第28話 動物園実習レポート~第一日目~

 ※大学時代ブログへ書いたままの内容を転載します。

  お見苦しくてすみません💦


   *  *  *


 朝6時、起床。母親の運転で7時に家を出る。

 8時過ぎ頃に〇〇動物園に到着。

 内心ビクビクしながら関係者以外立ち入り禁止の門をくぐる。

 ……それが意外と簡単に開くのです。

 別に悪いことをしているわけでもないのに、気持ちはプチ犯罪者★

 ハガキに指定されていた飼育事務所はどこか?とキョロキョロしていたところ、飼育実習担当の方が声をかけてくださり、なんとか事務所へ。

 施設の簡単な説明を受けて、実習着(つなぎ)に着替えます。

 着替える部屋は、ちゃんと女子更衣室というものがあって、ロッカーを二つももらいました。

 上のロッカーには、着てきた服を。下のロッカーには、作業着を。

 他にも、作業着を家に持ち帰らず、飼育事務所内にある洗濯機で洗うことなどにより、感染等を防ぐのだそうで。

 細かなところにも、そうゆう配慮が見られました。

 着替えた後は、園内の簡単な説明。

 〇〇動物園専用の赤い帽子を貸してもらい、気分は飼育係です。

 ……つなぎだけど。

 その時の説明で、私の担当動物を教えてもらいました。

 アヌビスヒヒ、シマウマ、トラ、ヒョウ!

 残念ながら、私が狙っていたスローロリスは外れてしまいましたが、それでも精一杯やろうと背筋を伸ばす。

 担当者さんは、二人いて、それも代番と言って、交代で出勤するシステムらしく、今日は、その内の一人Sさんの下に付きました。


 まずは、ヒヒの岩山にホースで水洗い。

 ちょっと私もやらせてもらったのですが、これが重い重い!

 すごい勢いで水が出ますからね。しかも、サルは岩山の頂上付近に避難しています。どうやら、サルは、寝室を持たないようで。

 後で聞いた話、ホースよりも肩の位置が高いところにないとキツイそうな。そりゃそうだ。

 実は、それよりも前にSさんは数々の仕事をこなしていたようで、私が見たのは、朝の一部のみ。

 開園時間が9時からということで、それまでに園内の状態を整えるためには、8時頃から来ていなくては出来ないのだとか。

 実習時間は8時半からと決まっているらしく、そこはどうしようもないのだとか。

 お仕事でやっていらっしゃることなので、私も邪魔をするわけにもいきませんからね。


 ホースでの水洗いが終わると、サルを間近で見られる窓洗いです。

 内側は、危険だということで、Sさんがやっているところを外から拝見。外側の窓は、私もやらせてもらいました。

 ぶっちゃけ、この実習のほとんどが効率の良い掃除の仕方についてですから。それでも勉強になると言えば、言えます。

 少しでも早く、それも楽に、効率良くやることが大切なのだとか。

 休憩時間にSさんが熱く語ってくださりました(笑)。

 作業自体は、それほど困難ではありません。

 実際に私がやれること、やらせてもらえることなんて極僅かですし。

 間に何度も休憩を取ってくれたりしたので、さほど疲れを感じることなく行えました。


 サルの次は、シマウマです。

 ちなみに園内の中の移動は、二人乗りの車を使用します。

 ゴルフとか何かで使われてる、アレです。

 これで移動時間を短縮できますし、余計な労力を使わなくて済みます。

 動物の排泄物などを積んだ、重いリアカーなどを運ぶのにも最適です。

 シマウマ舎で掃除をした後、集めた排泄物などをリアカーに積み、それを車に繋げて、捨てに行きます。

 この排泄物は、ある一箇所に集められていて、それを近所の農家の人に無料で提供しているようです。堆肥になりますからね。

 その代わり、農家の人から動物の餌となる野菜などを無料でもらっているのだとか。つまりは、リサイクル。

 こうゆうところにまで気を配っているのだな、と素直に驚きました。

 排泄物を捨てたリアカーを洗って、元にあった場所まで戻します。


 ……シマウマ舎の掃除ですけどね。

 こうゆうところは、牧場実習と全く変わらないのですが。。

 あの時は、掃除中に掃除の仕方まで見られることはなかった。

 それが今回はマンツーマンですからね。一から十まで教えてもらいます。

 いやー、これが結構難しいのよ。

 丁寧にやって時間をかけてたんじゃ駄目だし。

 急ぎすぎても駄目。効率良くしないといけない。

 何度もやっているところを見せてもらって、自分でやってみるんですが、なかなか上手くいかないんですよね。これが。

 シマウマの糞とワラが一緒になっているものを「ボロ」と言うのですが(馬とかでも言うよね)、これが集まると重いんだ。。

 初めに一回やらせてもらうと、「初めてにしては上手いなぁ!」と言われたので、前にも一回だけ北海道で馬のボロを掃除させてもらったことがある、ということを伝えると、「それじゃ遅いっ!」と言われてしまいました。

 ……皆さん、こうゆう時は、何でも初心者ぶるのが一番ですよ。


 シマウマの掃除が一番大変でしたね。

 後は、そんなに重労働とかもなかったし。

 そして何よりも、シマウマの掃除をしている最中、ずっと視線を感じることです。

 シマウマの放飼場(運動場)に接している舎の通路には格子のはまった窓があるのですが、そこから何頭ものシマウマが覗いているのだから!!!

 いやー、あのズィブラの模様に見つめられるのは、ちょっと不気味でしたよ。

 奴らは、新顔の私が気になるのか、興味津々でこちらを見つめてきます。


 風雅「あの……なんか、すごく見つめられてるんですが……」


 Sさん「そりゃそうだよ。だもん」


 そうですか! そうですねっ!

 いやー、これが本場のというものか!!

 それもしばらく経つと慣れてきて、つぶらな瞳を見る余裕さえ生まれてくる。

 じーっと、こちらを見つめるシマウマと見詰め合っていると、


 Sさん「何、嬉しそうなの(笑)」


 どうやら私、自然とにやけていたようで。

 いやー、可愛い可愛い。シマウマも可愛いねぇw

 何度かシマウマの居る放飼場に入る事があったのですが、意外と怖くはなかった。

 興味津々でこちらを見つめ、好奇心旺盛な数頭だけが近づいてきたり。

 いや、近づけさせないように、と注意されてしまいましたけど。。

 可愛いんだもんっ!!!


 さて。シマウマの掃除が終わると、小休憩。

 これも何度かあったのですが、その度にSさんにジュースを奢ってもらっちゃいました。

 私、初めて見ましたよ!

 何も言わずに自動販売機にお金だけ入れて、「好きなものをどうぞ」と言って去るお方。

 いやー、これぞ紳士!と思ってしまいました。

 ……ね、そうでしょう?(同意を求めてみる。)

 休憩中に何人かの他の飼育員の方とも顔を合わせたりして、その度にご挨拶。

 基本は、挨拶。とにかく挨拶。これだけは、最低限のマナーです。

 そして皆さん、私の服装を見て何度も言うのです。


「つなぎが暑そうだね」


 ……って。

 なんだかんだで、作業着を無料で特別に貸して頂けることになったし。

 だって、一張羅なんだもんっ!!!(爆)


 休憩中には、中の施設を見せて回ってくれたり、保護している動物なんかを見せてもらえました。

 何よりもテンが可愛かった!!

 ジェントルリーダー……じゃなくて、ほら、あるじゃないですか。

 フェレット用とかにある、腕とかにも巻いてるリード。

 あれを付けて、みんなに遊ばれてちゃあ、どっからどう見ても立派なフェレットだよ。

 かくいう私も抱かせてもらいましたw

 甘噛みしてきて、むちゃくちゃ可愛いいんですよ~!!!

 そのフェレット改の育ての親さんが自分の携帯の待ち受け画面を私に見せて、こう言いました。


「でも、こっちの方が可愛いよv」


 それは何と、ムササビの顔アップ!

 ムササビですね。と当てると、さすがだねっ!と褒められて、ちょっと有頂天(ばか)。

 飼育係の人達は、ほとんどが現場での仕事なので、こうゆう休憩の合間のコミュニケーションが大事なのだとか。

 遊んでるだけじゃないのですよ~!


 休憩の話はこのくらいに。

 次は、トラとヒョウの話に移りたいと思います。

 お昼ごはんを食べた後、サルとシマウマに餌をやって、トラとヒョウの舎に移動しました。


 Sさん「動物が死んでも構わない。逃がすことだけは絶対にしない」


 それが一番で最大の目的だそうで。

 健康管理を気遣いながら作業をしていては、鍵をチェックし忘れたりしてしまうこともあるから、健康管理は二の次、三の次。

 まずは、逃がさないこと!

 間違えるかもしれない、ではなく、絶対であること!

 これが重要だそうです。

(もうこのブログだけで私レポート書けちゃうね。)

 その言葉通り、トラとヒョウの舎は、何度も何度も鍵を確認します。

 それも面倒なくらいに。でも、それだけ逃がすことだけは絶対にしてはいけない、という高いモチベーションがあるのでしょう。

 トラとヒョウの餌やりは、寝室で行います。

 私、彼らをどうやって寝室に入れるのか、と興味津々だったのですが、これが見てびっくり!

 私の足元にある通路を彼らが通るわけです!

 鉄格子を挟んですぐ真下を彼らが通るので、おっかなびっくり。

 思っていたよりも、ものすごい迫力で。むちゃくちゃ怖かったよ!!

 やっぱり新顔の私が気に食わないのか、興味があるのか、やけに私に飛び掛ろうとしてきます。

 私の足に顔を近づけてくるもので、もうヒヤヒヤものでした。。


 ここでも新知識☆

 トラとヒョウは、鶏肉をまるまる与えるのですが、トラは鶏肉の足を嫌うようで、その部分だけを切って、残りを与えます。

 その反面、ヒョウは、鶏肉の足が大好きだそうで。

 これは、全てのトラとヒョウに言えることかどうかは解りませんが……。

 微妙な偏食にびっくりです。


 あとは、飼育事務所をみんなで分担して掃除をしたり。

 閉館の時間が4時半なので、5時15分には、全てを片付けなくてはいけないとか。

 そう。動物を寝室に入れる作業が待っています。

 これは結構楽しみにしてたんですけどね。

 サルは、岩山に放置状態なので、関係なし。

 シマウマがこれまたすごい!

 一頭、一頭の寝室が決まっているので、固体識別が出来ないとまず無理です!

 これ、どうやって固体識別をしているかと言うと、シマウマは、それぞれ縞の模様が違うのだとか。

 そして、作業の便宜上、シマウマの左頬の模様で区別しているようです。

 私にゃさっぱり区別がつきませんが、Sさんは、楽々と見分けて、名前を呼び、中に入れていきます。

 中に入れると言っても、相手は野生なので触ることは基本的にしません。

 音や声などで呼び、自然に自分から入ってくれるのを待つようですね。

 そこで興味を持った私は、こんなことを聞いてみました。


 風雅「サルにも固体識別法があるんですか?」


 Sさん「あるらしいね! でも、俺には、わからん」


 ……だそうです。

 いやでも、50頭くらいいる中の15頭でも解ればすごいと思いますよ。

 でも、解らなくても、彼らの中には、一頭一頭にマイクロチップが埋められていて、死んだ個体がどの固体か、というのはすぐに解る仕組みになっているようです。

 シマウマの入舎をやってみるか?と聞かれましたが、私に固体識別は無理です、と答えました(ヘタレ)。


 トラとヒョウの入舎も大変です。

 2頭ずつしかいないので、固体識別は簡単ですが、やつらは大人しく入ってくれない!

(ま、シマウマもそうでしたが。)

 なんとか入ってくれるのを待ってから、鍵の確認をして、終了です。


 そうそう。

 移動途中に迷子の男の子を捜すお母さんたちと遭遇しました。

 園内は空いていたので、子供はすぐに見つかったのですが、こうゆう仕事もしなくてはならないんですね。

 他にも、園内の数々のオブジェや、企画、ナイトサファリ用の飾りなど、飼育係の仕事は、動物の世話だけではありません。

 Sさんに、いろいろと話を伺う機会があったので、飼育係についてもいろいろと話してもらいました。

 サルの頭骨を見せてもらったり、担当動物のローテーションのシステムなど。

 その中の一つを紹介しますね。


 風雅「Sさんは、何故この仕事に就こうと思ったのですか?」


 Sさん「うーん、なんとなく」


 風雅「え? なんとなく……ですか?」


 Sさん「うん。僕は、はっきり言って、動物が好きなわけじゃないんだよね」


 い、いいんですか?! それで!!

 何やらSさんは、大学を出て、たまたま受けて受かったのが、〇〇動物園だったらしい。

 そ、そんなもんなのか……と、ちょっとショックでしたね。。

 どうやら、そうゆう人は、少なくないそうです。


 そんなこんなで、私の実習第一日目は、終わるわけですが。

 何とも新鮮なことばかり……というわけではありませんでしたが。

 とても勉強になりました。(まだ終わらないよ?)

 ……これが14日間。持つだろうか、ちょっと不安になってきたよ。。

 なんだか牧場実習に近いものもありますしね。

 とにかく、明日もがんばろうと思います。

 残念ながら、デジカメで写真を撮る余裕はありませんでしたが、明日は、聞いてみようと思います。

 んでは、明日も早いので、おやすみなさい~☆

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