月に捧ぐ鎮魂歌
カキツ
第1話
――1950年
それは、人類史における大きな転換点となった。
のちに「機械生命体」と称される10~20メートルの巨大な機械の身体をもつ生物が各国に突如として現れ、無作為に人類を虐殺して回ったのだ。
それの姿は各国で異なり、まるでその国特有の伝説が、電線やケーブル。はてには戦艦の一部や大砲など、当時におけるメカニックなデザインでオマージュされたかのような姿をしていて「まるで神が降臨したようだった。」と当時を知る人たちは語っている。
機械生命体は、比喩したように神のごとく、
理不尽に。前触れもなく。各国の軍の抵抗も意味を辞さないままに。
町も、人も、そのすべてを破壊した。
最も被害の多かったアメリカ、日本、中国など、主要な国では一般人も含め、およそ3割の人口が虐殺され、当時勃発していた戦争なんて比ではないような阿鼻叫喚が世界各地に響き渡った。
それから数日と経たずして、1937年から凡そ13年もの間続いた第二次世界大戦は終わりを告げたのだった。
1951年、この事態を鑑みた世界は、対機械生命体を主軸とした組織『AMU(Anti-Machine Unions』を発足。
各国の軍が協力し、これの撃退にあたった。
だが、機械生命体に当時の兵器は通用せず、1952年初頭にアメリカが開発した核弾頭により、ほぼすべての機械生命体が殲滅された。
人類の2割を虐殺した機械生命体がすべて倒されたことにより、世界に平和が訪れ、世界が手と手を取り合えることをしって、ハッピーエンド。なんてことはなく、悲劇はこれで終わらなかった。
その5年後、1957年にまた主要国の各都市に機械生命体が現れたのだ。
人類は絶望するしかなかった。
あぁ…………。今度こそ、人類は滅ぶんだ。と。
アメリカの核弾頭による機械生命体の撃退は功を奏したものの、
その二次被害は、各国の、そして国民の悩みの種となっていた。
それが、半径約5kmにも及ぶ熱線と、放射能を死因とする被害だった。
核弾頭による人類滅亡か
機械生命体による人類滅亡か
人類の歩む先に、希望などなかったのだ。
だが、神は人類を見捨てていなかった。
機械生命体に対して、絶対的な攻撃能力を持つ当時15歳の 1人の少女が日本に現れたのだ。
その名は『はじまりの巫女』――
核弾頭によるある都市での死者数2万人越えだったのに対し、 死者20名、重傷者109名。軽傷者多数という、当時ではありえないほど、被害を抑え、機械生命体の撃退に成功したのだ。
『はじまりの巫女』の名は瞬く間に世界へ広がり、その1年後からは、同様に何かしらのの能力を持った少女が生まれてくるようになった。
各国は、次に現れるかもしれない機械生命体に備え、能力者を育てる教育機関を設置。
日本では、神堂 真奈が通っていた学校「都立月ヶ岡高校」を国有化し、
小・中・高・大とエスカレーター式の学校「国立月ヶ岡学園」を設置した。
また、教育機関設置に伴って神堂真奈をはじめとする能力者を主軸とした対機械生命体組織『
それからというものの、機械生命体は新月の頃―― 一月に一回のペースで主要国の人口の最も多い都市へ現れるようになったが、各国の保有する能力者によって、少なくない被害を出しつつも、その撃退に成功していた。
あれから、さらに70年ほどたった現在――
「ほんとに、ここに通うんか…………?」
ある少年が、月ヶ岡学園の前に立ちすくんでいた。
能力者やそのサポーターとなりえる人材のみしか許されない選ばれし者のみが通いし学び舎――月ヶ岡学園。
『はじまりの巫女』をはじめとし、様々な能力者を育て、日本の要となる様々な人材を育てて来た名門中の名門校。
卒業後は『はじまりの巫女』――神堂 真奈が創設した対機械生命体の超エリート組織『
その門戸をたたくことが可能な人材とは、能力を扱うこのとのできる女性と、その女性を裏からも表からもサポートする学力や高い身体能力を持った男女のことであり、
「うへぇ……。はやく、家に帰りてぇ…………。」
なんてことない普通体形
中学校の成績は中の中
得意なことはない――いや、自宅警備は得意です
自宅を愛し、外界を愛さず、今もこうして間抜け面を栄えある校門の前でさらすこの俺――
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