗なアプローチ 黒猫虎 @kuronfkoha

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