子供達の地図 ナツメ・うい

櫻井あやめ

第1話 新しい時代

ナツメとういは第一神の子供として生まれた。生まれた時から特別と言われてきた。ふたりにはそれが不満だった。だが幼なじみの由貴の家族は特別扱いしなかった。それが心地よかった。

「ナツメ、ナツメ!」

「お兄ちゃんと呼べ」

「双子でしょ?ナツメもういも私も同じ日に生まれたんだから名前呼びでいいじゃない」

ナツメはお兄ちゃんと呼ばれたいと少し思っていた。何となくの憧れ。でもいつも由貴がそれを止めるのだ。

「でも俺たち兄妹なんだから!俺の方が魔力も高いしな!」

そう言って床に置いていた紙飛行機を魔法で空に飛ばす。一気に空に飛んでいってさんにんの周りに大風が吹く。

「もう!じゃあ私がお兄ちゃんって呼んであげるよ」

由貴がふとそう言った。そうするとういが駄目と言い出す。ういのお兄ちゃんだもん。駄目だよと。

それを聞いてお兄ちゃんと呼ばれたナツメはニヤニヤする。

「よし、由貴が今日から妹だ!」

「順番で言えば本当は私がお姉ちゃんだけどね、お兄ちゃん」

由貴は笑いながらナツメに話す。ナツメはうっと言って逃げる。俺が一番と叫びながら。

由貴とういはそれを追いかける。神の国には子供がさんにん、この子達しか居ないから大人の神がよくちょっかいをかけていた。

「おお、ナツメ達じゃないか。競走か?」

アルフレッドが話しかける。そうすると他の神も集まってきた。

「競走じゃないよ!どうすれば俺が一番って分からせるか考えてるんだ」

「ナツメは私達にお兄ちゃんと呼んでもらいたいらしいの。本当子供っぽいよね?」

由貴がナツメを呆れたように見ながら言う。ういはナツメと仲良くしたい。でも何となくお兄ちゃんと呼びたく無かったのだ。

「ナツメがお兄ちゃんと呼ばれたら一番だって事なの?」

ういはおずおずと話す。力はあるのだが、少し気の弱いういは由貴の後ろから話す。

「ふたりのお兄ちゃんだ!俺は!」

人間で言ったら園児位の年頃のさんにんはいつも一緒にいてわちゃわちゃ揉めていた。それを親である第一神のみこと、その妻であるりんなは聞いて悩んでいた。

「あの子達他に子供居ないからみんなの邪魔してるのね。今日来てくれたアルフレッドが楽しそうに語ってくれたの。……神の国には幼稚園とかそういう施設がないから……」

母であるりんなは子供達と触れ合わずに育つ事に不安があった。やはり子供達と育っていかないと、と。

「少なくとも現時点で子供はさんにん。その子達の為に幼稚園みたいなものをこの世界に作れない……子供が増えるか分からないからな」

みことの話にりんなは頷く。この世界は創世神が子供達を産む事を憎んで、神々は同性愛が当たり前になるように魔法をかけていた。今は解除してるが元々同性愛だった神々が異性を好きになるのは、現実的に難しい。

「一度人間の世界の幼稚園に入れてみるか?」

「え、神の子を受け入れてくれるかな?」

人間が困るのではと不安がった。だが成長する時に友達や仲間を作る練習として子供達に囲まれるのは大切な経験だ。話し合ってとりあえず人間と一緒に幼稚園に入れることになった。

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