異世界はスマッシュと共に

鍵弓

第1話 プロローグ

 地球ではないとある世界の草原に、テニスウェアに身を包んだ日本の高校生が立っていた。それは渡辺健斗だ。(わたなべ けんと)

 彼は高校2年生で、テニス部に所属する普通の少年だった。いや、少し中二病を患ったテニスバカだ。


「なんだよここは?まるで異世界かゲームの世界じゃないか!」


 健斗は戸惑いながらも、周囲を見渡していた。先程までテニス部の部室で着替えようとしていたが、今は人工物が全く見えない草原にいる。


 テニスの練習が終わり、着替えるために部室にあるロッカーを開け、カバンを掴んだ瞬間、突然空間がゆがんだ。そして瞬く間に謎の光に包まれ、その直後、健斗は何もない草原に放り出されたのだ。


 光が収まると視界が戻ったが、目の前に広がるのは見知らぬ広大な草原・・・ 青い空、遠くに見える森、風に揺れる草がサワサワと音を立てている。


「ここは・・・どこだ?きれいなところで、空気もうまいな・・・」


 健斗は混乱しながらも、その美しい風景にしばし見とれていた。しかし、ハッとなり思いついたことを行う。


「やはりこれってさ、ついに俺も異世界に召喚されてたりしてさ、ステータスとかも確認できるやつか?そうだよな?あれやりますか!いつやるの?って今でしょ!」


 そう言って健斗はお決まりの言葉を口に出してみた。異常事態に不安に思うより、心の中に潜む中二病心が覚醒した感じで、異世界に来て無双できるんじゃないか?とワクワクが勝った。


「ステータス!」


 すると、目の前に半透明のウィンドウが現れた。そこには自分の名前や能力値が表示されていた。


・・・


ステータス


名前: 渡辺 健斗

年齢: 17

職業: 無職

称号: 異世界転生者

レベル: 1

体力:  50

魔力:  20

攻撃力: 60

防御力: 45

敏捷性: 52

知力:  10

スキル:テニスの達人

特技:ゲーム知識


スキル&特技詳細

【テニスの達人】: テニスに関する技術と攻撃力、体力が大幅に向上する。攻撃に役立つ特殊能力が備わるが、通常武器にはマイナス補正がかかる


【ゲーム知識】: ゲームに関する知識が実際の戦闘や戦術に応用できる。危機的状況下では思考が加速される


・・・


「何だ、やっぱり見えるよ!しかもこれはシャイニングオンラインのステータス画面じゃねぇか!つまり俺はいつの間にかゲームの中に来たってこと?」


 健斗は興奮しつつも、ノートにステータスを控え、ノートをしまったのとほぼ時を同じくして、地響きが足元を揺らした。


「何の音だ?」


 振り返ると、100mほど先に真っ黒な巨大な角の生えた馬のような生き物が見え、敵意むき出しでこちらに向かって駆けてくるのが見えた。


「う、うそだろ!?」


 健斗は思わず後ずさりした。しかし、その生き物はどんどん近づいてくる。


「やばい、逃げなきゃ!」


 健斗は反射的にカバンを【リュックタイプ】投げ捨てるように下ろし、持っていたテニスラケットを構えた。しかし、その巨大な生き物の迫力に圧倒され、恐怖で体が動かない。


『こんなの、どうすればいいんだ!?』


 健斗の心臓はドキドキと激しく早鐘のごとく打ち、汗が頬を伝って流れた。逃げ道を探そうと周囲を見回すが、周りに広がるのは草原であり、見晴らしが良い。草の丈も短く、つまり隠れる場所もないことを示していた。


 健斗は絶望的な状況に立たされながらも、何とか生き延びる方法を必死に考えた。思考が加速される中、頭の中に浮かんだのは、朝から感じていた嫌な予感だった。


『これが・・・その正体なのか?』


 どうするのが正解か分からないが、どう見ても逃げも隠れも出来そうにないし、戦う以外の選択肢はないよな?やるしかないんだよな?それに逃げるのは性に合わない!自問自答しながらラケットを握りしめ戦う覚悟を決めるのだった。


 魔物は50mほどにまで迫っており、何もしなければ数秒後に踏み潰される運命が待っている。果たして巨大な馬のような魔物に、テニスラケットを構えた勝ち目の少ない状況に健斗はどう立ち向かうのか?


 ・

 ・

 ・


 続く


 ・

 ・

 ・


 **とある城にて**


 数名の男だけが集まり、魔法陣を取り囲んでいた。悲壮感漂う彼らは祈るように召喚の儀式を行っていた。魔法陣が光り、いよいよ召喚者が魔法陣より出る瞬間、その場にいないはずの女のくしゃみがした瞬間、魔法陣に狂いが生じた。一瞬見えた奇抜な服を着た者は何処かに消え去り、その場にいた者は、召喚自体は成功したことは分かり慌てて魔法陣を探ったが、召喚者が飛ばされたその先が魔の草原だと分かり、絶望に崩れ落ちた・・・




後書き失礼します。

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