5 邪魔なのは私

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 そして夜会の翌日。 

 私が着ていた既製品のドレスとは、全く比べ物にならない豪華なドレスをオズワルド様は贈ってくださり。


 お礼を伝える為にもう一度お会いすれば、お礼よりも一緒に食事したいと望まれまして。


 私はそれから何度か、オズワルド様にお会いするようになりました。


 一緒に過ごすうちに私達はお互い想い合うようになり、恋人としてお付き合いをする事になりました。


 そしてとても幸せな日々を送り、出会ってから一年を迎えました記念日のデートで。


「結婚して欲しい」


 と、オズワルド様はプロポーズをして下さりました。


 私はとてもとても嬉しかった。


 けれど私は、あまり豊かとは言えない辺境にある子爵家の令嬢で。


 侯爵家嫡男のオズワルド様と結婚だなんて、どんなに好きになっても出来ないと理解していました。


 だから結婚出来なくても、好きに人と一緒にいられるのなら、恋人のままでも私はそれで構わないと諦めておりました。


 なのにオズワルド様は、そんな私にプロポーズしてくださった。


 そのお気持ちが本当に嬉しかった、だけどそれはきっと周囲が許してはくれません。


 だから一度はお断り致しました、オズワルド様の負担にはなりたくなくて。


 ですがそんな私にオズワルド様は。


「そんなものは関係ない。私は君を愛してる、周囲は後から認めさせればいい」

 と、おっしゃって下さって。


 もう一度プロポーズして下さりました。


 だから私は覚悟を決めて、そのプロポーズを承諾することにしました。


 最初オズワルド様のご両親、侯爵夫妻には私達の結婚についてとても強く反対されました。


 でも絶対に反対されるだろうと最初から予想しておりましたから、そんなにショックではありませんでした。


 それに何度かオズワルド様のご両親とお会いさせて頂く機会を頂けて、お話をさせて貰う内に。


 お義母様が。

「マリアベルさんなら、この家に嫁いできてくれても構わない」

 と、おっしゃって下さって。


 そしてお義母様が頑なに反対されていたお義父様を、説得して下さいまして。


 侯爵夫妻は私達の結婚を認めて下さり、私はオズワルド様の婚約者になった。


 それからの日々はただただ幸せで、それでいて結婚式の準備と侍女の仕事で毎日が忙しく、あっという間に婚約期間の二年が過ぎていきました。


 オズワルド様との結婚について私の両親には、手紙で結婚の許可を頂いておりました。


 侯爵家嫡男との結婚ですので、普段私に全く関心のない両親も珍しく喜んでくれて、それについてはすごく嬉しかった。


 ――けれど。


「結婚前に一度貴女の婚約者様にお会いしてみたいから、二人でこちらに遊びに来ない? 婚約祝いのパーティを開くから」

 と、手紙で両親は言ってきまして。


 本当に困りました。

 だって私は妹のいる実家になど、絶対に帰りたくはなかったから。


 だから何度かその打診を手紙でお断りしていたのですが、痺れを切らした両親がオズワルド様に直接手紙を送ってしまい。


 その手紙を受け取ったオズワルド様が、結婚前に一度私の両親に挨拶がしたいとおっしゃりまして。


 本当はなんでも私のモノを欲しがり奪う妹のいる実家になんて、婚約者を連れて行きたくはありませんでした。


 だから妹の性格やこれまでの行い、妹だけを贔屓する両親についてオズワルド様に全て話しました。


 それを話す事によって家の恥を晒すようでとても恥ずかしかったですが、話さなければわかって貰えないと思い全て話しました。


 けれど。

「君を産み育てた君の両親に、結婚前に一度正式にご挨拶を」

 と、オズワルド様に説得されて。


 渋々でしたが、オズワルド様を連れて両親に会いに行くことに。


 ……でもそれが全ての間違いでした。


 今なら絶対に連れて行く事はなかったでしょう。


 ただ、もしかしたら最初からこうなってしまう運命だったのかもしれないと思ったりもするんです。

 ですが今となってはもう、考えた所で何の意味もありませんが。


 きっとあの時の私は、妹のいない王宮での平和な生活にボケしまっていたのでしょう。

 それに少し楽観視してしまっていた自分も、そこには確かにいたのです。


 だって王宮で私達が結婚する事を知らない者はいないし、結婚の承諾もお互いの両親に貰っている。


 それに妹が奪おうにも、実家の子爵家からオズワルド様がいらっしゃる王都まで馬車で片道二日はかかる。


 だからこれだけ距離が離れていれば流石の妹もどうする事も出来ないと、私は思ってしまっていた。


 でも、それが全て間違いだったのです。



 ――あれから私は直ぐに辺境にある実家に帰り、両親を問いただしました。


 本当に私の婚約破棄を認めたのか、そしてリリアンとオズワルド様二人の結婚を認めてしまわれたのか。


 どうしてオズワルド様がリリアンに会いに来ていた時に、それを止めなかったのか。


 何故私にそれを知らせてくれなかったのか、私は両親を激しく問い詰めた。


 私に問い詰められて嫌そうな顔をする両親、けれどここで引き下がる訳にはいかない。


 だから私はどんなに嫌そうな顔であしらわれても、問い詰め続けた。


 そしてようやく返ってきた答えは。


 両親との顔合わせの席でオズワルド様は、姉の貴女と違って可愛い妹リリアンに一目惚れ。


 そして一目惚れされたオズワルド様は私に何も言わず遠路はるばる辺境のこの子爵家まで、リリアンに会いに来た。


 そして一目惚れしたのはリリアンも同じで。


 


 それから二人は何度も何度もこの子爵家で逢瀬を、私に隠れて繰り返した。


 そして婚前交渉は御法度のこの国で、二人は肉体関係をもってしまったらしく。


 リリアンの妊娠が発覚した。


 それを知ったオズワルド様は、非情にも婚約者の私と妹を天秤にかけられた。


 結果、地味な私が捨てられた。


 そして可愛い妹が選ばれた。

 

「でもねマリアベル、それは当たり前の事じゃない? オズワルド様が来ていたのを貴女に知らせなかったのは私達も悪かったと思うけれど、幸せそうにするリリアンを見ていると邪魔したくなくてね?」

 と、お母様は悪びれもせずに私に宣った。


 そしてこの時両親は、孫が出来たとそれはそれは喜んでオズワルド様とリリアン二人の婚姻をすぐに認めたんだと。


「それにお前は姉なんだから、幸せを掴んだ妹の邪魔なんて無粋な真似等はせず、大人しく金だけ受け取って引き下がりなさい」


 と、婚約者に捨てられて傷付いた娘の私に。


 お父様はまるで叱り付けるように、そんな酷い言葉を言い放ったのです。


 

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