第20話 リサリアのしたこと
健斗たちは商人たちと行動を共にし、町を目指す旅を続けることになったが、リサリアは剣を構えながら周囲を警戒し、エレナは健斗のラケットをしっかりと握りしめていた。
「この森を抜けるためには、もう少し進む必要があります。」
「ありがとうございます」
リサリアがありがとうを言うと、リースと名乗った商人の男は健斗に尋ねた。
「あなた方もこの森で襲撃を受けたとのことですが、どれくらいの規模でしたか?」
健斗はうなずきながら答えた。
「彼女たちの馬車が襲われているところに俺が出くわし、残っていた9人を倒したかな。ひょっとしたら何人かは逃げたかもだけど、その後は魔物しか見ていないな。このあたりは盗賊や野盗の類が多いのですか?」
リースは深くうなずいた。
「この地域は最近、魔物や盗賊が増えていて危険だと言われています。早く安全な場所にたどり着きたいものです。」
健斗たちは慎重に進み、この日は日が沈む前に野営できそうな場所を見つけることを目指した。やがて、少し開けた場所にたどり着き、ここで休むことに決めた。
リサリアが焚き火の準備をし、健斗は周囲を見渡した。
「ここなら一晩安全に過ごせそうだ。」
「健斗、ありがとう。あなたがいてくれて本当に助かっています」
エレナは疲れた表情を浮かべながら健斗に言った。
「大丈夫だよ。皆で協力して、この状況を乗り切ろう。」
健斗が微笑みながら返した言葉に、リサリアが生暖かい目を向けながら焚き火を灯し、暖かい光が彼らを包んだ。
夜が更け、彼らは焚き火の周りに集まって休むことにし、健斗はリサリアと交代で見張りをすることにした。
見張りを交代する時間までまだ少しあったが、目が覚めたこともあり、健斗は月明かりに照らされた美しきメイドたるリサリアの横に座った。昼とはまた違った、なんとも神秘的な彼女の横顔にどきりとするも、はっとなり、先程のカードについて尋ねた。
「リサリア、先程見せてもらったカードとはいったい何なんだい?」
リサリアは少し驚いたが、話し始めた。彼の持ち物や服装がこの世界のものとは異なることを改めて感じ、健斗が常識的なことを知らないのではないかと思った。
「あれは賊のステータスカードです。額から取り出したもので、懸賞金の対象になる者たちの情報が記されています。」
健斗は一瞬理解できなかった。
「つまり、あの賊たちを倒すことで、懸賞金が得られるということ?」
リサリアは頷くと答えた。
「そうです。懸賞金が出れば、その報酬は健斗様のものになります。」
健斗はその数に少し戸惑いながらも確認した。
「ちょっと待って。俺は全部は倒していないぞ。あっ!そっか、護衛の人が何人か殺しただろうからそれか!」
リサリアは冷静に答えた。
「確かに護衛が倒したのもあります。奇襲なうえ、人数も多く後手を取りましたが、それでも一方的ではなかったようで、16人を倒しておりました。」
「話しが噛み合わないよ?」
「はい。護衛が殺した者以外、つまり健斗様が無力化した9人は生きておりました。先に話した通りエレナ様が健斗様の手当をなさっておられる間に、私がとどめを刺して回りました。」
健斗は顔を青くしながらリサリアに恐る恐る尋ねた。
「俺の取り分は9人だろ?まあ、それはいいや。それよりリサリア、どうしてあの賊たちにトドメを刺す必要があったの?」
リサリアは冷静に答えた。
「連れて行くことはできないからですし、基本的なことです。賊は捕らえたらその場で殺すのが常識ですよ。復讐のため、生きたまま捕らえるよう懸賞金を出す者もおりますが・・・」
健斗は当たり前だというリサリアの言葉の後、一言も発せられず、見張りを続けるしかなかった。
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